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アーセナルは“惨敗”すらも魅力…? 若手の宝庫? 未完の大器? ファンが明かす本音【アーセナルファン座談会(終)】

「ビッグ6」の一角であるアーセナルは、プレミアリーグを代表する人気クラブの一つだ。その中でも、ここ日本では世界的に見ても頭一つ突き出た人気を誇っている。その理由はどこにあるのか? 今回はサポーター歴の異なる4人のファンにそれぞれのきっかけをうかがいつつ、アーセナルの魅力を全3回で探った。今回は第3回。(取材・文:内藤秀明)

text by 内藤秀明 photo by Getty Images

「僕らの世代はユナイテッドが一番のライバルだった」

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【写真:Getty Images】

−−では次は、個人的に最もライバル視しているクラブと、そのクラブとの対戦、もしくは他クラブとの対戦で最も悔しかった試合についてみなさんにうかがっていきたいと思います。樋口さんはいかがでしょうか?

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樋口「やっぱり僕らの世代だと一番ライバル視していたのはマンチェスター・ユナイテッドですね。2000年代前半は特にサー・アレックス・ファーガソン率いるユナイテッドと優勝争いを繰り広げることが多く、“2強”と言われていた時代でしたから。

 そういう意味でいうと、一番悔しかった試合は、無敗記録(49試合)を止められた04年10月のユナイテッドとの試合ですかね…。あの若かりし頃のウェイン・ルーニーが大活躍した試合です。

 無敗優勝を成し遂げた03/04シーズンも、ユナイテッドには勝てていませんし(0-0と1-1の2引き分け)、やっぱり当時のユナイテッドとのライバル関係は本当に強烈でしたね。

 04〜07年の『第1次ジョゼ・モウリーニョ政権時』のチェルシーとも、もちろん強烈なライバル関係でしたが、あのころのユナイテッドには及びませんよね」

石谷「やっぱり最大のライバルはトッテナムですかね。僕らの世代はみんなそうだと思いますが。悔しかった試合については、本当に直近になってしまいますが、今年2月に行われたヨーロッパリーグ(以下EL)決勝トーナメント1回戦の第2戦、オリンピアコス戦ですね。1-2で敗れて、トータルスコアは2-2でしたがアウェイゴールの差で敗退が決まってしまいましたから。

 ヨーロッパの舞台で何度か対戦したことのあるオリンピアコスとの試合で負けたということも悔しかったですが、延長後半にオーバメヤンがトータルスコア2-1となるゴールを決めてほぼ決まりかと思われたところから試合終了間際にゴールを決められて敗退してしまったのが…ショッキングな展開で本当に悔しかったです」

仲田「僕の場合は、一番ライバル視しているクラブは正直ありませんが、これまでで最も悔しかった試合は、14/15シーズンのCL決勝トーナメント1回戦、モナコとの1stレグ・2ndレグ合わせた2試合ですね。

 それまで毎シーズンのようにCL決勝トーナメント1回戦で、バルセロナやバイエルン・ミュンヘンなどの強豪クラブとあたり敗退していたアーセナルが『ようやくクジ運に恵まれてベスト8に進める!』と思っていました。(1stレグホームで1-3で敗れ、2ndレグでアウェイで2-0で勝利し、2戦合計3-3も、アウェイゴールの差で敗退)。

 今思うと、当時のモナコもディミタール・ベルバトフ、ジョアン・モウチーニョ、アントニー・マルシャル、ジェフリー・コンドグビア、ファビーニョ、ヤニック・カラスコ、ベルナルド・シウバとかなり豪華なメンバーなので、敗退もしょうがないのですが…。当時は彼らがどれほどの選手になるかもわかっていなかったので、悔しさは大きかったです」

田中「僕もライバルクラブは特にないんですが、一番悔しかった試合は17/18シーズンEL準決勝のアトレティコ・マドリー戦ですね(1stレグホームで1-1で引き分け、2ndレグアウェイで1-0で敗れ、2戦合計1-2で敗退)。ヴェンゲルが退任前の最後のシーズンでした。

 個人的に就職活動をはじめたばかりの時期で、第一志望の企業に落ちてしまった直後の敗退でしたから、なおさら辛かったです」

−−プライベートの悲しいことと、敗戦がかさなると、記憶に残ることはありますよね。

「定期的に愛情をたしかめるための“試練”を与えてくる」

−−敗戦でインパクトが大きかったものでいうと、11/12シーズンの第3節、アウェイで8-2と衝撃的な大敗を喫したユナイテッド戦もありましたが、『あの試合がきっかけでアーセナルファンになりました』という方もいるみたいです。その気持ちはなんとなく理解できるのでしょうか?

樋口「あの試合に関しては、開幕直後で怪我人も多く、正直『大敗するべくしてした』と思っていますし、一番悔しい試合…ではない気がしています。あとそういう大敗で好きになる気持ちもなんとなくわかりますね。『このチーム大丈夫か!?』と興味が湧きますし、『負けているのをみて応援したくなる』という人はアーセナルファンに多いと思いますよ」

仲田「先ほどのモナコ戦もそうですけど、アーセナルは定期的にショッキングな負け方を喫して『試練』を与えてくるんですよ(笑)」

−−ということは、アーセナルファンの皆さんは、そういう敗北を喫することで定期的に『悔しい、それでも応援したい』という気持ちを試されているというか、愛情を再確認させられているわけですね。

仲田「究極的なことをいうと、あの8-2があったおかげで直後の移籍市場最終日に“パニック・バイ”をしてミケル・アルテタやペア・メルテザッカーを獲得したわけですから。

 アルテタがトップチームの監督、メルテザッカーがアシスタントマネージャーとして今もクラブに関わっていることを考えると、もしかしたらあのときのユナイテッドには感謝しなければいけないのかもしれない…そんなことさえ考えてしまうのがアーセナルファンですからね(笑)」

樋口「『苦難を定期的に与えられるからこそ、些細な幸せを大きく感じる』という、人生にも繋がる部分がアーセナルにはありますよね」

「ヴェンゲルの育成哲学は受け継がれている」

−−では次に、今のアーセナルの魅力についてうかがっていこうと思いますが、樋口さんはいかがでしょうか?

樋口「まあアルテタが監督を務めていること自体も魅力ですが、今はやっぱり面白い若手選手がたくさんいるところですかね。無敗優勝を成し遂げた03/04シーズンでいうと、セスク・ファブレガスもデビューしていますし、そのころから今にいたるまでヴェンゲルの『育成哲学』が脈々と受け継がれていますよね。有望な若手選手を育てるクラブとしてヨーロッパでも一目置かれていますし。

 今季でいうと、ガブリエウ・マルティネッリ、マテオ・グエンドウジ、ブカヨ・サカ、ジョー・ウィロックなんかがそうです」

石谷「僕もやっぱり若手選手の台頭ですね。ただアーセナルは、有望な若手選手がたくさん育つのと当時に、“未完の大器”もしょっちゅう産んでいますから…まあそこも含めて魅力だと思います(笑)」

−−これに関しては、仲田さんと田中さんも一緒ですかね。

仲田「そうですね。若手の成長を見守られることがアーセナルファンの特権の一つだと思います」

田中「特に今季は主力の多くが若い選手ですしね」

「未来あるクラブであることは間違いない」

−−では最後に、今最も期待している若手選手についてみなさんから一人ずつおうかがして終わりにしたいと思います。樋口さんはいかがでしょうか?

樋口「来季からプレーできるウィリアム・サリバ(今季はレンタル移籍という形でサンテティエンヌに残留)ももちろん期待の星ですが、やっぱりマルティネッリですかね。アーセナルで育ったワールドクラスの選手を久々に見たいです。それこそ遡るともう直近はセスクぐらいしかいないと思うので、マルティネッリにはそんな存在になって欲しいですね」

石谷「サカですね。このままサイドバックとして大成するのか、ウイングにまた戻るのか、それととも両方こなせるユーティリティな選手として成功するのか、その辺も含めて今後注目していきたいと思います」

仲田「サカ、マルティネッリら10代の選手も素晴らしいですが、彼らの1、2個上の年代のウィロック、リース・ネルソン、エディ・エンケティアらにも期待を寄せたいですね。特にネルソンは昨季から少しずつ試合で使ってもらえるようになってきましたし、さらにこれから一皮向けて欲しいです」

田中「僕はグエンドウジですね。ビルドアップのときにボールを受けるポジションとそこから繰り出される中・長距離のパスのセンス、あとはまだ20歳そこそこですが試合中乱闘になったらすぐに味方選手を助けにいくあの度胸。その辺にも大物ぶりを感じますね。

 このまま順調に成長していけば将来的にキャプテンになれる可能性も秘めていると思います。これだけ有望な若手選手がいるのですし、アーセナルが未来のあるクラブであることは間違いないと思いますね」

−−アーセナルには魅力的な若手が多いので本当に楽しみですね。ではこの度は、長時間、お話をありがとうございました。

一同「ありがとうございました!」

(取材・文:内藤秀明)

【了】

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