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日本代表 4年前

日本代表新10番・仲川輝人が持つ「小さいなりの強み」。久保建英ら人材ひしめく右サイドで求められる結果【E-1サッカー選手権】

日本代表は10日、EAFF E-1サッカー選手権で中国代表と対戦する。23人全員がJリーガーで、うち14人がU-22世代となった今大会で、注目を集めるのは仲川輝人だ。今季、横浜F・マリノスで得点王とMVPに輝き、日本代表初選出を果たして10番を背負う韋駄天は、東アジアの舞台でどのようなパフォーマンスを見せるのだろうか。(取材・文:元川悦子【韓国】)

text by 元川悦子 photo by Getty Images

一気にブレイク、日本代表まで登りつめた仲川輝人

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仲川輝人は日本代表で10番をつける【写真:Getty Images】

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 12月7日のJ1最終節からわずか3日。EAFF E-1サッカー選手権2019のため韓国・釜山に赴いている日本代表は10日夜、中国との初戦を迎える。11月のベネズエラ戦に参戦したA代表組がわずか8人、U-22コロンビア戦に挑んだU-22世代も4人のみの急造チームが、李鉄暫定監督率いる中国にどのような戦いを見せるのか。それは非常に興味深い点だ。森保一監督も「A代表組とU-22世代の融合」をテーマに掲げているだけに、今回は今まで以上の結束力を持って試合に入らなければならないだろう。

 室屋成の負傷離脱によって右サイドバックの人材が手薄になったこと、U-22世代が約3分の2を占めていることを勘案すると、今大会の日本は3バックをベースに戦う可能性が高い。スタメンはGK大迫敬介、DF三浦弦太、畠中槙之輔、佐々木翔、右アウトサイド・橋岡大樹、左アウトサイド・遠藤渓太、ボランチ・大島僚太、橋本拳人、2シャドー・仲川輝人、鈴木武蔵、1トップ・上田綺世の3-4-2-1というラインナップが有力視される。

 このうち、最大のキーマンはやはり今季JリーグMVP・得点王をダブル受賞した仲川だ。川崎フロンターレU-18からトップチームに上がれず、専修大学を経由して2015年に横浜F・マリノス入りした。その後もアビスパ福岡や町田ゼルビアへレンタルされるなど、苦しい時期を過ごした遅咲きのアタッカーはここへきて一気にブレイク。27歳での代表初招集となった。

 しかも、与えられた背番号はエースナンバー10。これは異例中の異例。それだけ森保監督の期待値が高いということになる。

「今シーズンいい結果を残して、それで代表にも呼ばれたと思うので、結果と数字を残さないといけないし、代表のプライドを持っていかないといけない」と9日の前日練習後、彼は語気を強めた。

身長161cm、小さいなりの強み

 今季横浜FMでは4-2-3-1の右MFを主戦場としてきたが、今回の森保ジャパンでは2シャドーの一角を占める見通しだ。

「システムだったり、やり方も違ってくるかもしれないですけど、短い期間の中で代表のコンセプトをしっかり落とし込んで試合で表現しないといけない。チームに合ったこと、やらなければいけないことをやって、結果を残すようにしたい」と不慣れな布陣やポジションでも強みであるスピードや一瞬の抜け出し、フィニッシュの精度の高さをいかんなく発揮し、日本勝利のけん引役になるつもりだ。

 中国守備陣は184㎝のDFシー・クー(上海上港)を筆頭に、高さと強さを兼ね備えた選手がズラリと並び、ファウル覚悟で激しい寄せを試みてくるだろう。実際、2年前の2017年日本大会では大島が中国戦途中に負傷し、担架で退場する羽目になっている。

 161cmという小兵アタッカーの仲川もフィジカルコンタクトの部分で不安もつきまとう。しかし本人は「身長が小さい分、アジリティだったり相手の懐に入るのを目指していましたし、それをイメージしながらJリーグでも戦ってきた。海外の小柄な選手はデカい選手ともしっかりやれているので、そういう選手のプレーも参考にしながら自分の特徴を出していきたい」と小さいなりの強みを押し出すことで屈強な相手をかいくぐってチャンスを演出していく構えだ。

 確かに彼が言うように、リオネル・メッシも170cm足らずの体躯にもかかわらず、圧倒的なフィニッシュの迫力でゴールを量産し続けている。森保ジャパンでこの1年半、10番を背負ってきた中島翔哉も164cmしかない。161cmの仲川もやれないことはないはず。大柄な中国DF陣をキリキリ舞いにして、JリーグMVPの底力を東アジアの舞台で示す可能性は少なくないのだ。

点の取れる選手はどんな監督にも使われる

 今回の中国、香港、韓国との3試合で頭抜けた存在感を発揮できなければ、海外組が揃うフルメンバーのA代表に名を連ね、常連組に食い込んでいくことは難しくなる。4-2-3-1システムにおける彼の本職・右MFには堂安律や伊東純也、久保建英らタレントたちがひしめいている。

 3バック時の2シャドーにしても堂安や久保に加えて、森保ジャパン最大の得点源になっている南野拓実も参戦してくる。彼らと真っ向から勝負していくためにも、仲川には「彼でなければならない」という絶対的なストロングポイントがほしい。それがゴールを奪う力であれば最高だ。つねに点の取れる選手はどんな監督にも使われる。だからこそ、今大会で目に見える数字を残し、強烈なインパクトを残さなければならない。それは彼自身が誰よりもよく分かっているはずだ。

 前線でコンビを組むであろう上田や鈴木武蔵とは初共演。横浜FMでマルコス・ジュニオールやエリキ、マテウスとコンビを組む時のようにスムーズにはいかないだろうが、日本語で意思疎通は図れる。「自分から積極的に話をした」と仲川自身も明かしたが、そういう積極性とコミュニケーション力もこの大会を乗り切るうえで必要不可欠だ。

 背番号10を背負う新エース候補には、自らどんどんアクションを起こして攻撃陣を動かし、相手に脅威を与えるような仕事を見せること。それを改めて強く求めたい。

(取材・文:元川悦子【韓国】)

【了】

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