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Jリーグ 5年前

レアンドロ・ダミアンが王者・川崎Fにもたらすもの。デビュー戦で証明した価値、ポテンシャルは半端ない

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「上」を支配する絶対的な力

レアンドロ・ダミアン
188cmの長身を生かしたレアンドロ・ダミアンの叩きつけるようなヘディングはJリーグでも脅威に【写真:Getty Images】

 確かにブラジル時代のプレー映像を改めて見返しても、身長190cmに迫ろうかという巨体で猛然とピッチを駆け回る姿が目立つ。基本的に中央からポジションを動かさないため、ボールを奪われた際のプレッシング開始の一の矢としての働きも大きい。彼の動きを基準に二の矢、三の矢と連動する仕組みを作ることもできるだろう。そのうえでゴールも決められるのだから恐ろしい。

 浦和戦ではレアンドロ・ダミアンの攻撃面の特徴も遺憾なく発揮された。パワーを生かしたボールキープだけでなく、縦パスを引き出す駆け引きも巧みで、常にディフェンスラインの背後を狙う動きも怠らない。中盤からパスをもらうと、時には少ないタッチで捌いて自らゴール前に入っていく。

 さらに特筆すべきはフィニッシュパターンの豊富さだ。ブラジル時代にも滞空時間の長いジャンプと高い打点から叩きつけるようなヘディングシュートは大きな武器で、クロスに点で合わせるのも上手い。これまでフロンターレといえば細かいパスでの崩しがメインだったが、今季はシンプルなクロスからの攻撃も大きな武器になるはずだ。

「自分たちが使いたいスペースを埋めてくる相手に対して、何が有効なのかと言ったら、『外』じゃなくて『上』。空は誰も止まらない。制空権を取れる選手がいるんだったら、そこを使えばいい」

 中村はすでにレアンドロ・ダミアンの高さを生かした攻撃のイメージを描いている。浦和戦の開始40秒で見せたハイクロスも、「あるぞ」と思わせる駆け引きの一部だった。「昨年は意固地に繋いで、取られてカウンターで失点というのが結構あったので、それに関しては無理しないというか。だって勝てるんだから、そこ(空)でやればいいじゃんって。どこを使って攻めるかを意識した結果、点を取れましたし。強いところを使うのは定石なので」と2連覇をけん引した背番号14は新たに生まれた強力なオプションに自信をのぞかせている。

 52分の決勝点も、家長のクロスをレアンドロ・ダミアンがペナルティエリア内で競り勝って、ヘディングで落としたところから生まれた。対戦相手からすれば、一層守りづらくなっただろう。これまでであればフロンターレと戦う際に最も警戒するのは中央でのポジションチェンジと細かいパスを生かした崩しだったが、「外」と「上」も気にする必要が出てくれば、綻びは生まれやすい。

「中」を見ていたら「外」からクロスで「上」を支配されてゴールを決められ、今度は「外」を警戒してみたらブロックに間ができてしまい、スペースを使われて「中」を崩される…。そんな悪夢のようなサイクルすら考えられる。

 小林がサイドから絞ってきて2トップ気味になったり、家長や中村が下がってボールを受けにいったり、常に流動的なポジションチェンジのあるフロンターレにおいて、高度な連係・連動の中でも最前線の基準点となってバランスを保てる新エースの存在は攻守における柱となっていくかもしれない。

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