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Jリーグ 5年前

松本山雅はJ1残留を果たせるか?「J2降格候補筆頭」を覆せ。開幕戦で見えた3つのカギ

text by 元川悦子 photo by Getty Images

定位置を失った昨季の主力。チームの一体感を高められるか

 今節J1スプリント回数トップの45回を数えた韋駄天・前田の守備には、名手・中村俊輔も面食らったのか、ボールを失う場面が目についた。その勢いで開始8分には岩上祐三の直接FKが決まって先制に成功。J2の山雅であれば、虎の子の1点を守り切って勝てるはずだった。

 しかしながら、後半に入って磐田が川又堅碁を投入してからは徐々にリズムを持っていかれた。後半26分の同点弾のシーンも山田大記の左クロスと川又の打点の高いヘッドに山雅守備陣の対応が遅れてしまった。

 名波浩監督は「川又の特長と山田のクロスの精度の高さが結びついたゴール」と語ったが、そのクオリティこそJ1基準。これから上位陣と対戦すれば、個の力で決めきれるジョー(名古屋)やレアンドロ・ダミアン(川崎)のようなタレントがゾロゾロいるだけに、守備組織の強化は必要不可欠なテーマだろう。

 山雅が2018年にJ2制覇を果たせたのも、34というリーグ最少失点を記録したから。その水準をJ1で維持するのは難しいだろうが、昨年最終節で残留を決めたサガン鳥栖の29得点34失点という例もある。貪欲にこのレベルを目指していくことが、堅守をウリにする山雅のターゲットとなる。

 そのためにも、前線からのハードワークができる人材を増やし、守備陣も新戦力のエドゥアルドや服部を含めて連係を強化していく必要がある。反町監督はキャンプから開幕までほぼメンバーを固めてチーム作りをしてきたという。コンビネーションを熟成させていく狙いがあったのだろうが、精度をさらに高めてほしい。

 ただ、限られた主力だけでは戦えないのがJ1というリーグでもある。もちろんケガで離脱中のレアンドロ・ペレイラや杉本太郎や他の新戦力を組み込んでいくことも大事だが、昨季までチームの軸を担っていた村山智彦、飯田真輝や今井智基、田中隼磨、高崎寛之といった経験豊富な面々を有効活用していくことも、先々の試合を乗り越えていくうえで重要なのではないか。

「僕らは山雅をJ1に上げたという強い自負がある。それを今出てる選手がきちんと理解して戦わないといけない。僕らピッチに立てていない選手は悔しいし、ポジションを取り返したいという強い気持ちがある」と田中隼磨は山雅をここまで引き上げてきた人間たちの思いを代弁する。そこを指揮官がうまくコントロールしなければ、チームの一体感が損なわれる恐れも否定できない。

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