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アーセナル、アルテタ監督は気がつけば…。ベンゲル時代から何を変えたか? 武器となるのは“共通点”【ベンゲルVSアルテタ徹底比較・後編】

アーセナルを特集した9/7発売『フットボール批評issue29』から、戦術クラスタの最古参らいかーると氏がベンゲルとアルテタ両者が理想とする戦術の決定的違いに迫った『「爆発的なペース」が円環するアーセナルの戦術』を、発売に先駆けて一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:らいかーると)

text by らいかーると photo by Getty Images

師・グアルディオラと異なる点とは?

ミケル・アルテタ
【写真:Getty Images】

 次にアルテタ時代について考えていきたい。

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 アーセナルの監督に就任したばかりのアルテタは〔4-2-3-1〕や〔4-1-2-3〕を採用していた。そのサッカーは、師事していたグアルディオラのサッカーに似ている。例えば、ボールを大事にする、前線の選手は5レーンを埋める、大外レーンでボールを待つ選手にボールを届けるために偽SBを使う。CBからの展開を多彩にするために左利きのCBを獲得し、いざとなったらティアニーやコラシナツを3バックの左で起用していた。

 しかし、マンチェスター・シティとアーセナルでは選手が異なる。優劣の問題ではなく、単純に選手が異なる。よって、アルテタは徐々にアーセナルの面々に合わせるようにチームの形を変化させていった。例えば、中断明けでは3バックを導入している。ボールを保持している時は4バック、ボールを保持していない時は5バックで守備を固める方向に舵を取っていた。

 ボール保持、非保持に関わらず4バックを貫き通していたアルテタのアーセナルは、ボール非保持に問題を抱えていた。ファン・ダイクやヴァランのように無理の利くCBもいなければ、カンテのように走り回れるCHもアーセナルにはいなかった。よって、失点を減らすために人海戦術を採用することで修正を狙った。

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図3

 しかし、〔5-4-1〕のような形になってしまえば、カウンターで出ていくことは難しくなるのが世の常だ。だが、アーセナルには快速オーバメヤンがいる。また、自陣からのビルドアップを4バック時代(図3)から徹底的に行ってきたことによって、撤退守備からボールを前進させることも可能になっていた。

 つまり、〔5-4-1〕で撤退守備をしても、攻撃に出ていく術がない状態ではなくなっていたのだ。現状のアーセナルは〔3-4-3〕で相手陣地からプレッシングを行うこともあるし、〔5-4-1〕で撤退守備を行うこともある(図4)。さらに自陣からボールを繋ぐこともできるし、カウンターを狙うこともできる。気がつけば、万能型の道を歩んでいた。

 課題は相手を押し込んだ時や、カウンターの時にかつての「爆発的なペース」を再現することができるかどうかだ。FAカップの決勝でベジェリンが突撃してチャンスが生まれたように、かつてのベンゲルらしさがアルテタの新たな武器になる可能性は高い。

(文:らいかーると)

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『フットボール批評issue29』


定価:本体1500円+税

≪書籍概要≫
なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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