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セリエA 5年前

今季のナポリは本当に恐ろしいチーム。充実補強で加速する、打倒ユベントスへの期待感【欧州主要クラブ補強診断(2)】

2019/20シーズンは、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの動きはどうだったのだろうか。今回はナポリの補強を読み解く。(文:編集部)

シリーズ:19/20欧州主要クラブ補強診断 text by 編集部 photo by Getty Images

戦力十分。打倒ユベントスの可能性「大」

ナポリ
ロサーノ、マノラスらを獲得するなど今夏の移籍市場で積極的な動きを見せたナポリ【写真:Getty Images】

 セリエAにおけるユベントスの壁は高い。クリスティアーノ・ロナウドら揃える戦力は相変わらず豪華で、チャンピオンズリーグ(CL)でも優勝を狙えるほどの実力がある。現在リーグ戦は8連覇中と圧巻の成績で、2位以下に勝ち点で大差をつけることも珍しくはなくなってきた。まさに「1強時代」である。

 だが、2019/20シーズンはひょっとするとこの連覇が途絶えるかもしれない。なぜかそのようなことが起きそうな予感がしている。ユベントスの力が落ちたわけではない。ではなぜこんな予感がするのか。王者への対抗勢力が今夏に大きく力をつけてきたからだ。

 その筆頭とも呼べるのがナポリだ。昨季、カルロ・アンチェロッティを招聘した同クラブは結果的にリーグ戦を2位、CLではグループリーグ敗退に終わったが、前任者のマウリツィオ・サッリが残したスタイルを継続しつつ、アンチェロッティのスタイルを埋め込んだそのフットボールはなかなかに魅力的であった。ユベントスのような派手さは決してないが、実力は申し分ないと見ていいだろう。

 そんなナポリは、前述した通り今夏に積極的な補強を行い、着実に力をつけてきた。まず、ローマからDFコスタス・マノラスが加入。セリエAでのプレー経験豊富で、マンチェスター・ユナイテッドなど数多くのビッグクラブが獲得を狙っていたギリシャ人は世界でも屈指の実力を持つセンターバックだ。こちらも世界屈指の実力を持つDFカリドゥ・クリバリとの2CBはまさに鉄壁そのもの。ワールドクラスのCBコンビ誕生が実現した。

 さらにエンポリからはDFジオバニ・ディ・ロレンツォを獲得。こちらは攻撃的サイドバックの選手で、インテルなども獲得を狙っていたなど国内でも屈指の実力を持つ。こちらもナポリにとって大きな戦力となるはずだ。

 また、中盤にはフェネルバフチェよりMFエリフ・エルマスが加入。「マケドニアの至宝」とも称される同選手は、いま注目を浴びる若手選手の一人であり、持っているポテンシャルは高い。足下の技術に優れており、ボールキープ力などはピカイチ。ボール支配を基本とするナポリにとってはうってつけの存在だ。

 ターゲットマンとなるFWフェルナンド・ジョレンテの獲得も大きい。彼の加入によってより戦い方の幅は広がるはずで、FWアルカディウシュ・ミリクの負担も軽減されるはずだ。

 そして最もナポリが力を入れ獲得に至ったのがメキシコ代表FWのイルビング・ロサーノ。昨年行われたロシアワールドカップで一躍脚光を浴びた同選手には数多くのクラブが熱い視線を注いでいたが、ナポリはその争奪戦を制す形になった。アンチェロッティ監督が獲得を熱望したMFハメス・ロドリゲスの加入は実現しなかったが、ロサーノも確実に戦力となる選手。それなりに大きな金額が動いたとはいえ、打倒ユベントスを目指すのであれば申し分ない補強になったと言えるだろう。

 これらの即戦力級の新加入選手に加え、FWロレンツォ・インシーニェやFWドリース・メルテンス、MFファビアン・ルイスなど昨季の主力選手も残留。レンタルと言う形で昨季からチームに加わっていたGKアレックス・メレト、GKダビド・オスピナの完全移籍への移行も的確に進めたことで、充実な戦力を揃えることに成功している。セリエA優勝の可能性はもちろん、CLでもしっかりと戦っていけるのは間違いないだろう。

 さらにアンチェロッティ体制2年目ということで戦術の成熟度なども申し分ないはず。より完成形に近いチームを作り出すことは可能になるはずで、昨季からの勢いは加速することだろう。本当に怖いチームになった。

 ナポリはここまでリーグ戦3試合で2勝1敗。第2節のユベントス戦では敗れたとはいえ、互角以上の戦いを演じていた。やはり今季に対する期待は高いと言えるだろう。

補強・総合力評価

ナポリ
ナポリの2019/20シーズン予想布陣(黄色は新加入選手)

IN
GK ダビド・オスピナ(アーセナル/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
GK アレックス・メレト(ウディネーゼ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
GK オレスティス・カルネジス(ウディネーゼ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
DF コスタス・マノラス(ローマ)
DF ジオバニ・ディ・ロレンツォ(エンポリ)
DF ロレンツォ・トネッリ(サンプドリア/期限付き移籍期間満了)
MF エリフ・エルマス(フェネルバフチェ)
MF マルコ・ログ(セビージャ/期限付き移籍期間満了)
MF ジネディーヌ・マシャフ(カルピ/期限付き移籍期間満了)
FW フェルナンド・ジョレンテ(トッテナム)
FW イルビング・ロサーノ(PSV)
FW カルロス・ヴィニシウス(モナコ/期限付き移籍期間満了)
FW アマト・チチレッティ(アスコリ/期限付き移籍期間満了)

OUT
DF ラウール・アルビオル(ビジャレアル)
DF ヴラド・キリケシュ(サッスオーロ/期限付き移籍)
MF アマドゥ・ディアワラ(ローマ)
MF マルコ・ログ(カリアリ/期限付き移籍)
MF ジネディーヌ・マシャフ(コゼンツァ/期限付き移籍)
FW カルロス・ヴィニシウス(ベンフィカ)
FW アダム・ウナス(ニース/期限付き移籍)
FW シモーネ・ヴェルディ(トリノ/期限付き移籍)
FW ロベルト・イングレーゼ(パルマ/期限付き移籍)
FW ロベルト・インシーニェ(ベネヴェント/期限付き移籍)

補強評価:B

 アンチェロッティ監督が獲得を熱望していたハメス・ロドリゲスの加入が実現しなかった点は残念だが、マノラス、ロサーノといった実力者を加えることができたのは非常に大きい。エルマスは将来有望なプレイヤーで、ディ・ロレンツォもレギュラーに定着しつつある。このあたりの補強に関しては文句のつけようがない。ただ、欲を言えば中盤の選手をもう一人ほど確保したかったところか。

総合評価:B

 即戦力級の新加入選手を加え、昨季の主力も軒並み残留。リーグ戦はもちろんのこと、CLでも十分に戦えるチームが完成している。アンチェロッティ監督体制2年目ということで戦術の熟成も十分なはずで、期待は高まるばかりである。打倒ユベントスへ。ナポリは恐ろしい存在になるか。

【了】

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