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日本代表 5年前

【コパ・アメリカ直前プレビュー】日本代表を陥れる“伏兵”に要注意。チリの英雄も注目の上昇株、プルガルが影のキーマン

森保一監督率いる日本代表は、日本時間18日8時からコパ・アメリカ2019のグループリーグ初戦に挑む。相手は大会2連覇中の強豪チリ。アルトゥーロ・ビダルやアレクシス・サンチェスに注目が詰まりがちな中、真のキーマンは別にいるかもしれない。日本が勝利するうえで要注意の選手とは?(取材・文:舩木渉【ブラジル】)

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Wataru Funaki

ビダルやA・サンチェスだけじゃない

エリック・プルガル
チリ代表のMFエリック・プルガル【写真:Getty Images】

 日本代表はいよいよコパ・アメリカ2019のグループリーグ初戦でチリ代表に挑む。本気の南米相手の大一番は日本時間18日8時キックオフだ。

 ここまで取材してきて、日本の選手たちは何人かのチリの選手の名前を口にしてきた。そのほとんどは「アルトゥーロ・ビダル」や「アレクシス・サンチェス」といった、10年近くチリ代表を引っ張り続けるスター選手。しかし、他にも警戒すべき選手はいる。

 チリ代表の予想スタメンはGKにガブリエル・アリアス、DFは右からマウリシオ・イスラ、ガリー・メデル、ギジェルモ・マリパン、ジャン・ボーセジュール、MFにビダル、シャルレス・アランギス、エリック・プルガル、FWにホセ・ペドロ・フエンサリダ、エドゥアルド・バルガス、アレクシス・サンチェスの11人。システムは4-3-3と見られる。

 ここで中盤を「3」と表現したのには1つ理由がある。見かけ上はアランギスとプルガルの2人の前にビダルという三角形になるが、ビダルは攻守に幅広く動き回るため、アランギスやプルガルが状況に応じてバランスを取ることになる。そのため明確な形はなく、4-2-3-1でも4-1-2-3でもなく、4-3-3と表記するのだ。

 紛れもなくチリのキーマンはビダル。そこに疑いはない。ビルドアップに不安を抱える4バックの前まで降りてボールの前進を助けつつ、パスを捌き、自らゴール前にも進出する。守備ではポジションにとらわれず広範囲に顔を出し、豊富な運動量と高いインテンシティでピッチ全体をカバーする。

 そんな絶対的な柱となる選手をサポートするのがアランギスとプルガルで、2人ともヨーロッパで充実のシーズンを過ごした。中でも“伏兵”とも言えるのが25歳のプルガルで、日本ではあまり知られていないながらセリエAで100試合の出場歴を誇る実力派の守備的MFだ。

 16日の前日記者会見に出席したプルガルは「僕のシーズンはとても良かった」と述べた上で、「今回のチャレンジは、自分の役割を果たすのにベストなタイミングだ」と力強く語った。普段はメディアに多くを語らない選手のようで、「ピッチでのサッカーを通して話をする」と物静かな中に秘めた闘志は会見場の中でもひしひしと感じられた。

レジェンドが語る試合のキーポイント

イバン・サモラノ
チリ代表のレジェンドFWイバン・サモラノ氏もプルガルに注目している【写真:舩木渉】

 中盤の攻防の重要性は、チリ代表を知り尽くすレジェンドも強調していた。解説者として記者会見に出席していた元チリ代表の英雄的FWイバン・サモラノ氏は「チリは4-3-3で日本は4-4-2。中盤の人数が多くなるので、そこは試合のキーポイントになる。チリのポジショニングが重要になる」と語った。

 日本を「4-4-2」と述べたのは、本来のフルメンバーが揃っての日本代表を見てのことと思われるが、森保一監督が今回の東京五輪世代中心のチームで、これまで培ってきた3-4-2-1を採用するにしても中盤の主導権争いが試合の鍵を握ることは間違いない。2人のセントラルMFとストライカーの背後に構える2人のシャドー、合わせて4人でいかに相手のビルドアップを制限し、チリの攻撃を機能不全に陥れられるか。日本の前線の選手たちは技術的な不安のある相手の最終ラインにプレッシャーをかけつつ、背後のケアも怠ってはならない。

 サモラノ氏は「重要になるのは戦術、ポジショニング、そして素早い攻守の切り替えだ。日本はスピーディーな攻撃が特徴なので、チリの守備陣は常に集中しないといけない」と述べた。ビダルもさることながら、イタリアで鍛えられた戦術的素養に優れ、攻守の切り替えも苦にしないプルガルも要注意人物になる。

 プルガルの持ち味として、鋭いタックルや読みを生かしたインターセプトのみならず、187cmの長身で空中戦も苦にしない。さらに一発で局面を変えられるロングパスもある。守備から攻撃への切り替えの場面で、相手の守りの準備が整わない段階で一気に前線まで通すことのできる矢のようなロングフィード、ゴール前にピンポイントで落とすラストパスは日本にとって脅威となる。

多彩な武器を持つプルガルを止められるか

森保一
日本代表の森保一監督はチリ相手にどんな策を用意しているだろうか【写真:Getty Images】

 チリ代表のレジェンド、サモラノ氏もプルガルに注目している。記者会見では自ら手を挙げ、「ヨーロッパでは最高のシーズンを過ごし、6ゴールも決めた。レイナルド・ルエダ監督から重要な役割を任されていると思うが?」と問うた。そしてプルガルも自信たっぷりに答える。

「イタリアではとてもいいシーズンだった。そしていま、ルエダ監督とチームからすごく信頼されていると感じる。このような状況に達するのはすごく難しい。ボローニャではいつもフリーキックを任されていた。僕がイタリアでできたことはこちらでもトライする。僕は(自分の好調を)確信しているし、自信を持っている。今回のコパ・アメリカでは、自分の力を試す。この後、他のチームに移籍する可能性もあるかもしれないが、まずは優勝に向かって戦う」

 彼の語る通り、セットプレーの精度も大きな武器だ。日本はいつも以上に自陣ゴール近くでの反則に気をつける必要がある。今季、ボローニャで6得点を挙げている。そのうち5つがPKで、残る1つが直接フリーキックによるものだった。同様に記録した2つのアシストのうち1つはフリーキックから、もう1つはコーナーキックだった。

 その右足から繰り出される鋭く曲がるキックは、チリ代表にとっても大きなアドバンテージとなるはず。そして、落ち着き払った助走から蹴るPKも、場合によっては日本のゴールを脅かすかもしれない。右利きながら左利きのような位置から助走をはじめ、蛇行しながら、右足を振りかぶる直前で一気にスピードを落として相手GKを先に動かし、その逆を突く冷静さは目を見張る。1試合に2本のPKを沈めたこともあるほどだ。

「アルトゥーロ(・ビダル)とアランギスと僕の3人で中盤をやると思う。アルトゥーロは攻撃型で予想のつかない選手。アランギスは守備も攻撃もできる。自分はどちらかというとディフェンス寄りという違いだけだ。アルトゥーロと一緒にサッカーをすることによって、自分のプレーがより容易になる。すごく経験豊富な2人(ビダルとアランギス)のサポートがあることで、より簡単になる」

 ビダルやアレクシス・サンチェスだけに気を取られてはいけない。多彩な“一発”を持ち、中盤を影からコントロールするプルガルの存在は、日本が勝利を目指す上で高い壁となるかもしれない。イタリアで磨かれ、今まさに伸び盛りの25歳に要注意だ。

(取材・文:舩木渉【ブラジル】)

【了】

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