アーセナルの消えた神童。驚異的得点率も今は…才能が開花しなかった男とは?【アーセナルと青田買いの蜜月 後編】

本日9/7発売のアーセナルを特集した『フットボール批評issue29』から、アーセナルの魅力の一つ「若手の成長を見守ることができる」を考察した山中拓磨氏の「アーセナルと青田買いの蜜月」を、一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:山中拓磨)

2020年09月07日(Mon)10時10分配信

text by 山中拓磨 photo Getty Images
Tags: , , , , , , , , , ,

青田買いの成功と失敗

アーセナル
【写真:Getty Images】

 アーロン・ラムジーは加入初年度の2008/09シーズンに17歳でプレミアリーグデビューを果たすと、このまま順調に成長していくかに思われたが、2010年2月、ストーク戦でライアン・ショウクロスからタックルを受けて重傷を負い、半年以上の離脱を強いられてしまう。
【今シーズンのアーセナルはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】

 その後はケガが癒えてからも精神的な影響なのか、低調なパフォーマンスが続いたが、それでもヴェンゲル監督のラムジーへの信頼が失われることはなかった。当時のアーセナルファンは、監督には一体彼の中に何が見えているのだろうと訝しくすら思ったものだ。

 だが、怪我から3年以上経ったのちの2013/14シーズン、ついに我々は、ヴェンゲルの目にだけは映っていた、本来のラムジーの姿を目撃することになった。この年、呪縛から解き放たれたかのように生き生きとプレーを始めた彼はチームの心臓となり、シーズンの後半はまたしても怪我をしてしまったものの、リーグ戦23試合で10ゴールという素晴らしい成績を記録した。

 その後もコンディションさえ整えば素晴らしいプレーを見せ続け、貴重な中盤の得点源として活躍を続けた。アーセナルで65得点というのはMFとしては史上最多の記録で、まったく同数の65アシストという数字を記録しているのも彼のバランスの取れた攻撃力を示している。

 さらにその勝負強さは別格で、FA杯の決勝でアーセナルを優勝に導く決勝点を二度も決めており、数字以上にアーセナルで鮮烈な印象を残した選手だった。まだキャリアのピークといってもいい年齢にあり、アーセナルではないにしても、さらなる高みに上りつめてほしいものだ。

 華々しい成績を残した選手の裏には、才能が花開かなかった選手もいる。その代表が、パルマのユースチームで22試合45ゴールというとんでもない得点率を残していたイタリア人のアルトゥーロ・ルポリだ。

 2004年にアーセナルに引き抜かれると、圧倒的な成績はイングランドでも変わらず、32試合で27ゴール、04/05シーズンのアーセナルユース得点王に輝いた。17歳でトップチームデビューを果たすと、リーグカップのエヴァートン戦では初得点も記録している。その後も好調は続き、19歳でイタリアU-21代表に選出、一時はイタリアの将来を担うストライカーと目されていた。

 しかし、アーセナルではそれ以降チャンスを与えられることはなく、ダービーへとローン移籍、そのまま契約切れに伴ってフィオレンティーナへと去ることとなり、結局たったの8分しかプレミアリーグに出場することはなかった。

 その後もセリエAでは出番を得られずローンを繰り返し、現在は33歳となりセリエCでプレーしている。結果的には、キャリアを通じて欧州一部リーグでの出場はアーセナル時代の数試合のみに終わってしまった。

 神童と称えられたルポリの辿った数奇なキャリアが、若手の青田買いと育成の難しさ、そして選手目線で見れば、トップレベルで成功することの苛酷さを示しているのかもしれない。

(文:山中拓磨)

【フットボール批評がついにアーセナルを大特集! 日本一硬派なサッカー専門誌がすべてのグーナーに贈るバイブルの詳細は↓↓↓をクリック!】

20200826_kanzen_kanzen

『フットボール批評issue29』


定価:本体1500円+税

≪書籍概要≫
なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

詳細はこちらから

【了】

新着記事

↑top