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日本代表 5年前

日本代表、いつも同じメンバーなんて見たくない! 主力固定の弊害と、原口元気を起用すべき理由

日本代表は10日にモンゴル戦、15日にタジキスタン戦を戦う。前回に引き続き21名が選出され、チームの成長という点では懸念が残る。原口元気の起用が、大迫不在の攻撃陣のカンフル剤となり、日本代表の戦い方の幅を広げる千載一遇のチャンスになるかもしれない。(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子 photo by Getty Images

メンバー選考に抱く懸念

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日本代表の原口元気【写真:Getty Images】

 9月のミャンマー戦でカタールワールドカップへの一歩を踏み出した森保一監督率いる日本代表。10月も10日のモンゴル、15日のタジキスタンとの2次予選2連戦が行われる。

 その代表合宿が7日からさいたま市内でスタート。初日は同市の小学生との交流を経て、中島翔哉や酒井宏樹ら13人で始動。ランニングなどの軽い調整を行った。全体練習終了直後には、前日マジョルカで公式戦を戦ったばかりの久保建英も志願してグラウンドに登場。早速、体を動かしていた。

 今回のメンバーは、ご存じの通り、9月のミャンマー戦からはFW2枚が入れ替わっただけ。とはいえ、絶対的1トップ・大迫勇也の不在はチームにとって大きなダメージだ。浅野拓磨と鎌田大地という復帰組に加わり、6月からコンスタントに名を連ねる永井謙佑もいるものの、彼らを生かすためにも2列目アタッカー陣のサポートは不可欠だ。

 森保一監督就任から主力に位置付けられている堂安律、南野拓実、中島翔哉の3人を筆頭に、今回はアタッカー6枚の顔ぶれが先月と不変であるだけに、彼らの一層の奮起が強く求められてくる。

 しかしながら、森保監督が10月2連戦でも9月シリーズと同じ「NMDトリオ」を送り出してしまったら、チームの硬直化が進み、早くも停滞感が漂う恐れもある。公式戦ということで「失敗できない」と慎重に構える指揮官の気持ちも理解できるが、今はまだ2次予選序盤。最終予選まで1年、ワールドカップ本番まで2年以上も時間がある。今から過度なメンバー固定をしていたら、チームの成長は見込めない。

 2006年ドイツ大会を戦ったジーコジャパン、2014年ブラジル大会を戦ったザックジャパンが特定の選手に依存するチーム作りをして失敗を犯した例もある。本当に強い集団を作りたければ、熾烈な競争は必要不可欠。ここまでの森保監督のマネージメントを見る限りでは、やはり懸念を抱かざるを得ないのだ。

原口元気を起用すべき理由

 加えて言うと、今回の初戦はFIFAランク183位の格下・モンゴルが相手。ここで大胆なトライをしなければあまりにもったいない。ミャンマー戦で出番のなかった原口元気を左に入れ、中央に中島か堂安を据えて、右にいち早く合流した久保建英を抜擢するといった斬新な構成でぜひとも戦ってほしいものである。

 とりわけ、原口はこのタイミングで積極起用すべき人間ではないか。「今の自分はスタメンで出れていないから、もう1回そこに挑戦していく立場。シビアな戦いになればなるほど力を出せる」と本人も7日の練習後に目をぎらつかせたが、凄まじい闘争心と向上心を前面に押し出せる選手が1人入れば、チームの雰囲気もガラリと変わるだろう。

 ミャンマー戦時点では所属のハノーファーでボランチ起用されていたことが1つの足かせになっていた。だが、夏の移籍期限ギリギリにデニス・アオゴとダニエレ・シュテンデルというブンデス1部でも実績のあるボランチが加入。原口が本職のサイドアタッカーとして戦える環境がようやく整った。

 9月20日のキール戦と9月30日のニュルンベルク戦では左、5日のドレスデン戦では右でプレー。両サイドで使われている状態だが、「やっぱり前で出れば楽しいし、感覚的にもいい。代表でも同じ役割ができると思う」と本人も自信をのぞかせる。

 心身ともにいい状態になった今、今季まだ奪えていないゴールという結果を代表の舞台で残せれば、森保ジャパンにおける序列も自ずと変わるはずだ。

「今回は相手との実力差もありますし、シュートチャンスは明らかに多いと思うので、そこで決めるか決めないか。そこにフォーカスしてやっていきたい」と原口自身も語気を強めた。2018年ロシアワールドカップ最終予選で4試合連続ゴールという新記録を達成した男はゴールのもたらす意味を誰よりもよく分かっている。目に見える結果を慣れ親しんだ埼玉の地で示し、2列目トリオに風穴を空けてもらいたい。

攻撃で違いを作れるWB起用

 一方で、モンゴル戦はベースとなっている4-2-3-1ではなく、異なるシステムで挑む可能性もゼロではない。森保監督も「実はミャンマー戦も3バックをやろうと考えていました。今回もいろんなバリエーションを考えながらできることを選択していきたい」と布陣変更の可能性を模索している様子だった。その場合、左ウイングバックに入ると目される原口の重要度はより高まるだろう。

 実際、6月のエルサルバドル戦でもインテンシティーの高さと推進力を披露。「ウイングバックの方がより自分にチャンスがあるかなと。攻撃の方で違いを作れるし、自分も走れるしね。慣れていけばもっとよくなっていくと思う」と手ごたえを口にしていた。左に原口、右に伊東純也という矢のように前へ前へと突き進めるタイプを置けば、自陣を固めてくるであろうモンゴル守備陣をこじ開けられる確率は上がるはず。

 前線も3トップか1トップ・2シャドウにして近い距離感でアタッカー陣が連動できれば、大迫不在時の新たな攻撃オプションを見出す糸口にもなるのではないか。原口という1人のアタッカーを効果的に使えれば、森保ジャパンの戦い方の幅は確実に広がる。モンゴル戦はこれまで試してこなかった戦術と起用法にトライする千載一遇のチャンスなのだ。そのことを森保監督は肝に銘じつつ、戦いの準備をすべきである。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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