久保建英が3タッチで2人を抜いた“感覚”。チリが危険な存在と認めた証明とは?【コパ・アメリカ】

日本代表は現地時間17日、コパ・アメリカ2019(南米選手権)のグリープリーグ第1節でチリ代表と対戦して0-4と敗戦を喫した。初先発となった久保建英は、随所で存在感を示した。「今でも悔しい」と試合後に語った後半20分のプレーには、久保の可能性が詰まっていた。(取材・文:河治良幸【サンパウロ】)

2019年06月19日(Wed)9時22分配信

text by 河治良幸 photo Shinya Tanaka
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「未体験のレベル」だったチリ

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チリ戦にフル出場した久保建英【写真:田中伸弥】

 森保一監督が率いる日本代表はサンパウロでコパ・アメリカの初戦に望み、大会連覇中のチリに0-4で大敗した。1トップに抜擢された上田綺世が3度ゴールに迫るなど手も足も出なかった訳ではないが、局面で強度を発揮したチリに要所で差を見せつけられた完敗だった。

 キャプテンの柴崎岳はスタメンに名を連ねた若手について「彼らも未体験のレベルだったでしょうし、相当いっぱいいっぱいだったと思いますけど、彼らなりにこういった相手にどう対応して行くか、対応を変えたりしていたと思います」と振り返った。90分の中で特に確かな変化を見せて行ったのが久保建英だ。

 前半は上田と2トップを組んだ久保の仕掛けが阻まれ、縦パスをカットされるなど、経験豊富なチリの選手たちの洗礼を受ける形となったが、それで消えてしまうことなく後半は積極的なドリブルも見られた。

 その象徴的なシーンが後半20分。左CKからのセカンドボールからだった。中島翔哉のキックはディフェンスに跳ね返されたが、柴崎が拾うと杉岡大暉が左手前に引いてきた久保に素早くグラウンダーの縦パスを付ける。左のライン側にはキック後に下がってきた中島翔哉がいたが、久保はチャルレス・アランギスのプレスがくる直前にターゲットマンの一人として攻め上がっていた中山雄太に縦パスを通すと、中山に引きつけられたアランギスのインサイドにスペースを見出した久保が中山のリターンを呼んだ。

 ゴール前の守備からワイドに流れて中山のチェックに行っていたアルトゥーロ・ビダルは久保へのパスに気づくとすぐに反転し、パスを受けて前進しようとする久保に外側から鋭いタックルを見舞おうと滑り込んでくる。しかし、久保はインサイドにボールを運んでかわすと、今度はエリア内で待ち構えるガリー・メデルを縦に破って抜け出す。そして最後は飛び出してコースを切ってくるGKガブリエル・アリアスを破ろうと左足でシュートを放つもサイドネットにそれてしまった。

ロジックではなく感覚の久保建英

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久保建英は「何も考えずにスルスルっと抜けるときがある」と話す【写真:田中伸弥】

 天を仰いで悔しがった久保。映像で振り返ると、中山のパスを左足でエッジの効いたコントロールをしてビダルのタックルを外し、さらに右足で前にボールを出してメデルを縦に突破、そこから左足でボールを少し前に出し、アリアスが出てきたところで左足を振り抜いている。ドリブル突破と言っても3タッチで二人の猛者を突破するプレーを実行したのは見事だ。

 そうしたディテールに関してはロジックではなく感覚らしく、久保も「ああやって何も考えずにスルスルっと抜けるときがある」と振り返る。しかし、チリ側もメデルが抜かれながらも久保を外側に追いやり、そこにアリアスが突っ込むことで、コースを限定するだけでなくプレッシャーをかけている。

「最後、言い訳するとボールがちょっと緩くてズレちゃって、自分がファーに打てばよかった話なんですけど、あれは今でも悔しいですし、あそこで2-0だったと思うんで、あそこで決めてたらこっちの時間帯にググっと引き寄せられたと思う」

チリが久保を危険な存在だと認めた証明

 久保の視点から見ると狙い通りに打ち抜いていればニアハイのGKが一番対応しにくいところに決められていたかもしれない。だが、よく観察するとチリ側はチリ側で、あの状況で極力コースを限定してプレッシャーもかけていたことは確かだ。さらに目を見張ったのはその後の久保に対するディフェンスの厳しさだ。

 全体の強度は前半より落ちているはずだが、チリは3点目、4点目を立て続けに奪う前のシーンで、原輝綺からパスを受け、ペナルティエリアに侵入しようとした久保をエースのアレクシス・サンチェスがプレスバックしてボールを奪った。

 前半は左サイドから果敢に仕掛けに行く中島翔哉にチリのディフェンスが集中していたが、その中島が下がった終盤は久保に厳しく行くチリの選手たちに現場で観ていて恐ろしさを感じた。言い換えれば百戦錬磨のチリの選手たちが久保を危険な存在として認めた証明でもあった。

 失点後に周囲の柴崎などと積極的にコミュニケーションをはかっていた久保は「試合再開してもチャンス作れなかったり、球際で勝てなかったりしたら意味ないんで、そこをあんまり評価されてもあれですけど、できることはやっていかなきゃいけないのかなと思います」と、反省の方が強かったが、どうすればチリのような相手にもっと可能性を出していけるか見えている部分があるからだろう。

 冷静に考えれば18歳、A代表として初めての大舞台で大敗した中でも何度か輝きを放ったこと自体がすごいことなのだが、ここから日本代表で定着して行くべきA代表の選手としてリスペクトをベースに、冷静で厳しい目も向けて行くべきだろう。キリンチャレンジカップのデビュー戦は“お披露目”に過ぎない。U-22がベースのチームとはいえコパ・アメリカという真剣勝負の場で、本当の意味での久保建英の”代表デイズ”はスタートした。

(取材・文:河治良幸【サンパウロ】)

【了】

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