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Jリーグ 5年前

イニエスタとメッシ、“偽9番”の決定的な違い。豪華「VIP」擁する神戸が進むべき道とは?

text by 舩木渉 photo by Getty Images

神戸が抱える致命的な弱点とは

 彼がなぜ高い位置でパスを受けられるかというと、その背後にシャビやセルヒオ・ブスケッツといった世界最高クラスのボールマスターたちがいるからであって、あくまで最終的にメッシら3トップが最大限の力を発揮できるよう構築されたチームだからこそ、“偽9番”が機能していたとも言える。

 翻って神戸の“偽9番”はどうかといえば、“9番”としての機能は基本的にないと見ていい。なぜならそこにいるのはイニエスタだから。セレッソ戦でも相手最終ラインの背後に飛び出したり、ペナルティエリア内で勝負するようなプレーも基本的には彼の頭の中の選択肢にない。相手センターバックから離れた位置でプレーすることはできても、メッシのようにそのDFたちの意識を完全に自分に向けるほどではないので、両ウィングが「5人」を相手にしなければならなくなる。

 役割としては“10番”的な要素が強く、あくまで中盤で数的優位を作るための1人としてのプレーが目立っていた。そう考えると、神戸のシステムは4-3-3ではなく、中盤をダイヤモンド型にして2人のウィングFWを置いた変則的な4-4-2のように見えてきた。

 確かに両サイドの逆足ウィングの積極的な仕掛けによって、リージョ監督の言う「攻撃のベクトルが中央に向かっていく」様子は見てとれたが、ビジャやポドルスキで「5人」全員を引きつけるのは難しい。個人で目の前の選手に対して質的優位な状況を作れてはいても、単独で仕掛ける際にはゴールから遠い位置でのプレーを余儀なくされ、決定的なフィニッシュに持ち込む回数が少なくなっていた。「相手が中央に集まる」ことによって外から初瀬や西がチャンスを作る場面もあったものの、やはり重要なのはアタッカーがゴールの近くで決定機に絡むことだ。

 中盤がイニエスタを含めて4人になることで、数的優位を生かしてボールポゼッションの時間を長くすることはできていたし、セカンドボールの掃除役として役割が整理された三原雅俊のように本来の力を存分に発揮でいる環境を得た選手もいたので成果がなかったわけではない。

 だが、パサーとしての機能性を十分に備えた選手が不足しているようにも見え、インサイドハーフの山口や三田啓貴の不用意なボールロストからセレッソにカウンターを食らうこともしばしば。両サイドバックは高い位置を取ってボールポゼッションに参加するため、ボールを奪われる場所とタイミングが悪いとカウンターから容易に決定機を作られ、今後もその傾向は続くように思う。

 リージョ監督は「長い時間ゲームをコントロールできており、相手に支配される時間は試合を通じてほとんどなかった」と振り返りつつ、「ボールを奪いたいという気持ちが先行したときに、チームが間延びしてカウンターを受けたり、縦に速い殴り合いの状況になってしまった」と分析していた。また「あれだけ引かれるとカウンターを全く受けないというのは避けられない」とも語っている。

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