「偽9番」はどのようにして生まれたのか? ヨハン・クライフより以前に存在した男たち【ファルソ・ヌエベの系譜(1)】

クライフ、サッキ、グアルディオラ、ジダン…強く美しい戦術はどのような系譜をたどり、いま、まさに究極の戦術が生まれようとしているのか? トータルフットボールの進化という大河の源流と革新を綴る濃密な戦術ガイド本『サッカー戦術クロニクル ゼロ』から一部抜粋して公開する。(文:西部謙司)

2020年04月25日(Sat)10時00分配信

text by 西部謙司 photo Getty Images
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ディ・ステファノの系譜を継いだヨハン・クライフ

ヨハン・クライフ
【写真:Getty Images】

 CFのプレーメーカー化は必然的に前線におけるポジションの流動化を促す。その意味で、全員攻撃全員守備のローテーションを特徴の1つとするトータルフットボールのトリガー機能になった。

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 ただ、フットボールが英国からヨーロッパ大陸へ伝えられた時点で、CFのタイプはやや異なっていたとも考えられる。英国では大柄で馬力のある戦車タイプが典型的なCFだったが、ヴンダーチームのマティアス・シンデラーは「紙男」なのだ。

 細身の技巧派であり、英国系とは全くタイプが違う。通算1329ゴール(1239点説もある)、ブラジル最初のスーパースターであるアルトゥール・フリーデンライヒもスマートな体躯のCFだった。こちらも〝ジョガ・ボニート〞(美しいプレー)の技巧派である。

 ペデルネーラが元祖というよりも、同じようなタイプのCFはすでにいたのだろう。ただ、そのころの守備は2バックであり、CFが後退する戦術的な効果を狙ったわけではない。

 ペデルネーラの直接の後継者はアルフレード・ディ・ステファノだ。言わずと知れたフットボール史上最高クラスの巨人。ディ・ステファノはリーベルの右ウイングとしてデビューし、ウラカンに貸し出された後、リーベルに戻ってペデルネーラのポジションを奪いとった。

 ペデルネーラはもともとインナーであり、ディ・ステファノもウイングとオリジナルのポジションはCFではない。ディ・ステファノはペデルネーラがプレーイング・マネジャーを務めるコロンビアのミリョナリオスへ移籍し、さらにスペインのレアル・マドリーへ渡ってチャンピオンズカップ5連覇など、史上に大きな足跡を残すことになる。

 ディ・ステファノが活躍したのとほぼ同時期には、マジック・マジャールと呼ばれたハンガリーでナンドール・ヒデクチが「偽9番」として有名だった。

 この系譜でディ・ステファノを継いだのが年代にトータルフットボールの中心となったヨハン・クライフである。クライフは実際、「ディ・ステファノの再来」と新聞や雑誌で紹介されていた。70年ワールドカップで優勝したブラジルのCFトスタンも「偽9番」といえる。このあたりまでが、いわばナチュラルな「偽9番」だろう。

 ファルソ・ヌエベをシステムとして消化させたのは、この役割の大立者だったクライフだ。

(文:西部謙司)

9784862554130

『サッカー戦術クロニクル ゼロ』


定価:本体¥1500+税

<書籍概要>
単に選手のポジションを交換するからトータルフットボールなのではなく、パスワークのスタイルを貫いた結果、ポジション互換性が必要になってくる。つまり、パスワークこそがトータルフットボールの源ということがみえてきます。(中略) パスワークとプレッシング。この2つをトータルフットボールの成立要件と仮定して、過去から現在に、そして現在から未来へ、トータルフットボールをキーワードに戦術史を紐解いていきたいと思います。 (本書「プロローグ」より抜粋)

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【了】

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