中村憲剛は “集中しすぎない”。今が絶頂期、洗練極める川崎Fを導く38歳の癖【西部の目】

2019年02月22日(Fri)11時11分配信

シリーズ:西部の目
text by 西部謙司 photo Getty Images
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カウンターのためのポゼッション

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川崎FはJリーグ史上に残る洗練を極めている【写真:Getty Images】

 最近、ポゼッション悪玉説のような意見をちらほら聞くようになった。ありがちなのが「自陣でポゼッションが高くても意味がない」というものだ。ポゼッション否定派の言うこともわからなくはないが、そういう否定派にかぎってカウンターアタックの信奉者だったりするから時々わけがわからなくなる。

 敵が守備を固める前に攻め込むカウンターアタックが有利なのは、あらゆるボールゲームにおいて自明だ。では、どうやってカウンターを仕掛けるのか。わざと引いて相手を引っ張り出す、守備から攻撃への切り替えを早くする、この2つが主な回答だと思うが、それでは相手に引かれてボールを持たされたらカウンターアタックはできないということになってしまう。ボールポゼッションの目的の1つはカウンターアタックを仕掛けるためなのだが、なぜかその視点がすっぽり抜けていることが多い。

 自陣でボールを保持する、隙間に入り込んではつなぎ、またパスを捌く。そこで相手が食いついてくれば守備に穴が開く。穴が塞がる前に攻め込むことで自然とカウンターアタックと同じ状態の攻撃ができる。ボールを保持する場所が自陣に近ければ近いほど、敵を手前に引っ張り出せる。カウンターになったら一気にフィニッシュへ移行していくので、敵陣でのポゼッションはまず上がらない。つまり、自陣でのポゼッションを否定してしまえば、自分たちから能動的にカウンターを仕掛ける手立てを失うわけだ。

 川崎Fの場合は、相手がハイプレスでのボール奪取を諦めていて食いついてこないことも多い。引かれれば敵陣でのポゼッションは高くなる。ただ、やっていること自体は自陣でも敵陣でもさほど変わりはない。最終的には食いつかせて穴を開け、素早くそこをつく。

 その中心にはフィジカルに恵まれなかった中村憲剛がいて、チームはJリーグ史上に残る洗練を極めている。Jリーグはヨーロッパに比べるとテクニカルなリーグで、フィジカル的な要素は低い。川崎FはJリーグらしいチャンピオンだが、彼らを打ち破るインテンシティの高いチームにも現れてほしい。そうでなければ現在の川崎Fに勝つのは難しいだろうし、切磋琢磨が起きることでJのガラパゴス化を防ぐことにもつながるからだ。

(取材・文:西部謙司)

【了】

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