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日本代表 4年前

日本代表、仲川輝人は“日韓戦”に生き残れるか。香港戦で新境地開拓を。10番に課せられた重要命題【E-1サッカー選手権】

日本代表は14日、EAFF E-1サッカー選手権・韓国大会の第2戦で香港代表と対戦する。この試合では、10日に行われた中国戦からスタメンを大幅に変更することを明言している森保一監督。そのため、香港戦は田中碧や小川航基といった選手がデビューを飾ることになるだろう。その中で最も注目されるのが仲川輝人。JリーグMVPの男が香港戦で意識すべきこととは。(取材・文:元川悦子【韓国】)

text by 元川悦子 photo by Shinya Tanaka

香港戦はメンバー大幅変更へ

森保一
森保一監督は香港戦でメンバーを大幅に変更すると明言している【写真:田中伸弥】

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 EAFF E-1サッカー選手権2019の第2戦・香港戦が14日に行われる。10日の初戦・中国戦を2-1でモノにした日本だが、韓国も11日の初戦・香港戦を2-0で勝利。得失点差で韓国がトップに立っている。

 18日の日韓対決がドロー決着でもタイトルを手にするためには、日本が香港相手に大量得点を奪って勝つことが必要だ。4-5-1の基本布陣で、時間帯によっては6バックにして超守備的に戦ってくる香港を日本の攻撃陣がどのようにこじ開けるのか。それが今回の最重要テーマになるだろう。

 試合前日の森保ジャパンは15時半から1時間程度のトレーニングを非公開で実施。香港戦のスタメンは分からずじまいだったが、森保一監督が「2日前に練習していた選手が中心となって出場する」と大幅入れ替えを明言した通り、ほぼ全員が変わることになるだろう。

 GKは大分トリニータで今季J1出場なしの小島亨介を出すか、コパ・アメリカ2019参戦組の大迫敬介を出すか判断が分かれるところ。3試合でGK3人全員を回すという考え方なら小島だし、実戦経験を重視するなら大迫だ。そこは下田崇GKコーチの判断に委ねられることになる。

 フィールドプレーヤーは前日報じた通り、DF(右から)渡辺剛、田中駿汰、古賀太陽。右サイド・相馬勇紀、左サイド・菅大輝、ボランチ・大島僚太、田中碧、右シャドー・仲川輝人、左シャドー・田川亨介、1トップ・小川航基の並びが有力視される。

最も期待される男・仲川

仲川輝人
香港戦で活躍が期待されている仲川輝人【写真:田中伸弥】

 前線を見ても、仲川と田川は所属クラブで異なるポジションに入っていて、急造感は否めない。「パサータイプのシャドーがいないから点が取れなかったというのは言い訳にならない。彼らといい連係を取りながら点を取れるようにコミュニケーションを取って要求していきたい」と小川は自らがリードしていく構えだが、3人の関係性がよくなければ、サイド攻撃を意識したとしても中央を打開するのは難しくなる。そのあたりは意思疎通を密にしていくしかない。

 そんな中、とりわけ得点の期待が寄せられるのが、今季JリーグMVP・得点王をダブル受賞した仲川だ。中国戦はスタメンが期待されながら、優勝決定までの過密日程と疲労、普段と異なるポジションでの起用を考慮され、出番なしに終わった。「コンディション調整っていみではいい形で次の試合を迎えられると思う」と本人もスッキリした表情で語っているだけに、キレとスピードを前面に押し出したプレーが可能なはずだ。

 シャドーは専修大学時代に浦和レッズに練習参加した時以来ということで、かれこれ5年は経過している。その分、難しさはつきまとう。そんな彼が今回、参考にすべきなのは、中国戦で前線の潤滑油になった森島司の一挙手一投足だろう。彼は佐々木翔、橋本拳人、遠藤渓太、上田綺世といった近い距離にいる選手のポジションをしっかりと見極めながら、彼らをサポートしつつ、自らも決定機を演出していた。そこは仲川の脳裏にもしっかりと刻まれた点だ。

「自分がシャドーで出た場合には、DFとボランチの間を使いながら、シャドーとして一番いいポジションを取っていくのが大事。相手からすると、誰がつくのか分からないという中途半端なポジションをうまくとりながら、攻撃に絡んでいけばいいと思います」と彼自身もイメージを描きつつ、香港戦に挑むつもりだ。

日韓戦へ生き残るために

 161cmという小柄な体躯ゆえに、ブラジル生まれで香港市民権を取得した186cmの屈強DFヘイロらの激しいマークを受けると見られる。

 そこで何ができるかが、彼の腕の見せどころだ。初キャップとなる香港戦でいきなり前線の小川やシャドーで並ぶ田川、右アウトサイドの相馬といいコンビネーションを見せるのは難しいだろうが、「自分も航基を見るようにしてますし、彼に当てたボールをうまくサポートして、また動き出したところでスルーパスを出すといったパターンはできると思う。話すことが大事ですね」とお互いを生かし生かされる関係を目指していく構えだ。

 そのうえで、ゴールという結果を奪えれば理想的なシナリオだ。今回のスタメンの中で最も決定力があるのは仲川に他ならない。その絶対的武器を遺憾なく発揮するためにも、フリーの状況を数多く作り出し、シュートを打ちに行くことを考えるべき。そこも彼に課せられた重要命題と言っていい。

「しっかり香港に勝って日韓戦につなげることも大事だし、自分が出て結果を出していかないと自分自身の日韓戦というのもない。いい弾みをつけて日韓戦を迎えたいんで、結果を出しつつ、チームとして勝って行ければいいですね。ポジションも違うし、自分にとって新たな開拓にもなる。いろんなバリエーションを持った選手になれればいいと思います」と本人もシャドーで新境地を開拓しつつ、得点という結果に貪欲にこだわっていくという。

 まさに韓国戦へのサバイバルマッチとなる今回の香港戦。現時点では中国戦に出たメンバーの方がやや序列が上ではあるが、2戦目で華々しい活躍を見せれば、18日の大一番に抜擢される可能性は大いにある。

 今季JリーグMVPである仲川は現在の位置づけに甘んじているつもりはさらさらない。ここで底力を発揮し、違いを見せる……。そういう彼の一挙手一投足を楽しみに待ちたい。

(取材・文:元川悦子【韓国】)

【了】

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