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リバプールを打ち破ったシメオネのゲーゲンプレッシング2・0。クロップ魔法陣はすでに最強でない現実【データアナリストの眼力 前編】

最先端の戦術コンセプトを独自の分析で一枚の絵に表現してきた“異端のアナリスト”庄司悟氏の新連載が6/8発売の『フットボール批評issue28』でスタートする。最強リバプールをCLラウンド16で打ち破ったディエゴ・シメオネのアトレティコ・マドリーを解き明かした記事を、発売に先駆けて一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:庄司悟)

text by 庄司悟 photo by Getty Images

革新的な戦術によって完全勝利を収めたアトレティコ

リバプール
【写真:Getty Images】

 週中のUEFAチャンピオンズリーグ、週末のリーグ戦が中断、もしくは中止というかつてない状況下で、選手、監督はいったい何をし、何を考えているのだろうか。自宅でもできる数々のトレーニング動画をSNSに上げ、あるいは過去の名勝負数え歌を解説するのも確かに悪いアイデアではない。

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 しかし、真のプロフェッショナルであれば、リーグ戦再開後の潮流を予測し、どう身を処すべきなのか、自身、もしくはチームの戦略を練りに練っているはず……というのが、皮肉でもなんでもなく筆者の見立てである。

 例えばヨーロッパの再開時はどのようなシチュエーションであるかと言えば、CLに無敵を誇ったあのリバプールはもはやいない、という厳然たる事実がまずある。プレミアリーグでは依然、最強の座にいることに変わりはないものの、ヨーロッパの頂上トーナメントにおいて、少なからず陰りを見せたことは揺るぎようがない現実であろう。

 我が世の春を謳歌し続けていたユルゲン・クロップ=リバプールの戦術コンセプトは、相手のボールホルダーに対して4-3-2-1の4列のスロープを作り、タッチライン際に追い込んでボールを中に入れさせない、というものだった。ピッチの奥行を意識しにくいフットボーラーの盲点を利用し、まるで“お化け煙突”が立ちはだかっているような錯覚に陥らせる別名“クロップ魔法陣”のカラクリは、2月発売の別冊『フットボール戦術批評』で公開したとおりだ。

 その魔法陣をディエゴ・シメオネ =アトレティコ・マドリーが、CLのラウンド16で早くも見破ってしまうとは、さすがにこちらも予想はしていなかった。シメオネがクロップのパッションを上回った……といった感情的な凌駕などでは毛頭なく、クロップのコンセプトを逆手に取り、“ゲーゲンプレッシング2・0”と呼ぶにふさわしい革新的な戦術による完全な勝利は、アナリストの心をそれこそ揺さぶるものであった。

 では、1stレグ、2ndレグを合わせて計210分のいわば“似た者同士”の死闘でいったい何が起こっていたのだろうか。

(文:庄司悟)

サッカーの常識を覆すディエゴ・シメオネの戦術コンセプトとは!? その全貌は6月8日発売の『フットボール批評issue28』で。詳細は↓をクリック!

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『フットボール批評issue28』


定価:本体1500円+税

<書籍概要>
 とある劇作家はテレビのインタビューで「演劇は観客がいて初めて成り立つ芸術。スポーツイベントのように無観客で成り立つわけではない」と言った。この発言が演劇とスポーツの分断を生み、SNS上でも演劇VSスポーツの醜い争いが始まった。が、この発言の意図を冷静に分析すれば、「スポーツはフレキシビリティが高い」と敬っているようにも聞こえる。

 例えばヴィッセル神戸はいち早くホームゲームでのチャントなど一切の応援を禁止し、Jリーグ開幕戦のノエビアスタジアム神戸では手拍子だけが鳴り響いた。歌声、鳴り物がなくても興行として成立していたことは言うまでもない。もちろん、これが無観客となれば手拍子すら起こらず、終始“サイレントフットボール”が展開されることになるのだが……。

 しかし、それでもスタジアムが我々の劇場であることには何ら変わりはない。河川敷の土のグラウンドで繰り広げられる名もなき試合も“誰かの劇場”として成立するのがスポーツ、フットボールの普遍性である。我々は無観客劇場に足を踏み入れる覚悟はできている。

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庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ。1974年の西ドイツW杯を現地で観戦し、1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現在はSportec Solutionsに社名を変更し、ブンデスリーガ公式データ、VARを担当)と提携。ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSの技術をもとに分析活動を開始

【了】

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