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これが真のハリル流。日本代表と真逆の物語を描くナント。デュエルで守備を固め、得点は倍増

ロシアワールドカップ直前に日本代表を解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ監督がナントで躍動している。就任した第8節以降、得点は倍増。ピッチサイドでは生き生きとし、会見ではジョークを飛ばす。そんな姿を現地在住記者がレポートする。(取材・文:小川由紀子)

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

古巣PSGのファンも温かい拍手

ヴァイッド・ハリルホジッチ
ナントを率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Getty Images】

 リーグアンの前半戦最終節で、久しぶりにピッチサイドに立つヴァイッド・ハリルホジッチ監督を見た。

 パリ・サンジェルマン対ナント戦。

 感情むき出しで選手たちに檄を飛ばし、ときどき審判にも食ってかかる。でもその背中は生き生きとしていた。自分の居場所に帰ってきた喜びを満喫しているかのように。

 ハリル監督率いるナントは前半戦は0-0でしのいだが、後半68分、キリアン・エムバペに得点を許して1-0で惜敗した。

 リーグ前期の17戦(フランス全土でのデモ行動により2試合が延期に)で50得点を獲った攻撃力抜群の今季のPSGに1点もとらせなかったクラブはチャンピオンズリーグも合わせて一つもなく、1点しか取らせなかったのも、リーグアンではトゥールーズとストラスブール、そしてナントしかいないから、善戦したといっていい試合だ。

 実際、ネイマールこそいなかったが、エディソン・カバーニやアンヘル・ディ・マリアらパリの強力攻撃陣は、攻めあぐねて苦しい表情を浮かべていた。

 PSGはハリル監督にとっては古巣だ。選手時代に1年間プレーし、監督としても2003-04シーズン、リーグ準優勝とフランス杯優勝をもたらしている。その翌年は成績不振や一部選手との軋轢もあってシーズン半ばで解任されたが、試合前のメンバー発表で敵将ハリルホジッチの名前がコールされると、パルク・デ・プランスのスタンドからは温かいオベーションの拍手が贈られた。

 ハリル監督の戦術は、一対一でボールホルダーにハードプレスをかけて、ボールの出しどころを絞って手詰まりにさせ、ボールを奪い取ったら少ないパス数で瞬時に攻め上がる、という彼らしいものだった。

 通常は4バックだが、このPSG戦のように攻撃力の高い相手に対しては5バックで対応している。

 そして前半戦は、渾身の“デュエル”でノーゴールで乗り切った。

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