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大迫勇也、19/20前半戦の評価は? チームと共にボロボロ…影を潜めるストライカーとしての存在感【欧州日本人中間査定(8)】

新年を迎え、2019/20シーズンは後半戦へと突入した。欧州各国でプレーする日本人選手たちはどのような活躍を見せたのか。今回はブレーメンでプレーする大迫勇也の前半戦を振り返る。(文:編集部)

シリーズ:欧州日本人中間査定 text by 編集部 photo by Getty Images

スタートダッシュは上々

大迫勇也
ブレーメンに所属する大迫勇也【写真:Getty Images】

 日本代表不動のCFとして、ロシアワールドカップやAFCアジアカップ2019などで活躍を果たしたFW大迫勇也。ポストプレーの上手さはピカイチで、ボックス内での強さも兼ね備える同選手は、今年行われる東京五輪でもオーバーエイジ枠として活躍することが期待されている。

 そんな大迫が現在も所属するブレーメンに移籍したのは、2018/19シーズン開幕前のことだ。ブレーメンは過去にブンデスリーガ4回の優勝を誇る名門であり、過去には元フランス代表MFのジョアン・ミクー、元ドイツ代表MFのメスト・エジルなどが在籍していた。2部降格の憂き目にあったケルンから移籍してきた大迫にとっては、大きなステップアップになったと言えるだろう。

 新チーム加入後、さっそくレギュラーの座を確保した大迫は、開幕戦のハノーファーとの試合でいきなり先発出場を飾る。しかし、そのポジションは本職のCFではなく、右ウィングであった。

 新たなポジションで可能性を示した大迫は、翌第2節のアイントラハト・フランクフルト戦で左ウィングとして出場し、移籍後初得点を記録。以降もコンスタントに出場機会を得るなど、アピールに成功した。

 シーズン途中に日本代表としてAFCアジアカップ2019に出場、その後も怪我の影響などで欠場を余儀なくされる試合もあったものの、復帰後は再び先発で起用されるなど、指揮官からの信頼は揺るがなかった。結果、大迫は2018/19シーズンのリーグ戦を21試合3得点3アシストという成績で終えた。ストライカーとしては少し物足りない成績にも思えるが、FWマックス・クルーゼらのサポート役としては十分なパフォーマンスであったと言える。

 迎えた今季。チームの大黒柱であったクルーゼが、トルコのフェネルバフチェへ移籍した。そのため、大迫に懸かる期待はさらに大きなものとなった。得意のポストプレーのみならず、ストライカーとしてゴールを量産することが求められたのだ。

 その期待に応えるように、大迫は開幕からエンジン全開で突っ走ると、第2節のホッフェンハイム戦で得点を記録。翌第3節のアウクスブルク戦では2ゴールを叩き出し、チームの今季リーグ戦初勝利に大きく貢献している。開幕から3試合で3得点。スタートは、これ以上ないほど順調だった。

 しかし、そうした日々も長くは続かなかった。

怪我の影響でパフォーマンスも低下

 第5節のRBライプツィヒ戦を控えていた昨年9月18日、大迫はトレーニング中に太ももを負傷。4~6週間ほどの離脱を強いられたのだ。結局、その影響で第5節から第9節までの5試合を欠場することになった。

 大迫は第10節のフライブルク戦で戦列復帰を果たすと、第12節のシャルケ戦では復帰後初得点もマークしている。しかし、その後はチームとともにパフォーマンスは低下。第15節のバイエルン・ミュンヘン戦では1-6、第16節のマインツ戦では0-5の大敗を喫するなど、ボロボロの状態になっていた。

 大迫はチームが不調の中、先発出場を続けていた。しかし、リードを許している状況、つまり得点が欲しい時間帯でフロリアン・コーフェルト監督から交代を告げられることがほとんどとなっている。リーグ再開戦となった第18節のデュッセルドルフ戦では先発落ち。出場は後半のわずか4分間に留まっている。

 怪我による影響はあるのだろうが、クルーゼの抜けた穴を埋める存在として期待されていた大迫のパフォーマンスは決して良いとは言えない。今季は3トップの中央で起用される機会が多いが、1トップがリーグ戦13試合の出場で4得点はなかなか厳しい数字である。

 だが、大迫のみならずチーム全体で攻撃陣が低調なパフォーマンスに終始しているのも事実。日本人FWの両脇には基本的にMFレオナルド・ビッテンコート、MFミロト・ラシツァが起用されるのだが、彼らのサポートも決して満足いくものではない。0-1で敗れた第14節のパーダーボルン戦でも前線で孤立するシーンが目立っており、得意のポストプレーなどもほとんど活きなかった。

 地元紙もこの大迫のパフォーマンスを厳しく評価。第17節のケルン戦の後、『ダイヒシュトゥーベ』では大迫に「5点」をつけており(ドイツでは1~6点までで点数が低いほど高評価)、「日本人選手は古巣相手の試合でも過去数週間と変わっておらず、アイデアも意思を貫く強さもなかった。前線の起点役として、ほぼ完全に消えていた」と辛口なコメントも残している。

システム変更を機に復調なるか

 ブレーメンはリーグ戦18試合で24得点、失点数はリーグ最多タイとなる41まで積み上がっている。第18節のデュッセルドルフ戦で勝利したことで順位は16位に上がったが、依然として厳しい状況であることは間違いない。

 後半戦、大迫には奮起が求められる。クルーゼの穴を埋めることはもちろん、いまはチームの下位脱出を目指すべく、どんな形であれ結果を残すことが大事である。

 ただ、地元メディア『ダイヒシュトゥーベ』はブレーメンがマジョルカで行っていたキャンプの総括で大迫について「年明けに体調不良を訴えた影響もありコンディションを上げる必要があるオオサコはキャンプの一部を休んだ。その結果、モンツァとの試合は25分間、ハノーファー戦では45分間のみの出場に留まった。ハノーファー戦ではチャンスを作るも、完全にフィットするまでには時間が必要だ」と厳しい評価。その寸評通り、完全復活へ向けてはもう少し時間がかかりそうだ。

 ブレーメンは今冬の移籍市場でホッフェンハイムからDFケビン・フォクトを獲得している。同選手は前所属クラブでは主に3バックの中央でプレーしており、安定感ある足元の技術を武器に攻守で存在感を放てるプレーヤーだ。2017/18シーズンではユリアン・ナーゲルスマン監督の下、シーズン通して好パフォーマンスを見せており、ホッフェンハイムのチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得に大きく貢献していた。

 そんなフォクトの加入もあり、ブレーメンは今後も3バックをベースにシーズンを駆け抜けていく可能性がある。先日行われた第18節のデュッセルドルフ戦ではさっそく3-1-4-2のフォーメーションを採用しており、そこで勝利を手繰り寄せている。コーフェルト監督も手応えを掴んだことだろう。

 大迫は同システムの場合、2トップの一角として出場することが濃厚だ。1トップ時よりは味方のサポートも増えるはずで、背番号8にとってはプレーしやすい環境が整うかもしれない。

 しかし、そこでも活躍ができなければ…。チームにとっても大迫にとっても勝負となる後半戦。果たして運命やいかに。

(文:編集部)

【了】

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