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ドルト、“ロイス・システム”が示した打開策。サイドアタックの有効活用とジョーカーの存在

text by 本田千尋 photo by Getty Images

“ロイス・システム”が見出したもの

 主力が先発に戻ったことで、再び連動性とスピードのあるボール・ポゼッションを実現。フライブルクの守備ブロックも、ブルージュのブロックと比べると、少しルーズだったところがある。15分に強い縦パスをロイスがダイレクトで左に叩くと、ラーセンが鋭いドリブルで一挙にペナルティエリア内まで突き進む。24分にはヴィツエルからの縦パスを、ロイスがトラップしてすぐに反転して右サイドのサンチョに送ると、イングランド代表の鋭いクロスからあわやのチャンスを作った。ブルージュに続いてフライブルクも講じてきた“ロイス封じ”が、上手くハマらない場面があった。

 サンチョとラーセンの起用で、サイドアタックにも厚みが増した。39分、イングランド代表の新星が右サイドから仕掛け、PKを獲得。ロイスが主将としての役目をきっちり果たして、先制に成功する。

 後半も同じ“構図”だった。ブロックを構築するフライブルク、「穴」をこじ開けようとするドルトムント。もっとも、フライブルクはボールを奪った後のカウンターに精度を欠いたため、ドルトムントは失点の恐れはなかった。ボールを失ってもすぐに奪い返して、フライブルクの守備の攻略に取り掛かる。ファブレ監督は「幸いにも我々は忍耐を保ち続けた」と振り返った。そうやって粘り強く続けた攻撃が、ボディブローのように効き始め、最後の最後で南ドイツの小クラブの守備は崩壊した。試合の決着を付けたのは、アルカセルだ。スペイン代表FWは、70分からの“ジョーカー起用”だった。

 アディショナルタイム、サンチョが中央から左に仕掛けてドリブル突破すると、右サイドをオーバーラップしたピシュチェクにパス。ポーランド人の重鎮SBの折り返しを、ゴール前でアルカセルが押し込んだ。2-0のスコアで、ドルトムントが勝利する。

 先発したブルージュ戦で得点を挙げることができなかったアルカセルは、スタメン落ちしたというよりは、戦略上の理由で途中出場となったのだろう。堅牢を開けるための最後のカギとして、ベンチスタートだったのだ。ロイスを中心にボールを回すだけでなく、サンチョ、ラーセンによるサイドアタックも有効に活用し、最後にジョーカーとしてのアルカセルが試合を仕上げる――。対策を講じられ始めた“ロイス・システム”が打開策を見出した、フライブルク戦だった。

(取材・文:本田千尋【ドイツ】)

【了】

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