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Jリーグ 5年前

JFL鈴鹿、男子チームにスペイン人女性監督を。異例の人選が呼ぶ“奇跡”へ、壮大な挑戦が始まる

text by 藤江直人 photo by Naoto Fujie

チーム内の雰囲気は明らかに好転

「今回の挑戦がスペインでも報道された影響で、家族も私のことを誇りに思ってくれるようになりました。いまは毎日のようにテレビ電話で話していて、私が毎日を楽しんでいることを、母もすごく幸せに感じてくれています」

 家族から届くエールに笑顔を浮かべるマルティネス監督は、お国柄もあってとにかく明るい。今月上旬の新体制発表会ではラテンポップ界の貴公子、リッキー・マーティンが大ヒットさせた『ザ・カップ・オブ・ライフ』のカラオケを無茶ぶりされながらも、壇上で歌い上げて喝采を浴びた。

「自分が監督という立場でクラブを代表していることもありますけど、やはり自分が楽しく振る舞っていることで選手たちも楽しく、幸せになってプレーしてくれると考えています。

 自分としては選手のより近くで支えようと常に気を配っていますけど、選手たちの規律正しさや、日々の練習に対して一生懸命打ち込む姿に感銘を受けています。スペインの選手たちはまず休むことを優先させますけど、日本の選手たちは練習をしたがる。そこが大きな違いだと思っています」

 鈴鹿の一日は、指揮官が選手たちにかける「オハヨウ」で始まる。必ずJFLへ、という思いが強かったからか、昨シーズンまでは勝つサッカーが優先されていた。それらから解放されたいま、マルティネス監督の存在もあってチーム内に漂う雰囲気が変わっていると、小林拓広報担当は目を細める。

「プレッシャーからちょっと解放されて、伸び伸びとプレーしている部分もあります。同時に監督がやりたがっている楽しいサッカーに対して、かなりワクワクしている選手が多いと思っています」

 日々の練習メニューは、マルティネス監督が考え出している。意識せずとも「どうしてもこれまでとは違ったメニューになるというか、自然とスペイン流の練習が入ってしまいます」と笑う指揮官に、選手たちも積極的にコミュニケーションを取るようになってきたという。

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