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日本代表が突くべき、ウルグアイ代表の弱点はあるのか? 強さは本物だが…抱える“唯一”の緩さとは【コパ・アメリカ】

コパ・アメリカ2019(南米選手権)・グループリーグC組第1節、ウルグアイ代表対エクアドル代表が現地時間16日に行われた。同大会の優勝候補筆頭ともいえるウルグアイは、試合開始からエンジン全開で挑み、4-0と圧勝。世界に改めてその強さを証明した。そんな強豪国と、日本代表はグループリーグ第2戦で激突する。ロシアW杯ベスト8に輝いたウルグアイにおけるストロングポイント、弱点は果たしてどこにあるのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

見せつけた優勝候補の実力

ウルグアイ代表
コパ・アメリカ2019の優勝候補であるウルグアイ代表【写真:Getty Images】

 各ポジションに実力者を揃えるウルグアイ代表は、コパ・アメリカ2019(南米選手権)の優勝候補筆頭と見ていいだろう。ブラジル代表、アルゼンチン代表、コロンビア代表なども力はあるが、ウルグアイ代表のチーム力はそれらの国々を上回っていると言えるかもしれない。

 それを世に証明したのが現地時間16日に行われたコパ・アメリカ・グループリーグC組第1節、エクアドル代表戦だ。初戦を勝利で飾りたいウルグアイは、ディフェンスラインにディエゴ・ゴディンやホセ・マリア・ヒメネス、最前線にはエディンソン・カバーニ、ルイス・スアレスが名を連ねるなど、ベストメンバーを組んできた。2011年大会以来となる優勝へ。彼らの今大会に向けた本気度は、試合前の表情からも見て取れた。

 ゲームの立ち上がりからテンション高く入ったウルグアイは、開始わずか6分で試合を動かす。右サイドをスアレスが突破すると、反対サイドのニコラス・ロデイロへクロス。これを受けた背番号7は巧みにボールをコントロールし、左足を振り抜いた。

 いきなり先制ゴールを奪ったウルグアイは、ここから完全に試合のペースを握る。エクアドルはエネル・バレンシアを起点に攻撃を組み立てにかかるが、ゴディン、ヒメネスのCBコンビが中央に完全に蓋をし、突破を許さない。空中戦には絶対の強さを持っているため、クロスボールに対する処理もほぼ完璧であった。

 攻撃時は中盤のロドリゴ・ベンタンクールとマティアス・ベシーノが舵を取る。ボールを受けてはドリブルで前進し、縦、横パスを織り交ぜながら相手DFを揺さぶり、隙を見ては前線へ飛び出すなど幅広いエリアでプレー。派手さはなくとも効果的な役割を果たしていたと言える。

 攻守両面でエクアドルを上回ったウルグアイは、33分にカバーニが、44分にはスアレスがいずれもCKの流れから点を奪い、前半のうちに3-0とした。さらに78分には相手のオウンゴールを誘発し、4-0。初戦からエンジン全開で挑んだウルグアイはエクアドルを蹂躙し、いきなり大勝を収めたのである。

脅威となるのはやはり2トップ

ウルグアイ代表
ルイス・スアレス(左)とエディンソン・カバーニ(右)の2トップはやはり脅威だ【写真:Getty Images】

 ウルグアイはこの日、シュート16本を放ち、支配率61.1%を記録。対してエクアドルにはシュートわずか2本しか許さないなど、結果だけでなく内容でも圧倒する形となった。

 なかでも際立った活躍を見せたのがカバーニ&スアレスの強力2トップだろう。欧州のトップクラブでプレーする両者の関係性と個の能力は、ウルグアイ最大の武器であると同時に相手にとっては最大の脅威ともなる。

 最も対峙するDFにとって厄介なのは2人の距離感である。カバーニとスアレスは試合の中で近すぎず、遠すぎずの距離を保つことができるため、相手からすると絶妙なポジショニングを取る両者のマークが難しくなる。それは、決して横並びの場合のみならず、試合の中で縦関係となった時にも同じことが言える。

 さらに相手にとってこうした「距離感」が脅威となることは当たり前なのだが、味方にとっては大きな助けとなる。たとえばベシーノやベンタンクールが中央をボールを持ちながら駆け上がった時、スアレス、カバーニが同じ動きを行う場面はほとんどなかった。ここでもどちらかが下がり、どちらかが背後を狙うといった絶妙なポジショニングを取るため、ボールホルダーからすればパスコースの選択肢が広がる。実際こうした動きでチャンスを作ったシーンがある。

 26分30秒過ぎ、右サイドのナイタン・ナンデスがドリブルで運び、同サイドのマルティン・カセレスへパス。ボールを受けた同選手はクロスの体勢に入ったが、その瞬間の2トップの動きを確認すると、スアレスはゴールにより近い場所へ走っていきDF2人を引き連れていた。対してカバーニはゴールからやや遠い位置で動きをストップ。スアレスがDF2人を引き連れたことで背番号21の前に立つDFが消えたからである。そして結果的にカバーニの下へグラウンダーのクロスが渡る。シュートはGKアレクサンデル・ドミンゲスにセーブされたが、二人の“異なる動き”が生んだチャンスであった。

 カバーニ、スアレスはボールを持った時ももちろん怖さを発揮するが、このようにオフ・ザ・ボールの動きでも違いを作れる存在だ。第2戦で激突する日本代表も、十分に注意しなければならない。

日本代表にとって最も厄介なのは…

 第2戦でウルグアイ代表と対戦する森保ジャパンからすれば、守備の時間が長くなる可能性が高い。そのため守備陣は90分通して集中力を保つことが求められるが、最も注意したいのはやはりセットプレーだ。

 エクアドル戦でも、ウルグアイはCKの流れから2得点を奪っている。カバーニなども競り合いには強く、身長こそ178cmだがフィジカルの強さを誇るカセレスにも要警戒。だがその2人より恐ろしいのが、やはりゴディン、ヒメネスのCBコンビだろう。

 実は、ゴディンは185cm、ヒメネスも185cmと驚くような高さはない。だが、2人ともジャンプするタイミングと跳躍力が絶妙で、ボールを確実に頭で捉えることができる。なかでもゴディンの強烈なヘディングシュートはこれまで多くの舞台で発揮されてきた。相手選手を吹き飛ばすような勢いで繰り出されるパワーを若きサムライたちがどこまで抑えられるかも注目だ。

 エクアドル戦では9本ものCKを獲得したウルグアイだが、その映像を確認してみると、ゴディンとヒメネスは距離感を近く保ち、主にニアサイドで勝負していた。ここは徹底しているか定かではないが、ヒメネスが囮となりゴディンのマークに付いている選手の邪魔をするといったシーンも見られるなど、CKの場面では様々なことをやってくる可能性がある。

 ただでさえセットプレーの守備に不安を抱える日本代表。ウルグアイ戦では果たしてどのように対応するだろうか。

ウルグアイの弱点はどこに?

 ではウルグアイの弱点はどこにあるのだろうか。エクアドル戦では正直あまり脆さが見受けられなかったが、ロシアワールドカップの試合なども踏まえて考えると、やはりカセレス、ディエゴ・ラクサールのサイドバックにあると見る。ここはウルグアイが抱える唯一の緩さだと言えるかもしれない。

 前者は対人戦に絶対の強さを持ち、激しいプレーも厭わないが、スピードにやや不安を覚えている。1対1の場面でそう簡単に振り切れるとも思えないが、一度突破してしまえばカセレスからすると対応するのは難しくなる。中島翔哉がマッチアップする可能性が高いが、足下より裏のスペースでボールを受けた方が、よりチャンスには近づくはずだ。

 ラクサールはカセレスとは異なりスピードと豊富な運動量が持ち味で、90分間サイドで上下動を繰り返すことができる。ただ、元々はサイドハーフの選手であり、ウルグアイ代表でサイドバックを任されるようになったのは最近のこと。そのため、やや守備の脆さが露呈する時もある。日本代表が相手の左サイドに人数を集めた攻撃が繰り出せるのであれば、ラクサールを振り切ってチャンスに結びつけることができるかもしれない。あとはマッチアップする選手の突破力に期待するといったところだろう。

 しかし、ウルグアイの弱点と言ってもそれが致命的なものではないというのが事実。エクアドル戦でカセレスとラクサールが穴になっていたとは言い難いし、今回の森保ジャパンメンバーより経験値も実績もあるのが現実だ。日本代表にとって難しい試合となることに変わりはない。
 
 若き森保ジャパンは優勝候補相手にどのように立ち向かうのか。一つ言えるのは、昨年行われたキリンチャレンジカップで勝利したウルグアイ代表と今回のウルグアイ代表ではまったく別のチームだということだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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