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アーセナル、中央で蘇ったオーバメヤン。“いい時間帯”に試合を決めるストライカーの非凡な才能

プレミアリーグ第4節、アーセナル対トッテナムのノースロンドンダービーが現地1日に行われ、2-2で引き分けた。アーセナルは2点を先行されたものの、そこから盛り返して勝ち点1を獲得。ウナイ・エメリ監督が施した交代策によって、エースストライカーの非凡な才能が最大限に生かされた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

ノーガードの打ち合い

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今季3得点目を決めたピエール=エメリク・オーバメヤン【写真:Getty Images】

 試合終了を告げる長いホイッスルが鳴った瞬間、アーセナルのエース、ピエール=エメリク・オーバメヤンはピッチに倒れ込み、トッテナムのエース、ハリー・ケインは両手を膝につき、肩で息をしていた。186回目の対戦となったノースロンドンダービーは、2-2で痛み分けの結果となった。

 アーセナルは開幕2連勝と好スタートを切ったものの、第3節でリバプールに1-3と完敗。一方のトッテナムは第2節でマンチェスター・シティから勝ち点1を奪ったものの、第3節でニューカッスルに苦杯をなめさせられた。前節で敗れた両チームは、是が非でも勝ち点がほしい試合だった。

 初めに主導権を握ったのはアウェーのトッテナム。10分、GKウーゴ・ロリスのロングフィードに、アーセナルDF陣は対応を誤ってしまう。エリク・ラメラの右足シュートはGKベルント・レノに弾かれたが、こぼれ球をクリスティアン・ エリクセンがゴールに押し込み先制点をあげた。

 さらに39分、ソン・フンミンにグラニト・ジャカのレイトタックルが入り、トッテナムにPKが与えられる。これをケインが沈めてトッテナムが追加点。しかし、アーセナルも前半アディショナルタイム、アレクサンドル・ラカゼットのゴールで、前半の間に1点を返した。

 前半終了時点でのスタッツを見ると、シュート本数こそ9対8で互角だが、枠内シュート数では3対7でトッテナムが上回っている。前半だけ見れば、決定機を多く作れていたのはトッテナム。しかし、後半にそれを覆す展開が待っていた。

流れを変えた交代策

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ピエール=エメリク・オーバメヤンは、足裏でワンタッチゴールを決めた【写真:Getty Images】

 この日のアーセナルは、4-3-3の形で、中盤は右からマッテオ・ゲンドゥージ、ジャカ、ルーカス・トレイラをフラットに並べ、前線にはオーバメヤン、ラカゼット、ニコラ・ペペの3トップが揃い踏みする形で臨んだ。

 アーセナルは63分にルーカス・トレイラに代えてダニ・セバージョス、さらに67分には、この日ゴールを決めているラカゼットを下げてヘンリク・ムヒタリアンを投入。セバージョスをトップ下、オーバメヤンを1トップ、ムヒタリアンを左サイドに配置。4-2-3-1に布陣を変更した。

 するとアーセナルは交代策が吉と出る。セバージョスからゲンドゥージがボールを受けると、対峙する相手を剥がしてバイタルエリアで前を向く。ミドルレンジから放ったシュート性のボールを、ゴール前でオーバメヤンがソールで方向を変えてゴールへと流し込んだ。

 その後も攻め込むアーセナルは、後半だけで17本のシュートを記録。一方のトッテナムは60分にデレ・アリ、79分にジオバニ・ロ・チェルソを投入したが、後半の劣勢を覆すには至らず。試合は2-2のまま終了した。

 アーセナルが26本、トッテナムが13本のシュートを放った試合は、両チーム合わせて8枚のイエローカードが飛び交う試合展開に。ペナルティーエリア内での激しい攻防が繰り広げられた試合で違いを見せたのは、昨季の得点王だった。

オーバメヤンが示した非凡な才能

 今季のアーセナルは前線の形を模索している。昨季はラカゼットとオーバメヤンの2トップが破壊力を見せていたが、今季はそこにペペが加入。右サイドからのカットインを得意とするレフティーの加入によって、両ストライカーの役割にも変化が見られた。

 この試合で貴重な同点ゴールを決めたオーバメヤンは、エミレーツでは7試合連続ゴールをマーク。しかし、この試合のように、今季は左ウイングや左サイドハーフで起用されることも多く、その際にはその決定力が影を潜めることも多い。この試合でも、ペペが7本、63分で下がったラカゼットが6本のシュートを放ったのに対して、オーバメヤンは4本のみ。唯一の枠内シュートを決めてしまうのが、昨季の得点王の凄みともいえる。

 オーバメヤンが今季決めたゴールは、ニューカッスル戦では58分の決勝ゴール、バーンリー戦でも64分の勝ち越しゴール、そしてこの日は71分の同点弾の3つ。試合が終盤へと向かう“いい時間帯”に、頼れるエースは自らのゴールで試合の流れを引き寄せている。

 この日のゴールシーンを振り返ると、ゲンドゥージがボールを持った時点では左SBのダニー・ローズと左CBのヤン・フェルトンゲンの間にポジションをとっている。そこから斜めの動きでフェルトンゲンの視界から消え、ニアサイドでボールに合わせている。相手DFとの駆け引きでフリーになる動きこそが、彼の最大のストロングポイントである。

 この日ゴールを決めたラカゼットは同じく中央でのプレーを得意とし、レフティーのニコラ・ペペは右サイドでボールを持つことでチャンスが生まれる。セバージョスはトップ下として攻撃に比重を置いた方がより輝く。

 前線の攻撃陣の組み合わせという意味で、ウナイ・エメリ監督は頭を悩ませることになるだろう。ただ、オーバメヤンは中央でプレーさせた方が力を発揮することは、この試合のパフォーマンスが証明している。

(文:加藤健一)

【了】

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