「義務感だけなら完全にブラック企業ですよ(笑)」。湘南・曺監督が語る“楽しむ”チーム作り

昨季、YBCルヴァンカップを制した湘南ベルマーレが、決勝を含めた13試合で起用した選手は30名を超えた。まさにチーム一丸となって優勝を掴んだ湘南の「チーム力」とは何なのか? 今季で就任8年目を迎えた曺貴裁監督に、湘南で実践するチーム作りについて話を聞いた。2/6発売の「フットボール批評issue23」から一部を先行して公開する。(取材・文:西部謙司)

2019年01月31日(Thu)10時20分配信

text by 西部謙司 photo Getty Images
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「集中しろ」と「朝飯食べた?」では空気感が違う

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湘南ベルマーレの曺貴裁監督【写真:Getty Images】

 監督が替わるとクラブの持っている空気感は若干変わるかもしれません。でも、本来はそうではいけない。意図的に変えるのならいいですけど、クラブの空気感は社長、ダイレクター、サポーターを含めて全体で作られていくものですから。地域の空気もありますから、もし変えるとすればかなりパワーが必要になってきますね。

 湘南には、トレーニングや行事に熱を持って接する空気があります。相当意識は上がっている。例えば、「何時に何を食べろ」と言われて従っているようでは空気は生まれない。「自分は2時間半前ではなくて3時間前に食べたいんですけど」と、言い出す選手がいるようでないと良い空気感ではないと思っています。

 2018シーズンは『ALIVE』という抽象的な言葉をスローガンにしましたが、スリッパを揃える、ミーティングの時間までに座って準備ができている、そういう1つひとつが『ALIVE』だよねという積み重ねが全体の空気を作る。

 湘南の試合を見ている人から「一生懸命に走っていて凄いね」と言われることがありますが、実は自分としては違和感があるんです。この「凄いね」は「辛いのに頑張っていて凄いね」という意味だと思いますけど、辛かったらできないですよ。辛いけど楽しい空気の中でやっていないと、誰も積極的に取り組めないでしょう。

 うちの選手たちは、義務感でやっていないからできるんだと思います。義務感だけであれをやっているなら、完全にブラック企業ですよ(笑)。U-19代表に参加していた齊藤未月が「うちのクラブでサボっていたら曺さんに殺される」と言っていたようですが、これも文字だけだとパワハラになっちゃいますよね。

 基本的に楽しくやっていますし、楽しめなければやめます。僕が暗かったり、サッカーに興味なさそうだったり、練習がいつも同じだったりしたら、うちの選手は今のような感じにはなっていないでしょう。

 選手の様子はよく見ています。朝から元気がないなら、「朝飯食べた?」と言います。「集中しろ!」だと、まず良くなりません。言いたいことは同じですけど、言い方に少し余裕があるでしょ? 「集中しろ」と「朝飯食べた?」では、空気感が違ってきます。

性格は考慮しません。性格なんて変わらないですよ

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昨季、湘南はYBCルヴァンカップを制した【写真:Getty Images】

 スタッフについては、セルフ・シンキングの習慣があって、伝えることがあるなら迅速に伝えてほしいとは思っています。ただ、あとは人それぞれというか、例えば「やっぱり監督に意見できるコーチがいるといいよね」と言われますけど、それはどっちでもいい。その人が自分で考えてそうしたほうがいいと思えばすればいいだけで。選手に向かって陰で「監督はああ言っているけど違うよな、俺だったらお前を使うけどな」はダメですけどね。

 うちの場合は、やろうとするサッカーの構築を長い時間かけてやってきているので、獲得した選手も明確なイメージを持ってチームに入ってきます。ただ選手の出入りが多いのも事実なので、そのあたりのバランスは考えないといけないですけどね。

 選手の特徴はもちろんよく考えますけど、性格は考慮しません。考え方は変えたほうがいい場合がありますけど、性格なんて変わらないですよ。ディズニーランドを好きな人が、僕と出会ったからといってディズニーシーのほうが好きになるわけじゃない。性格なんて考えてもしょうがない。表に出ているものが、その人のすべてでもないでしょうし。

 この選手には1対1で話す、別の選手には皆の前で話すとか、そんなことも考えません。そんなのは指導者が逃げているだけじゃないでしょうか。人によって態度を変えるということはしていませんし、性格も考慮しません。逆に、性格は選手としてやっていくうえで邪魔にならないんです。

(取材・文:西部謙司)

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【了】

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