冨安健洋は世界レベルの相手に奮闘。一段飛ばしで成長、指揮官が課した「試験」とは?

セリエA第33節、ボローニャ対ナポリが現地時間15日に行われ、1-1の引き分けに終わった。前節の後半から続けてセンターバックでプレーした冨安健洋はナポリの先制点に関与したが、その後は高いパフォーマンスを見せている。一段飛ばしで成長し続ける冨安にとっては、さらなるレベルアップに必要なものが見えた試合になっただろう。(文:神尾光臣【イタリア】)

2020年07月16日(Thu)10時56分配信

text by 神尾光臣 photo Getty Images
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ボローニャは「試験に晒されている」

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【写真:Getty Images】

「これまで我われがやってきたことは、順位表の上半分にいるという分においては十分だった。だが、我々が望んでいたことはこれではない。もっとやってほしいのだ。ヨーロッパの舞台に行きたければ、もっと強いメンタルを持たなければならなかった。我々すべてが、試験に晒されている」

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 ナポリ戦の前日記者会見で、ボローニャのシニシャ・ミハイロビッチ監督は地元記者を前にこのように語っていたという。12日のパルマ戦ではアディショナルタイムに2点を取られてせっかくのリードを帳消しにされた。「私の現役時代には経験しなかったことだ」とまで言っている。

 冨安健洋は、その失点に絡んでいた。FWロベルト・イングレーゼと競り合った際に押し負け、クロスを合わせられている。「もっとやってほしい」とは、当然その部分にも関わってくるわけである。

 そうして迎えたナポリ戦では「当然彼にも不満があるからプレーはさせない」という理由でリッカルド・オルソリーニをスタメンから外し、左サイドバックにはラディスラフ・クレイチが先発。そして冨安は、パルマ戦後半から引き続きセンターバックとして起用されていた。ステファノ・デンスビルの出場停止が解けたにもかかわらずだ。

冨安健洋は失点に関与

 失点するまでの内容は良かったので、デンスビルとの比較で冨安がCBとしても評価を上回ったと見ることも可能だ。だが「全員が試験に晒される」というミハイロビッチ監督の発言を当てはめるなら、ミスの後で切り替えてしっかり結果を出せるかどうか彼自身も試された、といったところか。

 相手は強豪、これを抑えれば来季は主力のCBとしても計算に入れられることだろう。ところが、立ち上がりに厳しい状況へ陥った。相手CKの守備で失点に絡んだのだ。

 7分、ナポリの左コーナーキック。冨安がエリア内でマークについた相手は、ギリシャ代表の巨漢CBコスタス・マノラスだ。キッカーが蹴る寸前の駆け引きで、冨安はマノラスの前に出て腕で行く手を遮った。しかしここでコースを切っても、相手はそれで諦めてはくれない。左側から来るボールに対し、マノラスは冨安を押し除けるようにして前に出て、頭からボールに突っ込んでいった。そしてゴールが決まった。

 冨安はなぎ倒されたが、ファウルの笛は吹かれない。この程度のコンタクトはファウルとはみなされなかった。ローマでプレーしていた2年前のCLバルセロナ戦のゴールが記憶に新しいが、セットプレー時のマノラスの強さは世界レベルである。その相手に対して、当たりがソフトなら強引に合わせられてしまう。パルマ戦に続いてまたも、勉強をさせられてしまった格好となった。

ナポリに渡り合った冨安健洋

 しかし肝心なのは、やられた後でどう切り替えるかということである。果たして冨安は、ここから質の高いプレーを披露した。ナポリの攻撃陣を前にして、だ。

 相手のFWを見て、ポジションを細かく修正する。ただ後方に張るだけではなく前に詰めて、中盤とのスペースを埋めに行く。パートナーのダニーロはもとより、ガリー・メデルやニコラス・ドミンゲスらと連携を図りながら、中盤から後方のスペースに穴がないようにと動いた。

 アルカディウシュ・ミリクがピッチの中央でボールを持てば、その進路に立ちはだかって前を向かせないようにする。別のところに展開すれば、細かく首を振って周囲を把握しつつ、ダニーロとの間隔を保ってゴール前のスペースを閉めた。

 前半のボローニャは相手に中盤を制圧されていたが、攻め込まれても最後のところで冨安は踏みとどまる。左サイドを攻め込まれても、クレイチが抜かれたところでフォローに入る。38分には戻りながら、相手の出したスルーパスをカットするようなプレーを見せた。

 試合の途中でプレスが噛み合わないのを見て、ミハイロビッチ監督は修正を入れる。守備の際はシステムを3-4-1-2にし、ナポリの中盤に対してマンマークで対応できるようにした。これを機に冨安のプレーもさらに良くなった。実質的には3CBの左として、クレイチをフォローして広範囲をカバー。相手がサイドからカウンターに出た場合には、ハーフウェーラインを飛び越してナポリの右ウイングにプレッシャーをかけるシーンもあった。

 持ち味とするボールコントロールの正確さも存分に発揮した。プレスの厳しいナポリの前線に対しても、冷静に対処。詰められても慌てずにフリーの味方を正確に把握して、パスを出す。攻撃に切り替える際には、自ら正確な縦パスをどんどんつなげていった。

 こうして冨安が相手の攻撃を凌ぎ、その圧力に押し負けなかったことは、チーム全体に良い効果をもたらした。DFラインが下がらず、結果として前方から積極的に守備をしてボールを奪いに行けるようになったのだ。ボローニャは試合のペースを握り、MFロベルト・ソリアーノを軸にしたショートカウンターで次々とチャンスを作る。冨安自身も非常にアグレッシブで、73分には高い位置でボールを奪うとそのまま中央突破。ドリブルでついに相手のゴール前に行き、マノラスにスライディングで止められるというシーンも演出していた。

もう一つ上のレベルを目指すには…

 そしてペースを掴んだボローニャは、80分にソリアーノのパスから抜け出したムサ・バロウがゴールを決めてついに同点とする。勝利が狙えると判断したミハイロビッチ監督は、最後の一枚の交代カードを使ってイブラヒマ・エムバイエを下げてデンスビルを投入し、冨安を右SBに戻した。課せられた役割は、攻めろということだ。ラストのワンプレーでは右サイドを豪快に縦へと破り、クロスを上げようとしたが、キックそのものは不正確で中央には合わず。そこでゲームセットの笛が吹かれた。

 冨安については、失点をしないということに関してはまた課題が残ってしまった格好となった。上のレベルを目指せというのであれば、最後に攻め上がったシーンでも点に繋げて欲しかったところではある。だが強豪で、しかもロックダウン後好調を誇っていたナポリ相手に良いパフォーマンスを展開し、勝ち点1をもぎ取ることに貢献したことの意味は小さくない。相手はロレンツォ・インシーニェやドリース・メルテンス、そしてホセ・マリア・カジェホンらを先発に外してはいたが、最終的には全員出している。それらのFW陣を前に冨安が破綻をきたしたことはなかった。

 正確なポジショニングに冷静沈着なボール処理、そして攻撃の際のパス出しに見せる積極性はCBとして立派に通用する競争力だ。それに加えて右SBのコンバートにより、攻撃の一手として機能するプレーの幅も冨安には養われている。レベルアップには、点で合わせてくる相手に対する勝負強さを磨くことが必須というところか。ロックダウン後の駆け足日程だった今季もあと5試合。そこで来季を見据えた成長をアピールすることが、彼には求められている。

(文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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