「杉山の足は20万ドル」。長嶋茂雄の年俸の倍。アルゼンチン戦勝利の持つ歴史を変える力【日本サッカー戦記(3)】

「アジア最弱」と呼ばれていた日本サッカーは、どのようにして成長を遂げたのか。フットボール・ライティングの名手、加部究が送る日本サッカー新旧の歴史群像劇『日本サッカー「戦記」』(カンゼン)から一部抜粋して公開する。(文:加部究)

2019年01月02日(水)10時20分配信

シリーズ:日本サッカー戦記
text by 加部究 photo Getty Images
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クラマーが見出した勝機

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クラマー氏は選手たちを鍛え上げた【写真:Getty Images】

 10月14日、日本が強豪アルゼンチンと対戦する昼下がりの駒沢陸上競技場も満員になった。もっともそれは必ずしもサッカーファンで埋まったわけではなく「スタンドを見上げれば、観戦そっちのけで走り回る子供たちがたくさんいる」(片山)ような状況だった。

 グループDでは、既にその2日前に、アルゼンチンとガーナが対戦し引き分けていた。

「確かにアルゼンチンのテクニックは素晴らしい。しかしスピードはそれほどでもない。こちらのペースに持ち込めば勝機は見えてくるかもしれない」

 そう判断したクラマーは、アルゼンチンのエース、ミゲール・アンヘル・モーリーを小城得達(おぎありたつ)にマークさせて、堅守からの速攻を狙う戦略を採る。片山は厳しい口調で、セーフティー・ファーストを強調された。

「おまえがボール扱いを得意としていてドリブルが好きなのは知っている。でもオレは嫌いだ、今日は見たくない!」

 アルゼンチン戦のピッチに立った日本代表のスタメン平均年齢は23.7歳だった。土壇場で代表に滑り込んできた釜本邦茂が20歳、故障した宮本征勝の代わりに抜擢された山口芳忠は、まだ19歳だった。

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