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Jリーグ 5年前

イニエスタとメッシ、“偽9番”の決定的な違い。豪華「VIP」擁する神戸が進むべき道とは?

text by 舩木渉 photo by Getty Images

豪華な陣容。神戸は最適解をどこに見出すか

ファンマ・リージョ
リージョ監督は勝つための最適解を導き出せるか。記者会見は興味深く、いつまでも聞いていたい熱量だった【写真:Getty Images】

 もう1つの課題として挙げられる“VIP”トリオの運動量の不足を考慮すれば、神戸は守備には常に大きなリスクを抱えることになるだろう。彼らは30代中盤を迎えて加齢による体力の低下という避けられない現実と直面している。それ故にほとんどプレスバックをしないので、必然的にフィールドプレーヤー7人で相手の攻めのエネルギーを受け止めなければいけない時間帯が長くなる。これからリージョ監督が攻守のバランスをどこに見い出すかにも注目すべきだ。

 もしイニエスタを“偽9番”的に起用し続けるなら、前線や中盤の組み合わせを再考する余地はある。ポドルスキだって立場が安泰というわけではない。バルサ時代のようにサポートキャストが揃っているわけではないし、彼がそもそも“9番”タイプの選手でないことも考慮しながらチームを作っていく必要があるだろう。

 リージョ監督やイニエスタをよく知るある指導者は、ある時、空を飛ぶ鳥の群れを見て「あれがフットボールだ」と表現したという。この言葉を聞いて最初は「どういうことだ?」と不思議だったが、神戸の試合を見ていると考えが徐々に整理されてきた。

 鳥の群れはそれぞれがかなり近い距離で飛んでいるのに、お互いにぶつからず、同じ方向へ隊列を崩さず進んでいくことができる。きれいなV字型など描く形も様々だが、群れを形成するのには1羽では敵わないような天敵から身を守るために存在を大きく見せることなど、しっかり意味がある。

 そして、それぞれが他の全ての個体と相互に影響を与え合いながら、先頭なら目的地へ他の鳥を導く、外周の鳥は周囲を警戒するなど、飛行しながら各ポジションの役割を忠実にこなす。しかも群れに明確なリーダーはいない。あるのは「一定以上の距離に近づかないよう飛ぶ」「隣の鳥との距離を一定に保つ」「一定の距離にいる鳥と並行に飛ぶ」というたった3つのルールだけ。こういった習性は、フットボールにもつながるところがある。

 神戸はおそらく今後もイニエスタがチームの方向性を定めるうえで最も重要な鍵になる。彼を先頭に、他の選手たちはそれぞれのポジションごとに定められた役割を正確にこなし、1人では実現できない、11人だからこそ表現できる最適解を見つけていかなければならない。もちろんこれがフットボールと鳥の群れを結びつけた考えに対する正解とは限らないが、リージョ監督の戦術を体現するならば、鳥の群れのようにはっきりと整理された集団である必要がある。

 現時点で表現したい戦術の要諦は見えつつあるが、まだまだ課題は山積み。とはいえイニエスタは試合後に「これをやり続けて、どんどん改善するのが進むべき道だ」と強調し、指揮官への信頼も戦術への自信も失っていない。神戸は世界クラスのスター選手たちを生かしながら、チームとして勝つためのバランスをどこに見出すか。リージョ監督の采配から、まだまだ学びたいことはたくさんある。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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