久保建英が消えた理由。肉弾戦上等のヘタフェを前に沈黙…マジョルカが露呈した力不足

ラ・リーガ第26節が現地1日に行われ、久保建英が先発出場したマジョルカはホームでヘタフェに0-1の敗戦を喫した。互いに万全とは言えない中での試合になったが、結果は妥当なもの。決してビッグクラブではないヘタフェに、マジョルカが手も足も出なかった理由とは。そしてフル出場した久保建英も力を発揮しきれなかった要因に迫った。(文:舩木渉)

2020年03月02日(Mon)11時48分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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強いヘタフェ。ELでも爆進中

久保建英
【写真:Getty Images】

 ひと昔前なら残留争い中だったかもしれないが、今のヘタフェとの戦いに苦労しないチームはないだろう。マジョルカも例に漏れず、現地1日に行われたラ・リーガ第26節で0-1の敗戦を喫した。

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 両チームとも手負いの状態での対決になった。ホームのマジョルカは9ゴールを挙げてチーム内得点王のFWアンテ・ブディミルがコンディション不良で欠場を強いられた。一方のヘタフェはラウンド16進出を決めたヨーロッパリーグ(EL)のアヤックス戦から中2日かつ2試合連続のアウェイゲームという強行日程で、マルク・ククレジャとアラン・ニョムという両翼のキーマンも出場停止で欠いていた。

 だが、チャンピオンズリーグ(CL)出場権争いに身を置くヘタフェは強かった。ホセ・ボルダラス監督が鍛え上げた戦士たちは、統率のとれた動きで強度の高い展開に持ち込む。喧嘩上等とも取れる独特の戦術は、テクニカルな側面が強調されがちなラ・リーガの中でも異端だ。

 それは先発メンバーが多少入れ替わっても変わらない。ピッチのいたるところでデュエルを挑み、肉弾戦が発生する。最終ラインの平均位置はリーグ内で最も高く、ファウル数やイエローカードの枚数もリーグ最多。どんどん前に出ていく強気の姿勢、悪い言い方をすれば「荒い」プレーの数々で相手の戦意を削いでいく。

 マジョルカはボルダラスの術中にはまった。エースストライカー不在で最近の試合で機能するようになってきていたブディミル、クチョ・エルナンデス、久保建英のトライアングルが崩れ、攻撃は単発に。ビルドアップの拙さもあり、ヘタフェの圧力に呑まれて相手ゴール前まで満足にボールを運べすらしなかった。

 そして迎えた67分、マジョルカはついにゴールを割られた。主導権を握るヘタフェはセントラルMFのマウロ・アランバリから左に大きく展開し、13試合ぶりに先発出場したケネディがクロスを上げる。ペナルティエリア内では中盤から駆け上がって完全フリーになっていたネマニャ・マクシモビッチが頭で合わせ、先制点を奪った。

久保建英が試合から消えた理由

 もし守護神マノロ・レイナの好セーブがなければ、さらに多くの失点を喫していてもおかしくなかっただろう。ボール支配率ではマジョルカが55%とヘタフェを上回っていながら、シュート数ではマジョルカがわずか4本だったのに対しヘタフェは9本も放っていた。また、枠内シュート数でもマジョルカが1本で終わったのに対し、ヘタフェは5本と大きく上回っていたことから試合展開も容易に想像することができるだろう。

 互いにパス成功率が60%台という大味で強度の高い展開の中で、久保の存在感は消えてしまった。前半は4-1-4-1の右サイド、後半からは選手交代にともなって4-4-2の右サイドを担ったが、目立ったのは序盤にテクニカルなスルーパスで味方の最初のチャンスを演出した場面くらい。フル出場を果たしたものの、苦しみ続けているのは画面を通じてもわかった。

 選手間の距離が近く、布陣全体がコンパクトでヘタフェの選手のタックルがあらゆる方向から飛んでくる状況で、マジョルカは全体が間延びして味方同士の距離が遠かった。特にディフェンスラインは相手のプレッシャーを怖がってか全く押し上げることができず、ビルドアップが低い位置でノッキングを起こす原因になっていた。それによって近い距離でのコンビネーションを得意とし、能動的に周りを動かせる久保の持ち味も消えてしまった。

 また、ブディミルの不在は想像以上に大きく響いていた。いつもなら雑に蹴り出しても前線で競り合って時間を作ってくれるターゲットがいないのだ。クチョ・エルナンデスは機動力が武器の選手で、後半から出場したパブロ・チャバリアやアブドン・プラッツもストライカーとしての総合力がラ・リーガのレベルに達していない。

 最近はブディミル、クチョ・エルナンデス、久保のトライアングルが好連係を見せて攻撃をけん引していたが、頂点のクロアチア人ストライカーがいないことで機能性が失われた。誰かが不在の時に代役を務められるような選手が全てのポジションに揃っていない。やはりスカッド全体として明らかに力不足で、選手層の薄さを露呈する結果となった。

バルサMFは厳しく非難するが…

 一方、ヘタフェはELを戦いながらリーグ戦でもCL争いをしているだけの充実ぶりをベンチからも示して見せた。これまで両翼で攻守に不可欠な存在だったククレジャとニョムが出場停止でも、チームとしての機能性は失われず、競争心を掻き立てられた代役たちが持ち味を存分に発揮した。左サイドで久々に先発したケネディは惜しみないハードワークと随所に見せるテクニックで貢献し、アシストも記録。右サイドでは冬の新戦力オゲネカロ・エテボが自慢のタフネスで躍動していた。

 前線ではアンヘル・ロドリゲスがハイメ・マタとともにプレッシングの先鋒を担い、ベンチからは冬に加入したばかりのブラジル人FWデイベルソンがクローザーとして投入され、その任を全うした。大ベテランのホルヘ・モリーナを休ませられたことも大きい。アンヘルは途中出場がメインながらすでに10ゴールを挙げているが、他の選手の実力も拮抗しておりポジション争いは熾烈だ。

 ヘタフェのサッカーは最近、バルセロナのMFフレンキー・デ・ヨングに「僕にとってはすごくイライラするものだ。ヘタフェはファンを楽しませるプレーをしていない。彼らの試合を見るのは煩わしい」と批判されていた。体と体のぶつかり合いを恐れず、カードをもらっても身を粉にしてチームのために走って戦うサッカーは、確かに一見すると非常に地味だ。パスに美学を見出す人間からは「アンチフットボール」と非難されてもおかしくない。

 だが、強度が高く展開が異常なまでに速いという点でエキサイティングさは十分にある。選手たちがバチバチぶつかり合う様は圧巻で、相手チームがペースを狂わされる理由もそこにある。ボルダラス監督の志向するスタイルに適合した選手が揃い、何より結果が出ていることが彼らの取り組みの正しさを証明していると言っていいだろう。

マジョルカは残留争いを生き残れるか

 マジョルカはチームの総合力でヘタフェに格の違いを見せつけられて敗れただけでなく、残留のために1つも負けが許されない終盤戦に向けて大きな代償を背負うことになった。1点を追う試合終了間際、敵陣ペナルティエリア横で久保が倒されたもののノーファウルと判定された場面で、ベンチに下がっていたサルバ・セビージャが猛抗議の末に主審から2枚のイエローカードを提示されて退場になってしまった。

 大ベテランながら中盤のかじ取り役として欠かせない存在だったサルバ・セビージャの出場停止は、次節
の戦いに大きく響くだろう。ヘタフェ戦はどのチームもカードが増える傾向にあり、マジョルカもこの試合で計4枚のイエローカードをもらってしまったことで出場停止のリスクを抱える選手が増えた。先月25日に加入したばかりの元韓国代表MFキ・ソンヨンも控えるが、長期間試合から遠ざかっているベテランに過度な期待を寄せることはできない。

 マジョルカを率いるビセンテ・モレノ監督は「ラ・リーガで素晴らしいシーズンを過ごしているチームと、非常に拮抗した試合ができた。最初にゴールを決めた方が勝つ、そしてそうなっただけだと感じている」と努めて前を向いたが、現実を受け入れる必要があるだろう。目の前の試合で1つひとつ勝ち点を積み重ねていくしか、現状のチーム力で残留を実現する方法はない。

「私は(残留争い中の)他のチームが何をするかは気にしていない。我々のことは自分たちしだいだからだ。とにかく勝たなければならない。腐ることなく信じ続けなければならない。非常に難しいスタジアムでの、非常に複雑なライバル関係にある相手との試合に向けて、新たな週をスタートさせなければならない。戦い続けなければならないんだ」

 モレノ監督は顔を上げて、ヘタフェ戦の負けを悲観することなく次の試合に向けて準備していくことの重要性を強調した。次節は残留争いで直接のライバルとなる、16位エイバルとのアウェイゲームになる。暫定ながら5ポイント差で上回られている相手に少しでも近づくためには勝利しかない。久保と乾貴士の日本人対決にもなる試合は、3ポイント以上の価値を持つ90分間となるだろう。

(文:舩木渉)

【了】

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