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香川真司 5年前

香川真司がドルトムントで愛された日々。まるで「家族」のように…少年から大人へ、迎えた別れの時

text by 本田千尋 photo by Getty Images

英雄のごとくの帰還も苦しんだ復帰後

 BVBを取り巻く全ての者が、香川にポジティブな感情を持っていた、とまでは言い切れない。しかし、総じてシンジ・カガワという1人の日本人選手が、ことサッカーに関してはプライドの高いドイツ人の間で認められ、毎試合8万の観衆が本拠地ジグナル・イドゥナ・パルクに詰め掛けるドルトムントの人たちから愛されていたのは事実だ。

 香川にとっては、BVBという1つのクラブだけでなく、ドルトムントという1つの地方が、「家族」のような存在だったのかもしれない。

 もちろんそれは、香川がドルトムントという環境にぬくぬくと甘えていた、ということを意味しない。そもそも「シンジ」の愛称は、リーガ2連覇に直結する自身のパフォーマンスによって勝ち得たもの。

 旅から帰還した英雄のごとく迎え入れられた14/15シーズンは、当初は華々しい再デビューを飾ったが、次第にチームは絶不調に陥り、一時は最下位にまで順位を落としてしまう。香川もその流れに抗えず、精彩を欠き、辛酸を舐めた。調子を取り戻していったのは、ようやくリーグ戦が終盤になってからのことだった。

 クロップ監督が辞任した後で、トーマス・トゥヘルが指揮官に就任してからも、道程は平坦ではなかった。15/16シーズンは開幕戦で先発に抜擢され、出だしは順調だったが、後半戦に入ると戦術的な理由で一時出場時間が減り、ベンチ外も経験した。16/17シーズンの前半戦は足首の負傷に悩まされ、パフォーマンスが上がってきたのは後半戦に入って、3月になってからのことだった。

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