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Jリーグ 5年前

JFL鈴鹿、男子チームにスペイン人女性監督を。異例の人選が呼ぶ“奇跡”へ、壮大な挑戦が始まる

text by 藤江直人 photo by Naoto Fujie

「佐伯さんの推薦ならば、絶対に信頼できる」

 国内でのリクルートをあきらめて、ヨーロッパへと対象を広げた。複数のスポーツエージェントや代理人にコンタクトを取ったが、ヨーロッパではシーズンの真っ只中ということで、候補者すら浮かび上がってこない。途方に暮れかけたときに1990年代からスペインで指導者の道を歩み、男子チームも率いた実績をもつJリーグ特任理事の佐伯夕利子さんとつながった。

 当初は佐伯さんの招聘を検討したが、2008年からビジャレアルでさまざまな仕事に携わっていることもあって断念した。吉田常務取締役が続ける。

「それで佐伯さんから『この方なら男子チームを率いることができると思います』と、連絡先とともに紹介していただいたのがマルティネス監督でした。佐伯さんの推薦ならば、絶対に信頼できる。すぐにコンタクトを取り、瞬く間に契約までたどり着いた次第です」

 現役時代はセンターバックを務めていたマルティネス監督は、2007年から指導者へ転身した。ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)の最上位コーチライセンスとなる「UEFA Pro」を取得し、スペイン女子リーグのアルバセテ・バロンピエを3部から2部、悲願の1部へと昇格させた実績ももっていた。

「日本だけでなく、アジアへ来たのも今回が初めてです。実は知り合いの日本人女性選手がたくさんいて、彼女たちから日本のいいところをたくさん教えられていたので、来る前から楽しみしかなく、不安というのはほとんど感じませんでした。加えて、今回を逃せば海外で指揮を執るチャンスはそうは巡って来ないんじゃないかと思い、すぐに決めました」

 スペインリーグでプレーする松川智(前早稲田大学)や田中ひとみ(前大和シルフィード)、そして自身を推薦してくれた佐伯さんからも背中を押された。72歳の母親は心配のあまり泣きながら「行かないで」と懇願したが、いまでは娘の挑戦を笑顔で見守ってくれている。

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