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久保建英はシメオネの対策をも上回る。手を焼いたアトレティコ、前半と後半で見せた2つの異なる姿

リーガエスパニョーラ第34節、アトレティコ・マドリード対マジョルカが現地時間3日に行われ、3-0でアトレティコが快勝した。マジョルカの久保建英は右サイドで相手のDFを手玉に取ったが、ディエゴ・シメオネも試合中に対策を講じている。しかし、前半と後半で異なる顔を見せた久保は、アトレティコの守備陣を翻弄し続けた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

つけ入る隙を見せなかったアトレティコ

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【写真:Getty Images】

 久保建英はまたしても競合相手に爪痕を残した。爪痕がゴールという傷口に広がらず、もどかしさは増すばかりだが、アトレティコ・マドリードを相手にも強い存在感を残す結果となった。

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 守備の要であるマルティン・ヴァリエントとチーム最多の12ゴールを挙げているアンテ・ブディミルを出場停止で欠くマジョルカは、前節から4人を変更。久保は21日間で7試合目という過密日程で、ここまで全試合で先発している。

 マジョルカは前節で17位のセルタから5得点を奪って勝利し、残留争いへの望みをつなげた。そのはずみをなんとかこの試合にもつなげたいところだったが、アトレティコはつけ入る隙を与えなかった。PKで先制すると、前半終了間際に追加点を挙げ、79分のゴールでとどめを刺した。

 先制点は少し不用意だった。スローインをボックスの中で受けたアルバロ・モラタが縦に運ぼうとしたところを、振り切られそうになったジョアン・サストレがホールディングで倒してしまった。モラタのPKはGKマノロ・レイナに阻まれたが、キックより前にサストレがボックス内に入っていたためにやり直し。モラタは2度目をしっかりと決めて先制に成功している。

 マジョルカの立ち上がりは悪くなかった。アグレッシブに相手にプレッシャーをかけ、少ないタッチ数でボールをさばいて相手の守備を動かした。リーグ戦再開後に喫した4敗はすべて20分までに先制点を許していたが、この試合の最初の20分は互角に近い戦いを見せていた。それだけに、29分という時間帯の失点は、マジョルカの戦い方を難しくさせてしまった。

右サイドを制した久保建英

 久保のパフォーマンスはこの日も輝いていた。右サイドでボールを受ければ、世界屈指のディフェンスを誇るアトレティコのプレッシャーをかいくぐってチャンスにつなげた。マジョルカの攻撃のほとんどは久保を経由して展開されている。

 開始間もない5分、敵陣右サイドでボールを拾った久保はヤニス・カラスコをかわし、横から寄せてくるコケを振り切って、マヌ・サンチェスをダブルタッチで置き去りにした。さらに、42分には右サイドでボールを浮かせてマヌ・サンチェスをかわし、カバーに入ったコケを抜き去って深い位置まで切り込んでいる。

 プレーが切れた直後にホセ・ヒメネスが激怒するシーンが映し出された。おそらくは簡単に抜かれたサンチェスへ向けられたものだろう。同じ19歳のサンチェスを手玉に取った久保とは対照的に、2歳上で1億2700万ユーロ(約152億円)もの移籍金でアトレティコに加入したジョアン・フェリックスは54分に交代。若き2人のアタッカーは試合とは反対の内容で明暗が分かれた。

 アトレティコは前半で2点をリードしたが、ディエゴ・シメオネ監督は黙って久保のプレーを見ているはずがなかった。62分という早い時間にサンチェスを下げ、レギュラーのロディを投入して久保を封じにかかっている。

 この試合の久保は低い位置まで戻って守備をすることはあまりなかった。攻め残ることで相手の左サイドバックを低い位置に留まらせることができ、自身も攻撃に力を割くことができる。リオネル・メッシやネイマールがやる形である。この日の久保は彼らと同じように、守備をしないことでマジョルカの守備に貢献していた。

 対して、54分にピッチに入ったロディはあえて高い位置をとっている。高い位置を取ることで久保のポジションを下げさせるという狙いだった。シメオネはサイドバックを高い位置に取らせ、マジョルカで唯一得点の匂いがしていた久保のチャンスを絶った。

封じられた久保建英が見せた対応

 しかし、ここから久保は別の顔を見せる。それまでは右サイドのタッチライン際まで開く場面が多かったが、その後は中央や左サイドにも顔を出すようになった。流動的に動く久保は相手のプレッシャーをすり抜け、後半だけでシュートにつながるラストパスを5本も供給している。封じ込められたときに、次の策を打つ懐の深さを感じさせた試合だった。

 これは4得点に絡んだセルタ戦に近いプレーだった。右サイドに居続けるより、ピッチを幅広く動き回った方が久保の良さは出るのかもしれない。ここのところは右サイドでの先発が続いているが、この試合でアレクサンダル・トライコフスキが務めたセカンドトップのポジションでの起用も考える余地があるように思う。

 リーグ戦は残り4試合となった。残留への道のりは険しく、久保は今後も厳しいマークに遭うだろう。ただ、この日のように試合展開によって自身のプレーを変えることができれば、結果を残すことができるかもしれない。完敗の中で見つけた唯一の希望だった。

(文:加藤健一)

【了】

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