フットボールチャンネル

セリエA 4年前

吉田麻也では歯が立たず。「最低評価」となった理由は? 見せつけられたアタランタの攻撃力

セリエA第31節、アタランタ対サンプドリアが現地時間8日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。日本代表DFの吉田麻也は先発フル出場。大きなミスなどはなかったが、対峙したドゥバン・サパタには歯が立たなかった。セリエAという舞台に生き残るには、まだまだ力不足と言わざるを得ないか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

耐えたサンプドリア

20200709_serieA_getty
【写真:Getty Images】

 レッチェ、SPAL戦と連勝を果たし、目標である残留へ向けて一歩前進したサンプドリアにとって、この一戦は“チーム力”が試されることになった。現地時間8日、セリエA第31節。クラウディオ・ラニエリ監督率いるチームが対戦したのは、セリエA屈指、いや、今や世界でもトップクラスの破壊力を誇るアタランタだ。

【今シーズンのセリエAはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督率いるチームはリーグ再開後も好調を維持。サンプドリア戦を迎えるまでの5試合で5勝を挙げており、その中にはラツィオやナポリといった曲者もいた。また、同5試合で複数得点を果たせなかったのは前節のカリアリ戦のみ。中断前も合わせればリーグ8連勝中と、もはやその勢いは止まることを知らない。

 そんなチームを相手に、3連勝を目指すサンプドリアがどのような戦いを見せるのかは大きな注目ポイントとなった。また、日本代表DFの吉田麻也は先発出場。爆発的な攻撃力を誇るアタランタに対し、DFとしての力が試された。

 試合は序盤からアタランタがボールを保持する展開となったが、サンプドリアも勇敢に前からプレッシャーを与えており、奪ってから手数をかけないスピーディーな攻撃を仕掛ける。開始わずか2分には左サイドを駆け上がったDF二コラ・ムッルが際どいシュートを放つなど、入りは悪くなかった。

 それでも、やはりアタランタの攻撃陣はじわじわと恐さを発揮。FWアレハンドロ・ゴメスを中心に、両ウイングバックも果敢に前線へ飛び出す攻めの姿勢はサンプドリアを必然的に深い位置へ追いやり、早い時間にペースを掌握。人数をかけて守る相手に対し、FWヨシップ・イリチッチやFWドゥバン・サパタらのパワフルなプレーで強引に穴をこじ開ける場面もあった。

 しかし、サンプドリア守備陣も集中した守りを見せてよく耐えた。3バックもかなり高い位置を取るアタランタに対し効果的なカウンターも何度か繰り出しており、30分のFWマノロ・ガッビアディーニのように鋭いシュートを浴びせることも。ハイプレスは疲労の影響をまったく感じさせず、個々の部分では劣ることもあったとはいえ、チームとしては互角以上の戦いぶりを見せた。

 サンプドリアは前半を0-0で終えた。シュート数は相手を上回る8本。連勝中ということで勢いもあるのか、アタランタに対しては十分なパフォーマンスだった。

流れを変えたアタランタのシステム変更

 後半も、攻めるアタランタ、守るサンプドリアという構図に大きな変化はなかった。お互いに球際が激しく、見ごたえのある攻防がピッチ上で繰り広げられていたのである。

 そんな中、流れを一瞬にして変えたのはガスペリーニ監督だった。同指揮官はDFベラト・ジムシティに代えMFマルテン・デ・ローンを投入。システムをそれまでの3-4-1-2から4-2-3-1のような形に変更し、A・ゴメスを左サイドに、イリチッチを右サイドにそれぞれ配置したのである。

 A・ゴメスとイリチッチというボールを持つことができる選手をサイドに置いたことにより、アタランタの幅を使った攻めに可能性が増した。彼らはWBよりも高い位置でパスを受けることができ、基本的に中央へランニングすることで味方サイドバックの上がるスペースを確保。1トップやトップ下の選手も絡み、全体が近い距離を保つことでリズムが生まれ、相手のマークを確実に混乱させた。

 実際、64分には左サイドでボールを受けたA・ゴメスが内側に侵入し、最後は右サイドのスペースを駆け上がったDFハンス・ハテブールに決定機が生まれるシーンがあった。このように、アタランタは攻めの形を変えることで、再びペースを握ることになったのだ。

 一方、相手のシステム変更によりマークの受け渡し等が曖昧となったサンプドリアは高い位置でボールを奪うことができず、前半に効果を発揮していたカウンターが影を潜めた。これは試合後のデータになるが、アウェイチームは後半のシュート数がわずか5本。前半よりも少ない数字となっている。多少は疲労の影響もあるだろうが、アタランタの変化により苦戦を強いられたのは確かだ。

 そして、荒波を受け続けたサンプドリアの防波堤は74分に決壊。コーナーキックから最後はDFラファエル・トロイにゴールネットを揺らされた。

 さらに85分には、途中出場のFWルイス・ムリエルに鮮やかなミドルシュートを沈められ、0-2。試合はこのまま終了し、サンプドリアの連勝がストップする結果となった。

 一方、勝利を収めたアタランタはこれで怒涛のリーグ戦9連勝。この結果、暫定ながら3位に浮上しており、連敗中の2位ラツィオとの勝ち点差はわずか「2」、首位ユベントスとの勝ち点差は「9」となっている。そして、次節はそのユベントスとの対戦が控えており、ここで勝利を収めればスクデットの可能性もわずかに出てくるはずだ。

 ただ、「スクデットという言葉が頭をよぎらないのは、スクデットがすでにユベントスの手の中にあるからだ。土曜日の結果がどうであれ、ユベントスが最強のチームであることに変わりはない。チャンピオンズリーグ(CL)出場を見据えて一つずつ前に進んでいく。ナポリとミランは素晴らしいことをしているが、可能であればインテルとラツィオの先を行くようにしよう」と、ガスペリーニ監督はタイトル獲得に向けて控えめなコメントを残している。

 しかし、現実をしっかりと見つめながらも明確な目標に向けて着実に前進していく姿こそが、アタランタの強さを支えていると言えるのかもしれない。

吉田の前に立ちはだかった大器とは?

20200709_yoshida_getty
【写真:Getty Images】

 さて、サンプドリアに所属する日本代表の吉田はこの日も先発フル出場。DFオマール・コリーと2CBのコンビを組み、強敵アタランタに立ち向かった。

 ただ、やはり力の差は明らかだった。吉田は失点にこそ直接関与しなかったとはいえ、90分間通して大いに苦戦を強いられている。

 吉田を困らせたのはコロンビア代表FWのドゥバン・サパタだった。身長189cm・体重88kgという体躯を誇りながら身体能力も抜群で、確かな得点への嗅覚を持つ男に対し、日本代表DFは懸命に身体を寄せるなどはしたが、強靭なフィジカルを前に歯が立たず。何度も自陣でボールを収められた。

 アタランタはD・サパタ目がけてシンプルに長いボールを入れることがあった。吉田もそのパスにはしっかりと反応していたが、コロンビア代表FWとの競り合いに勝てたのはほんのわずか。データサイト『Who Scored』を見ても、D・サパタが5回も空中戦を制しているのに対し、吉田はたったの2回。CBとしてはやはり物足りない数字と言わざるを得ない。

 また、第27節のローマ戦でFWエディン・ジェコに2ゴールを浴びたように、この日も背後に抜け出してくる相手への対応に再び不安を募らせた。38分、A・ゴメスのロングボールに抜け出したD・サパタに対し吉田が後れを取り、GKエミル・アウデーロと1対1になるピンチを作り出してしまったのだ。ここでは失点こそ免れたものの、ポジショニングやボールへの反応等、大きな欠点を晒してしまったのは紛れもない事実だ。

 吉田自身に大きなミスはなかったものの、ファウル数4回を記録するなど、やはりD・サパタに対して無力化されてしまったのはいただけない結果だ。データサイト『Who Scored』ではチーム内ワースト2位タイ(スタメン組)となる「6.2」、『Sofa Score』では両チーム合わせて最低となる「6.0」という評価が与えられている。非常に厳しいパフォーマンスとなった。

 ジェコ、D・サパタとセリエAを代表するストライカーに力の差を見せつけられた吉田。とくに守備への注文が多いイタリアで生き残るには、現状のパフォーマンスではまだまだ物足りないと言える。

(文:小澤祐作)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top