PSV・堂安律にちらつくロッベンの面影。「2桁」得点を掲げた理由と越えた先にあるものとは?

フローニンヘンからPSVへ移籍した堂安律の加入会見が、現地31日に行われた。東京五輪世代でありながら、すでに日本代表にも定着しているレフティーは、会見で「2桁」得点を目標に掲げた。かつてフローニンヘンからPSVを経て欧州のビッグクラブへと羽ばたいたアリエン・ロッベンと同じ道をたどることができるのだろうか。(取材・文:本田千尋【アイントホーフェン】)

2019年09月02日(Mon)10時00分配信

text by 本田千尋 photo Getty Images
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「PSVのために戦いたい」

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フローニンヘンからPSVに移籍した堂安律【写真:Getty Images】

 21歳の日本人アタッカーは、“ロッベン・ルート”を辿っているのだろうか。

 8月31日、しつこく夏の太陽が照り付けるアイントホーフェン——。

 オランダ及び日本メディアが30名程度集まったフィリップス・スタディオンで、堂安律の入団会見が行われた。30日、PSVは公式サイトで堂安の獲得を発表。日本代表MFは、アヤックス、フェイエノールトと並ぶオランダの名門と5年契約を締結した。FCフローニンヘンでおよそ2シーズンを過ごした後に、国内のビッグクラブへステップアップを果たしたことになる。

 会見は、壇上に座った堂安が質問者に答える、という形ではなく、広報のはからいで、まず日本メディア向けの囲み取材が行われた。その冒頭で、まず堂安は、PSVの一員となることができたことの喜びを次のように語った。

「(PSVは)本当に素晴らしいクラブですし、スタジアムを訪れて、チームメイトと会ったりして、改めて本当にこのクラブの素晴らしさを知っています。ここからはもう言い訳できない環境になったので、本当に自分次第ですし、本当に全てを挙げて、PSVのために戦いたいと思います」

具体的な目標を口にした理由

 移籍を決断したのは、「日本代表」、そして「来年」東京で開催される「オリンピック」のためだけではない。あくまで「自分が成長するため」なのだという。

「常に日本代表のことは頭の中にありますし、特に来年オリンピックがある中でね、そこに対してのモチベーションはもちろんありますけど、だからといって、全てをその理由でこのクラブを選んだわけではないし、自分が成長するためのクラブを選んだ結果が、このクラブだったっていうだけですね」

 そして個人的な目標として、シーズン「2桁」得点を口にした。

「自分の特徴を分かってくれている人は分かってくれていると思いますけど、ゴール、アシストでチームに貢献したいっていう気持ちはあるので、2桁。今まで自分自身成し遂げたことのない記録なので。ただ、たくさんの素晴らしいチームメイトがいるので、ゴールだけじゃなく、アシストだったり、ハードワークすることも忘れずに、ゴールを目指したいなと思います。今まで僕はメディアとかに、このゴール数を取るってあんま言ってこなかったですけど、それは叶えたいことですし、目標ですね」

 堂安が語るように、PSVに移籍したことで、「たくさんの素晴らしいチームメイトいる」「言い訳できない環境になった」。デンゼル・ドゥムフリース、スティーブン・ベルフワイン、ドニエル・マレンらオランダ代表組を筆頭に、各国代表クラスの実力者が揃う新天地では、ゴール、アシストに至らない場面があったとしても、連係不足を「言い訳」にすることはできない。もちろん堂安は「言い訳」を好むタイプの人間ではない。だが、中堅クラブのフローニンゲンでは、どうしても周囲の選手の技術レベルに四苦八苦するところがあった。

 逆に言うとPSVでは、気兼ねなくプレーできるところがあるのかもしれない。欲しいタイミングでボールを貰い、出したいタイミングでパスを出せる「環境」――。だからこそ、未だ成し遂げたことのない「2桁」得点を狙えるのではないか。

ビッグクラブに身を置く理由

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(左から)PSVでフットボールディレクターを務めるジョン・デ・ヨング、堂安律、スカウトを務めるヴィリー・ファン・デル・カイレン【写真:Getty Images】

 もちろんまずは出場機会を確保することが先決であり、常に勝利を求められるビッグクラブ特有の重圧の中、結果を出し続けることは簡単ではないだろう。だが、堂安は、トップレベルで戦える者のみが味わえる「プレッシャー」を心待ちにしているようだ。

「本当にビッグクラブなので、1試合でもだめだったら何か言われるような環境なので、いろいろ頭の中にありますけど、楽しみでしかないです。先ほど言ったように、本当にこれから言い訳できないな、っていう気持ちですね。環境が全て変わりますし、よりサッカーに集中できる環境を作ってくれたので、ここからはさっき言ったように自分次第ですし、もちろんオフ・ザ・ピッチのところもそうですけど、フローニンゲンでは感じられない絶対に勝たなくてはいけないクラブなので、そういうメンタリティでも、成長できるところはあると思います」

 「絶対勝たなくてはいけないクラブ」に身を置くことで、勝者が持つタフな「メンタリティ」を磨き上げることができれば、「成長できる」――。堂安は、そのように考えているようだ。

 PSVで「勝負したい」ポジションは「右サイド」。

「ここ2、3試合フローニンゲンでのプレーは、トップ下でやっていたので、そこでもプレーできるっていうのは自分の中ではありますけど、やっぱり右サイドでもう一度勝負したい気持ちはあります」

「右サイド」でプレーすることになれば、オランダ代表の右SBドゥムフリースとコンビを組むことになる。

「もちろんここに来る前に何試合か試合はチェックしているので、彼(ドゥムフリース)の特徴は僕も理解しているつもりですし、すごく楽しみですね」

「優勝を狙わなくてはいけないというプレッシャー」

 そして過去にPSVからは、ロナウド、ヤープ・スタム、フィリップ・コクー、ボウデウィン・ゼンデン、ルート・ファン・ニステルローイ、アリエン・ロッベン、パク・チソン…といった選手たちが欧州のビッグクラブに羽ばたいた。図らずとも堂安は、ロッベンと同じ道(フローニンヘン→PSV)を辿っていることになる。そういったステップアップの道筋も、頭の中にはあったという。

「もちろんそれ(多くの選手がPSVから飛躍したこと)はありました。一番ステップアップに適したクラブだと思います。ただ、それだけじゃないクラブなので、優勝を狙わなくてはいけないというプレッシャーが毎試合あるし、ヨーロッパリーグ、今進出決めていますけど、絶対チャンピオンズリーグでプレーできるクオリティのあるチームだと思うので、そういうプレッシャーとも戦えるので、そういう面でもこのチームを選んだきっかけにはなりました」

 もし堂安が、本当に今季「2桁」得点を達成できたなら、PSVが来季のチャンピオンズリーグ(CL)に出場する可能性は自然と高まる。そしてCLでも結果を残すことができたなら、PSVで初の日本人アタッカーは、必然的に“ロッベン・ルート”を辿っていくことになるだろう。

 アヤックスと繰り広げられるであろうヒリヒリするようなデッドヒートは、堂安の「メンタリティ」を、欧州の舞台で戦うに相応しいサッカー選手のそれに、磨き上げていくに違いない。

(取材・文:本田千尋【アイントホーフェン】)

【了】

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