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Jリーグ 5年前

名古屋の新たな心臓はジョアン・シミッチ。超優良助っ人が秘める「予知能力」の秘密

text by 舩木渉 photo by Getty Images

Jリーグでも発揮される「予知」の力

 話を聞いていると、ピッチ上の印象とともに「賢いサッカー選手」とは彼のことを言うのだろうとも思えてくる。長短のパス精度や、守備面での貢献が注目されがちだが、J・シミッチのプレーを見ていると危機察知能力や、展開を読んで次を予測する力、それに伴う判断の精度と早さ、戦術理解力が際立って高い。

 例えばマリノス戦では、下がってボールを受けようとする相手の選手に対して後ろから圧力をかけてプレーを遅らせたり、先に動いてパスをインターセプトしたり、危険な場合はファウルで止めたりすることも躊躇いなく繰り返していた。危ないと察知したスペースを埋め、次の展開を読んでポジショニングを調整して即座に相手の選択肢を制限するプレーは卓越している。

 攻撃面でも先読みが光っていた。マリノス戦の35分、中谷進之介からのパスを受けたJ・シミッチは、左足でボールをコントロールしながら反転して、左足で左の一番外側から相手ディフェンスラインの背後を狙った和泉竜司に見事なパスを通した。そして和泉は惜しいシュートにまで持ち込んでいる。

 リスクを負う際の判断も的確で、いい形で前を向けないと思えばテンポを抑えながら相手選手を引きつけるためにディフェンスラインの選手と簡単なリターンパスを繰り返すなど、五分五分の縦パスや大きなサイドチェンジに執着しているわけではない。先の展開を察知しながら臨機応変な判断を下すことができる。

 では、J・シミッチ自身は自分の武器についてどう考えているのだろうか。

「細かくは言えないけど、試合(の展開)を予知できるのは自分の1つの武器で、そこでどこにパスを出すのか、長いボールが欲しいのか、短いボールが欲しいのかなど、常に1歩先のことを考えながらやっている」

 こう述べた上で「その人たちのようになりたいというのではないけど、その中でも自分のプレーを近づけたいというのであればセルヒオ・ブスケッツだったり、アンドレア・ピルロや、トニ・クロースのようなことをしたい」と具体的な選手の名前も挙げてくれた。

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