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Jリーグ 5年前

大分、偶然ではない強さの源泉は? 6年ぶりJ1で好発進、監督・選手の言葉から滲み出るもの

text by 青木務 photo by Getty Images

兼ね備える謙虚さと野心、確固たるプレースタイル

 対策を講じられたとしても、それを上回る覚悟だ。藤本に不安はなく、今後も血眼になって対応してくるであろう相手との駆け引きを楽しみにしている様子だ。

「必ず空いてくるところがあると思うので、相手の変化を見ながら戦っていきたい。そこは焦れずに、テンポのいい回しとかで(マークを)外しながら、数的優位を作りながらというところ。大分らしいサッカーを今年1年続けられれば、いい結果が出るかなと思います」

 今季加入の高山薫は、大分においてJ1での経験値が随一の選手。彼は大分について「本当にチームとしてやっていることが正しいなと思うし、J1でこのチーム、戦えるなと。どんどん成長できるなと思います」と手応えを掴んでいる。

 これまでプレーしてきたクラブとは特徴が異なるが、少しずつアジャストしている。そこには片野坂監督のサポートももちろんあるという。高山は指揮官のアプローチを「本当に面白い」と言うと、その理由をこう説明する。

「駆け引きの部分で『相手がこう来たとして、こうすれば空くよね』とか、すごく言ってくれる。最初は結構難しくて、まあ今も全然できていないですけど(笑)、そういうのを意識してやれるのは楽しいなと思いますね」

 大分はスタイルのベースが作られており、局面でやるべきことも共有されている。それを一人ひとりが実行するからこそ、「狙った形」を作り出すことができる。

 一時はJ3まで落ち、そこから這い上がってくる中で苦しい状況も経験したはずだ。謙虚に戦い続け、一つずつ勝利を積み重ね、そして自信を育んできたのだろう。

 それでいて貪欲さも持ち合わせている。長いシーズンでは、相手に研究され持ち味を消される試合も出てくると思われる。それでも、謙虚で野心的、そして確固たるビジョンの下でサッカーを展開する大分は観る者を魅了するはずだ。何があっても培ってきたものを見失わずに戦っていけば、目標であるJ1残留も早く達成できるのではないか。

(取材・文:青木務)

【了】

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