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吉田麻也と武藤嘉紀の行く末は…。留まっても無駄な時間を過ごすだけ。色よいオファーは必ず届く【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

吉田麻也と武藤嘉紀は、プレミアリーグでのキャリアの岐路に立たされている。前者は大敗をきっかけにレギュラーを外され、後者は9試合続けて出場機会がない。両者はクラブでどのような立場に置かれているのか。これから彼らが歩むべき道は……。(文:粕谷秀樹)

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断 text by 粕谷秀樹 photo by Getty Images

「さらなる努力が必要だ」

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ニューカッスルに所属する武藤嘉紀【写真:Getty Images】

 プレミアリーグ第7節、レスターに0-5の惨敗を喫して目が覚めたのか、ニューカッスルが好調だ。その後の9試合は5勝2分2敗。5勝のなかにはマンチェスター・ユナイテッド戦が含まれており、マンチェスター・シティとも引き分けている。また、複数ゴールを5試合も記録するなど、攻撃力もついてきた。

「少し時間がかかったけれど、ようやくパフォーマンスが安定してきた」

 スティーヴ・ブルース監督も手ごたえを感じ取っているようだ。

 好調の輪のなかに、武藤嘉紀の姿はない。ブルース監督には「チャンスをつかみたいのなら、さらなる努力が必要だ。私はヨシノリ・ムトーがひたすらプレーしているシーンを、一度も見たことがない」と奮起を促されている。

 16節終了時点でゴール、アシストともに0。シュートはわずか一本。先発は7節のレスター戦のみ(前半で交代)。その他4試合は途中出場だ。10節のウォルヴァーハンプトン戦を最後に、ベンチにも入っていない。切なすぎる事実が突き付けられている。

 サロモン・ロンドンが大連一方(中国)に、アジョゼ・ペレスもレスターに移籍したが、ニューカッスル攻撃陣は多士済々だ。アンディ・キャロルはリーグ屈指のストロングヘッダーで、ジョエリントンは単独で局面を打開できる。アラン・サンマクシマンのドリブル突破には一見の価値があり、ミゲル・アルミロンは相手DFラインの裏を取る技術に長けている。定位置獲得のハードルは低くない。

「試合に出なくては意味がありません」

 この激戦区に割って入るには、ブルース監督が指摘したように努力が必要なのではないだろうか。武藤は活かされるタイプだ。フリースペースに進入し、パスを呼びこんでシュート。このパターンでアピールしたいところだ。

 しかし、2シーズン目を迎えても連携が向上しない。武藤がスペースに入ってもパスが来ない。周囲がパスを出したくても、パスコースを封じられた武藤が右往左往している。リーグでもトップクラスのパサーであるジョンジョ・シェルビーを擁しているにもかかわらず、だ。武藤の立場は怪しくなり、イギリスの高級紙『テレグラフ』も、「来年1月の移籍市場で退団か」と報じていた。

 考えるべき選択肢だ。ブルース監督は5-4-1を用いている。前線の基準点はジョエリントン、またはキャロルだ。中盤の両サイドはサンマクシマン、アルミロン、マット・リッチーと続き、武藤の居場所はない。さらに、近ごろの好調(前述)を踏まえると、ブルース監督の座は安泰だ。指揮官解任によるメンバー変更の確率も限りなく低くなったため、このままニューカッスルに留まっても無駄な時間を過ごすだけだ。

「試合に出なくては意味がありません。信頼もされていないようですから……」

 移籍をほのめかす武藤の発言も漏れ伝わってきた。決断した方がいい。ヨーロッパでも日本でも、この男を欲するクラブは必ずある。ニューカッスルの苦い思いを、次のステージに活かすべきだ。27歳。彼のキャリアはまだ続く。

屈辱の大敗でレギュラーから外れた吉田麻也

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サウサンプトンに所属する吉田麻也【写真:Getty Images】

 まるで悪夢だった。

 第10節のレスター戦で、サウサンプトンは0-9という屈辱を味わった。試合開始わずか12分、ライアン・バートランドが一発レッド。試合が落ち着かないうちにマイナス1のハンデを負ったサウサンプトンは後手に回らざるを得ず、一方的に攻め込まれた。前半を終わって0-5。戦意を失う選手が続出した。後半も失点を重ね、クラブ史に残る汚点ともいうべき大敗を喫したのである。

 このレスター戦以降、吉田麻也がレギュラーから外された。彼だけではなく、バートランド、GKアンガス・ガン、DFヤン・ベドナレク、ヤニク・ヴェステルゴーは、多くのメディアに戦争犯罪人のように酷評された。しかしバートランドとベドナレク、ヴェステルゴーはレギュラーのままだ。

 吉田にとって代わったのはジャック・スティーブンスだった。彼がセンターバックに入った11節のシティ戦以降、サウサンプトンは2勝1分3敗。敗れた3試合もすべて1点差である。ラルフ・ハーゼンヒュットル監督もひと安心だろう。とりあえず、あくまでもとりあえず、解任の危機は去った。

 スティーブンスで答が出ているのだから、ハーゼンヒュットル監督は最終ラインを変えるはずがない。スティーブンス、ベドナレク、ヴェステルゴーが基本だ。吉田はベンチに入っているものの、優先順位は下がった。この事実をどのように捉えるべきか……。

別れがあるから出会いがある

 吉田とレギュラーの間に大差はない。いずれチャンスは必ず訪れる。まして年末年始のプレミアリーグは過密日程だ。だれかがコンディションを崩したとき、吉田は先発に名を連ねる公算が大きい。ここで好パフォーマンスを披露し、一気に再逆転というシナリオが考えられる。

 しかし、過密日程でも最終ラインだけは固定することだってありうる。吉田は31歳で、そのほか3人は20代だ。年齢差が日本代表DFのキャリアになんらの影響を及ぼしても不思議ではない。

 みずからの去就に関し、吉田は次のように語っていた。

「次を探すことになるかもしれないし、オプションが行使されるかもしれない」

 サウサンプトンとの契約は来年6月までだ。フリートランスファーにするよりは、移籍金が発生する来年1月の市場でビジネスを、と上層部は考えているかもしれない。吉田が指摘したオプションとは契約更新だろう。ただ、本稿執筆時点で吉田の契約に関する情報は届いていない。今シーズン限り、もしくは来年1月に放出が濃厚なのだろうか。

 サウサンプトンにおけるキャリアが終わりに近づいていたとしても、新しいページをめくればいいだけだ。別れがあるから出会いがある。世界中が恐れおののくリバプール、シティ、そしてトッテナムの強力アタッカーを相手にしてきた吉田の実績は、何物にも代えがたい。「DFリーダーとして是非ウチに」。色よいオファーは必ず届く。

(文:粕谷秀樹)

【了】

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