フットボールチャンネル

香川真司=司令塔という誤認が生んだ悲劇。最もゲームメイカーを欲しているのは、背番号10自身

text by 編集部 photo by Shinya Tanaka

香川真司
ボリビア戦で先発出場を果たした香川真司【写真:田中伸弥】

【日本 1-0 ボリビア キリンチャレンジカップ2019】

 日本代表は26日、キリンチャレンジカップ2019でボリビア代表と対戦。試合は75分に生まれた中島翔哉のゴールを守り切った日本代表が1-0で勝利している。

 ロシアワールドカップ以来の代表招集となり、この試合ではキャプテンマークを巻くなど注目を集めたのが香川真司だ。22日に行われたコロンビア代表戦では後半途中からピッチに立ち、攻撃にリズムを加えるなど短い出場時間のなかでも良さを出し続けた同選手。この試合ではロシアW杯をともに戦った乾貴士や宇佐美貴史との連係、鎌田大地や小林祐希らとどのようなコンビネーションを見せるのかに大きな期待が寄せられていた。

 しかし、ボールこそ保持できていた日本代表だが、攻撃陣はうまく噛み合わず不用意なボールロストを繰り返す。ボリビア代表の守備もそこまで強固というイメージはなかったが、森保ジャパンはゴールへの匂いを一切放つことができなかった。結局、前半は0-0で終了している。

 後半も日本代表はボールを持つことはできた。しかし、フィニッシュまで繋げられず。香川は何もできないまま、69分、南野拓実との交代を余儀なくされている。

 少しポジションを下げたり、パスを散らしたりとボールに絡もうとする姿勢こそ表れていた。乾、宇佐美、鎌田らを生かそうとするプレーも随所で見受けられた。まるでそれは、司令塔の役割そのものだ。

 ただ、「トップ下・10番」であることから、香川=司令塔といった認識がされがちだが、それは確実に間違っている。最も司令塔、ゲームメイカー的存在を欲しているのは、香川自身なのだ。

 例えばボルシア・ドルトムントでは、イルカイ・ギュンドアンやヌリ・シャヒンといった選手たちが後方でゲームメイクをすることで香川が生かされていた。

 香川の良さは決定的なパスを送り出して味方のゴールを演出するというものではなく、パス&ゴーのような動きでリターンを受け、自身がゴールに直結するようなプレーを見せること。タイプで分けるならセカンドトップだ。また、ドルトムントでは公式戦216試合で60ゴールを叩き出すなど、背番号10の決定力は決して低くない。そのため、よりゴールに近い位置でプレーすることが、香川にとっては理想な形だ。

 ただ、この試合では司令塔のような選手は不在。そして香川はスペースへ飛び込む速さを兼ね備えているが、ボリビアのように重心を低くし、守備を固めスペースを簡単に明け渡さないチームを相手にしては背番号10の持ち味は発揮できない。また、トップ下に入った香川がボールを受けようと下がったり、パスを散らしたりと司令塔のような役割を担ったが、これでは背番号10本来の良さが出ないのは当たり前である。

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top