フットボールチャンネル

アーセナル、エナジーがもたらした大勝。エジル、ペペ、サカ。左利きの3人が生み出す魅惑の攻撃

プレミアリーグ第26節、アーセナル対ニューカッスルが現地時間16日に行われ、4-0でアーセナルが大勝した。4試合ドローが続いていたアーセナルは、この試合でも前半は無得点で折り返したが、後半は一転して4得点を挙げて勝ち切った。戦術的に大きな変化を試合中に加えることはなかったが、選手たちの「エナジー」が大勝を呼び込んだ。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

守備を固める相手に苦戦するアーセナル

0217Arsenal_getty
【写真:Getty Images】

 アーセナルは6勝6敗13分で11位、ニューカッスルは8勝10敗7分で12位。ともに勝ち点31で並ぶ両チームが相まみえた。

【今シーズンのアーセナルはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。2ヶ月無料お試し実施中】


 アーセナルは4試合連続で引き分けて、2週間のインターバルに突入した。その間はドバイでキャンプを張り、終盤へ向かうプレミアリーグと決勝トーナメントに突入するUEFAヨーロッパリーグの戦いへと準備を進めた。

 5-4-1で守るニューカッスル陣内にアーセナルが侵入するのはそう難しくはなかった。4-2-3-1のアーセナルは「4」の両サイドがタッチライン際に張り、「3-1」が中央で機を窺う。「2」が中央でボールを捌くが、目の前に立ちふさがる「5-4」を前に、ボックス内に侵入することはままならなかった。

 最終的に4得点を奪ったアーセナルだったが、立ち上がりはファーストシュートまで21分を要している。左サイドでリターンパスを受けたブカヨ・サカが、利き足ではない右足を振り抜いたが、枠を捉えることはできなかった。

 スロースタートな序盤戦だったが、引いた相手に積極的に縦パスを入れることで形勢は徐々に動いていく。奪われてカウンターのピンチを招く場面もあったが、粘り強くプレッシングをかけることで徐々に攻撃の形を見せていった。68%のボール保持率を記録するだけでなく、前半は9本のシュートと3本の枠内シュートを記録している。

充実感が垣間見えた4得点

 試合は無得点のまま前半を終えた。両チームともハーフタイムに戦術的な変更を施すこともなく、試合は後半へと突入した。

 47分のピエール=エメリク・オーバメヤンが放ったシュートはミートせず、50分にエディー・ヌケティアが狙ったが、シュートは惜しくもクロスバーを直撃した。立ち上がりからアーセナルの前線は活性化され、立て続けにチャンスを作っている。

 54分、右サイドからニコラ・ペペが浮き球のクロスを送る。ファーサイドで待つオーバメヤンは背後のヴィレンティノ・ラザロを抑えながら落下地点に入ると、頭で合わせてゴールネットを揺らした。

 先制点から間髪入れず、オーバメヤンが左サイドでボールを持ち、インナーラップしたサカにボールを渡す。サカは寄せてきた2人のDFをかわしてペナルティーエリアに侵入し、ラストパスをゴール前に送る。これをペペが左足でゴールに流し込み、57分にアーセナルが追加点をあげた。

 90分にはオープンな展開からエジルがドリブルで運ぶ。ボールはペペからラカゼットを経由してゴール前のエジルが決めて3点目。さらに後半アディショナルタイムには右サイドを3人で崩し、ペペからのラストパスをラカゼットが決めた。

 4点目の喜び方に、戦いへの手ごたえと充実感が垣間見えた。

3人の左利きが見せた圧巻のパフォーマンス

 とりわけこの試合のアーセナルで目立っていたのは、左サイドバックに入ったサカと、右ウイングのペペ、そしてトップ下のエジル。特に後半は、左利きの3人が攻撃陣をけん引した。

 データサイト『Who Scored』によれば、1得点2アシストのペペはチーム最多タイの4つのキーパスを記録。精度の高い左足からのセットプレーは得点には至らなかったが、クロスも7本のうち3本が味方につながっている。

 3点目を決めたエジルは両チーム最多の95.9%のパス成功率を叩き出している。パス本数自体は49本で、中盤に降りてきてパスを受けるような場面もそこまで多くはない。最終ラインの選手には見られる数字だが、トップ下の選手としては驚異的な成功率である。キーパスもペペと並ぶ4本をマークしており、ペペと並んでファイナルサードにおいて重要な役割を担っていた。

 サカはチーム最多の6回のドリブルを成功させた。2本のシュートに至る過程でもドリブルで相手を剥がしている。負傷者続出によって左サイドバックにコンバートされたサカは、攻撃面でウインガーらしい特長を示した。

大勝の要因はエナジー

 右はペペ、中央にはエジル、そして左にはサカがいる。サカが左サイドで張ることで、一列前のオーバメヤンはゴール前での仕事に力を割くことができた。

 ミケル・アルテタの監督就任以来ゴールから遠ざかっていたラカゼットは、短いプレータイムで1得点1アシストの活躍。1月にローンバックされてこの試合が初先発となったヌケティアも、フィニッシュの精度こそ欠いたものの、可能性を感じさせるプレーぶりだった。ELを戦う上では、ヌケティアの存在も重要度を増していくことになるだろう。

 グラニト・ジャカのパートナーには、ルーカス・トレイラではなくダニ・セバジョスが選ばれた。ケガからの復帰後は出場機会を失っていたセバジョスだったが、2週間のインターバルを経てチャンスを掴んだ。この試合でのパフォーマンスに、指揮官も称賛のコメントを送っている。

 前半と比較して、後半のアーセナルが戦術的に大きな変更を加えたようには見えなかった。ハーフタイムの指揮官の指示を問われたオーバメヤンも「彼(アルテタ)は前に進もうと言っただけだよ」と明かしている。

「後半は僕らのエナジーに相手が敵わなかった」と試合後のサカがコメントした通り、後半のアーセナルはアグレッシブな姿勢が目立った。スイカに塩をかけると甘さが引き立つように、チーム全体のエナジーがレフティー3人の魅力を引き出したような試合だった。

(文:加藤健一)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top