宇佐美貴史に漂う清々しさ。「ゼロからの再出発」、ガンバ大阪浮上のカギを握る男の覚悟【欧州復帰組の現実(2)】

宇佐美貴史は今夏、2度目のドイツ挑戦を終えてガンバ大阪に復帰。宇佐美は復帰戦となった名古屋グランパス戦で得点をマークしたが、チームはリーグ戦4試合連続ドローで13位と低迷している。27歳の元日本代表は下位に苦しむガンバ大阪に何をもたらすことができるのだろうか。(取材・文:元川悦子)

2019年08月23日(Fri)10時40分配信

text by 元川悦子 photo Getty Images
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失敗に終わった2度のドイツ挑戦

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今夏、ガンバ大阪に復帰した宇佐美貴史【写真:Getty Images】

「2度目(のドイツ挑戦)も個人的にはダメだったという印象が、清々しいくらい自分の中にあります。2度目の切符をつかんでまたダメだったということは、僕のサッカー人生の中できれいごとに聞こえるかもしれないけど、すごく幸せなこと。大事なのはこれを今後のサッカー人生や今、所属させてもらってるガンバにどれだけ還元できるどうか。今はポジティブな気持ちですね」

 古巣・ガンバ大阪に2度目の復帰を果たした宇佐美貴史が6月25日の記者会見で語ったコメントは非常にインパクトが強かった。

 本人が認める通り、2011~13年にかけて挑んだバイエルン・ミュンヘンとホッフェンハイム、2016~2019年にかけて再チャレンジしたアウグスブルクとデュッセルドルフでは、いずれも苦悩の日々を強いられた。

 最初の渡独時はまだ19歳で、レンタル移籍だったから、2年での帰国はある程度やむを得ない部分があったかもしれない。しかしながら、2014年のJ1、ヤマザキナビスコカップ、天皇杯の3冠達成や2015年のJ1・19ゴールという確固たる実績を残し、日本代表経験も積んで完全移籍で赴いた2度目のドイツ生活は想定外だったに違いない。

 アウグスブルク時代はボールが頭上を超えていくようなサッカースタイルに適応できず、活路を求めて移籍したデュッセルドルフでは2部時代の17/18シーズン後半戦は原口元気との好連携もあって評価を上げたと思われた。が、チームが1部に昇格した18/19シーズンは出番が激減。結局、通算5シーズンのドイツでのキャリアでは不完全燃焼のまま幕を閉じることになった。

「ホントに今は5年間の経験をどれだけガンバでのプレーに落とし込めるかだけ。それができてないうちは僕自身、責任も感じるでしょうし。かといってやめるつもりもない。前向きにやり続けるだけだと思います」と帰国会見から2カ月が経った今、宇佐美は自分自身の完全復活とチームの勝利だけを見据えて、懸命に前へ進もうとしているのだ。

「伸びしろを残した」チームの現状

 けれども、今のガンバは決して芳しい状態とは言えない。宮本恒靖監督体制2年目の今季は序盤から苦戦を強いられたうえ、夏場に大幅なメンバー入れ替えを余儀なくされた。

 宇佐美は新たな攻撃の切り札として大きな期待を背負って、7月20日の名古屋グランパス戦からピッチに立っているが、ゴールはその復帰戦で奪った1点にとどまっている。その名古屋戦から彼らはリーグ戦4試合連続ドロー。8月14日の天皇杯3回戦・法政大学戦ではまさかの不覚を喫するなど、白星から遠ざかり続けている。非常に重苦しい雰囲気が漂う中、宇佐美は何とかしてこの状況を変えようと躍起になっている。

「『チームが苦しんでいる』という意味では、1回目に帰ってきた時と今回は同じですけど、前回はJ2だった。今は状況が全然違うし、同じアプローチでは持ち上げられない。だからこそ、やりがいがあると思うんです。今の苦境を突破できれば強いガンバに戻れるし、上位にどんどん食い込んでいける。そういう集団にならないといけないんです。

 僕は強かった頃を知っているから現状を見ると歯がゆいし、チームとして少し自信を失っているようにも感じますけど、サッカーっていうのは誰かの一発のプレーでいい方向に変わったりもする。実際に変わった瞬間も僕自身、知ってますし、そういうものを生み出していくのが自分の仕事。個人的に『伸びしろを残した状態』だと捉えてるんで、一喜一憂せずにやり続けるだけだと思います」

「ゼロからの再出発」

 努めて前向きに話す宇佐美に今、求められるのは、やはりゴールに直結するプレーだ。最後の最後でPKを献上し1-1に持ち込まれた18日の前節・ジュビロ磐田戦でも、後半36分に決定的な右足シュートが右ポストを直撃するなど、あと一歩のところまで来ている印象は強かった。宮本監督も「宇佐美がペナルティエリアでの一振りを持ってるのは間違いない。試合を重ねればもっとよくなる」と期待を示しているだけに、そろそろ爆発しなければならない頃だ。

「復帰した名古屋戦では点を取れましたけど、それ以外のパフォーマンスは全然でしたね。体のキレやコンディションが良くなくて『きついな~』という感じでやっていたんです。その後、試合を重ねてちょっとずつフィジカルの部分が上がってくる中で、ゴールだけがついてきてない状態だと思います。ホント、そこを決めるか決めないか。ギリギリのところまでは来ているので、あとはチームと一緒で壁を超えるだけですね。

 パト(リック)との関係ももっと合わせていく必要がある。彼とはより生かし生かされるような関係になっていきたい。3冠を取った時もそうですけど、基本は僕が出してパトが決めるという形になると思うんで、いいラストパスをイメージしていくつもりです。

 いずれにしても、自分はもう27やし、メンタル的にもチームの中心になってやっていかないといけない。チームを勝たせるようなプレーもしないといけない。今回は潔いくらい『ゼロからの再出発』だと思っているんで、ブレずにやり続けていくしかないですね」

宮本監督は西野朗に似ている

 初心に帰って出直す覚悟の宇佐美を、宮本監督や山口智コーチらスタッフも、遠藤保仁らチームメートも暖かく見守っている。とりわけ宮本監督は「宇佐美のいい部分を最大限引き出そう」というスタンスを前面に押し出している。それは宇佐美にとって非常にやりやすい要素になっているようだ。

「ツネさんの下でやるのは初めてですけど、すごく楽しいですよ。西野(朗)さんに似てるかなって感じはしてます」と彼は嬉しそうに言う。

 西野監督はご存知の通り、2018年のロシアワールドカップで日本代表を率いた時も「選手の持っている良さを可能な限り生かしたサッカーをしたい」と考えていた指揮官で、新人時代の宇佐美に対してもそうだった。10代の彼がイキイキと躍動感あふれるパフォーマンスを見せられたのも、そういったマネージメントによる部分が大だろう。

 そんな恩師と共通点のある宮本監督の下で戦うことで、勢いとエネルギーに満ち溢れていたかつての自分を取り戻せれば、宇佐美自身にとっても、ガンバにとっても理想的なシナリオだ。果たしてその日はいつ訪れるのか。まずは23日のアウェー・鹿島アントラーズ戦が1つの大きな試金石になりそうだ。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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