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Jリーグ 5年前

桐光学園の逸材、西川潤をちょっぴり“大人”にしたひと冬の経験。「2年生10番」が上がる成長の階段

text by 藤江直人 photo by Getty Images

自信という手土産をトランクいっぱいに詰め込んで

 同じレフティーとして尊敬してやまない、大先輩の中村俊輔(ジュビロ磐田)がかつて背負った「10番」を入学直後から託された桐光学園サッカー部ならば、黙っていても自分のところへボールが集まってくる。エースとして「10番」を背負うU-16代表でも、同じ図式が描かれる。

自分のなかで積み立てた日常がドイツの地で、音を立てて砕け散った。ならば勇気を振り絞って殻を打ち破り、はいつくばってでも前へ進むしかない。迎えたトレーニングマッチで3戦3発と大暴れを演じた。向けられる視線の質が明らかに変わり、パスが集まってくるようになった。

「最後のほうはみんな優しくしてくれて、溶け込めた、という感じをつかめました」

 数字ではカウントできない、自信という手土産をトランクいっぱいに詰め込んで帰国した西川は、今度はセレッソの練習に参加している。大津戦で味わわされた悔しさを忘れるほど、ドイツから大阪へと繰り広げられた冒険は刺激と新たな発見に満ちあふれていた。

「プレーのスピードや判断の速さというところでは、高校年代ではまったく味わえない経験ができました。球際にしてもびっくりするくらい激しかったし、その意味ではボールを受ける位置やタイミングといったポイントで成長できたところやプラスになった部分が、多少はあるかなと思っています」

 慌ただしい半年間を無我夢中で突っ走ってきた。U-16アジア選手権が開催されたマレーシアから帰国するやいなや、モードを高校サッカーに切り替えた。1年次は決勝で桐蔭学園の前にPK戦で敗れ、悔し涙を流した神奈川県予選制覇に全精力を注いだ。

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