バルセロナは驚くほどに強い。クーマン監督の慧眼が導き出した、デ・ヨングの最適な起用法

ラ・リーガ第4節、セルタ対バルセロナが現地時間1日に行われ、0-3でアウェイチームが勝利している。バルセロナはこれで開幕2連勝。2試合で7得点0失点という、見事な成績を残している。ロナルド・クーマン監督は、なぜここまでの強さを引き出せたのか。そこにはオランダ代表でも共に戦ったフレンキー・デ・ヨングの存在があるのかもしれない。(文:小澤祐作)

2020年10月02日(Fri)11時32分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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鬼門攻略

バルセロナ
【写真:Getty Images】

 前節のビジャレアル戦は完璧だった。攻守ともに相手にほとんど隙を与えず、前半だけで大量4得点を奪取。後半はやや守りに徹する時間が多かったが、ジェラール・モレノら擁するビジャレアルに1点すら許すことなく、試合を締めた。

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 アントワーヌ・グリーズマンの評価は分かれたが、その他の選手は現地でも軒並み高評価を得ていた。チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝バイエルン・ミュンヘン戦での大敗、リオネル・メッシ退団の噂などで今夏バルセロナは大きく揺れたが、ビジャレアル戦の好パフォーマンスは多くの人に希望をもたらしたと言ってもいいだろう。

 そのバルセロナは、現地時間1日に行われたセルタ戦でも申し分ない試合内容を披露した。

 ラ・リーガ開幕3試合で複数失点0回と守備の安定感が目立っていたセルタは、スタートから5バックで挑んできた。しかし、バルセロナはハイテンポなパス回しで相手DF陣を左右に揺さぶると、11分に先制ゴールを奪取。前節2ゴールをあげたアンス・ファティが見事なファーストコントロールから右足アウトサイドでゴールを射抜いた。

 5バックもなんのその、といった感じでいきなりリードを得たバルセロナは、その後もペースを掌握。攻守の切り替えも素早く、セルタに隙を与えなかった。

 前半終了間際にクレマン・ラングレが退場となってしまったバルセロナは後半、メッシを最前線に残した4-4-1で対応。すると51分、そのメッシの突破がきっかけとなってルーカス・オラサのオウンゴールを誘発した。退場者を出した中での追加点は、あまりに大きかった。

 一人多いセルタだが、4-4のブロックを敷くバルセロナに悪戦苦闘。当然サイド攻撃が多くなるが、クロスがGKネトにことごとく弾かれるなど、仕上げの部分で精彩を欠いた。そして、後半アディショナルタイムに再び失点。とどめを刺された。

 バルセロナがセルタの本拠バライードスで勝利を収めるのは実に6季ぶり。ようやく鬼門攻略を果たした。まだシーズンは始まったばかりだが、ロナルド・クーマン体制のバルセロナは早くも上昇気流に乗っているのかもしれない。

デ・ヨングの使い方を知っている

フレンキー・デ・ヨング
【写真:Getty Images】

 クーマン監督率いるバルセロナには、すでにいくつかの変化が見られている。その中でもとくに目を見張るのが、フレンキー・デ・ヨングの使い方だ。同じオランダ人、そして代表でも師弟関係にあっただけあり、クーマン監督はデ・ヨングの能力の活かし方をよく知っているという印象を受ける。

 前節のビジャレアル戦に引き続き、デ・ヨングのパフォーマンスは光っていた。強風と激しい雨でピッチコンディションは悪かったはずだが、コントロール、パスといったあたりに軽率なミスは見られず。やや自陣深い位置で危険な奪われ方をするシーンもあったが、勝利には欠かせない人物であったことは明らかだ。

 ビルドアップ時は、基本的に前に出るジョルディ・アルバよりも後ろに位置する。しかし、左サイドで攻撃が詰まった際は、やや高めのポジションを取って瞬間的な数的優位を作り出す。つまり、ボールの逃げ口を提供する役割を担っていたのだ。

 そして、守備面ではJ・アルバが上がったことで生まれるスペースを的確にカバー。56分の場面では、ハーフスペースに位置する選手へのコースを消しつつ、相手のボールが下がった瞬間ボールホルダーにチェック。再びパスがサイドに流れると、デ・ヨングはまたもハーフスペースをカバー。このように常に頭を働かせ、目立たずとも効果的な動きを繰り返した。

 デ・ヨングは対人守備の強さはもちろん、先述したようなパスコースに蓋をする動きや相手より早く動いてボールをカットするなど、クレバーな守備を大きな持ち味としている。運動量も抜群に豊富なので、広範囲をカバーできる点も魅力だ。

 昨季のデ・ヨングはより高い位置でのプレーが目立ったが、クーマン監督は同選手の守備能力を活かすため、ダブルボランチの右にセルヒオ・ブスケッツを置き、攻撃でより色を出せるJ・アルバのいる左側にオランダ人MFを置いている。もちろん、レフティーの後ろにある広大なエリアをカバーするためだ。

 クレバーな守備が光り、ビルドアップ面での貢献度も大きい。こうした選手をやや後ろ目に置き、攻守のバランスを整えるという起用法は、理に適っている。J・アルバも持ち味をより発揮することができている。オランダ代表でデ・ヨングを見てきたクーマン監督の「眼」は、伊達ではない。

 この4-2-3-1システムはデ・ヨングが大きなカギを握っている。しかし、逆に言えば、それだけデ・ヨングの負担が大きいということだ。このあたりを今後、チームとしてどうカバーしていくかは、課題になるかもしれない。

 しかし、開幕から間もなくしてこの完成度には正直驚いている。クーマン監督がデ・ヨングの起用法をあらかじめイメージできていたとしても、守備の強度や、メッシ依存ではなくトップ下フィリッペ・コウチーニョをうまく活かした攻めなど、昨季にはなかった良さが“すでに”出てくるとは少し意外だった。今のバルセロナは強い。

 もちろん、シーズンはまだ始まったばかり。楽観視はできない。しかし、あのバイエルン戦の大敗で踏み込んでしまった暗いトンネルに、わずかな希望の光が差し込んできているのは、紛れもない事実だろう。

(文:小澤祐作)

【了】

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