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Jリーグ 4年前

ガンバ大阪が止まらない。J1屈指のタレント力で勝ち点大稼ぎ、盤石ではないが強いその理由は?【週刊J批評】

宮本恒靖監督率いるガンバ大阪が好調だ。現在、明治安田生命J1リーグでは引き分けを挟んで7連勝中と勝ち点を次々と稼いでいる。試合内容で相手を大きく上回っているわけではないにもかかわらず、なぜガンバ大阪は白星を奪い続けることができるのだろうか。(文:河治良幸)

シリーズ:週刊J批評 text by 河治良幸 photo by Getty Images

引き分けを挟んで7連勝

ガンバ大阪
【写真:Getty Images】

“勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし”というのは肥前国第9代平戸藩主、松浦清の言葉で、かつて日本プロ野球の故・野村克也氏が座右の銘としていたことで、スポーツ界でも有名になった。

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 現在、引き分けを挟んで7連勝中のガンバ大阪はまさしく、この言葉が当てはまるように思う。7連勝の内容を振り返ると、11連勝で首位を独走する川崎フロンターレほど、相手を明らかに上回って勝利を積み重ねている訳ではない。

 この期間の8試合の結果は以下の通り。

9/19 札幌 0-1 G大阪
9/23 G大阪 2-1 名古屋
9/27 広島 1-2 G大阪
10/3 G大阪 2-0 鹿島
10/7 鳥栖 1-2 G大阪
10/10 FC東京 0-1 G大阪
10/14 G大阪 1-1 横浜FM
10/18 大分 0-1 G大阪

 厳しい試合展開の中で、GK東口順昭のビッグセーブに救われた試合もあれば、途中出場の渡邉千真が劇的な決勝点を叩き込んだ試合もある。川崎Fも全て完璧に試合が運んできた訳ではないが、ガンバ大阪の場合はより相手と接近した試合内容の中で、潮目をうまく掴む形で結果的に勝ちを拾っている試合が多い。

 ただし、1-1で引き分けた横浜F・マリノス戦を含む、この8試合で負けに値するという試合はほぼ見当たらない。その大きな理由としてあげたいのが一つひとつの守備で、高い位置からのプレッシャーを第一にしながら、引いたところでも後手に回らず、跳ね返した後にはセカンドボールを拾えていること。

 攻撃面では相手のファーストプレスを外して、相手陣内にボールを運ぶという作業を高い割合でできている。またチャンスの数で相手を大きく上回らなくても、一つひとつのチャンスが危険であり、迫力があるというのは攻撃のタレント力がJ1でも上位にあるガンバ大阪の強みだ。それを安定した守備に上乗せする形で、攻守が噛み合っていることが連勝の要因にあることは間違いない。

控え含めた選手個々のクオリティ

 もちろん90分の中でミスは散見されるが、回数が少なければ周囲の選手がリカバリーでボールを回収したり、悪くてもバックラインが体を張る、GKの東口がビッグセーブで耐えると言った形で踏ん張れる確率は上がる。そうしたものがベースにあった上で、例えば連勝の口火をきった札幌戦では0-0から途中出場の渡邉千真が決勝ゴールを決めたり、FC東京戦のようなハンドによるPKのようなものが転がり込むこともある。

 途中苦しみながらも2-0で勝利した鹿島戦の後に、その鹿島で数多くのタイトル獲得を経験したDF昌子源が、いろんなパターンの中で勝利していることに言及していたが、ある意味で必勝パターンがない状況で勝ち点3を取れているのは選手一人ひとりのクオリティも含めた地力の表れとも言える。

 勝利した7試合のうち6試合で先制しており、そのうち3試合が前半にリードを奪い、3試合は後半に均衡を破るパターンだった。後半にあげた先制点のうち2つは渡邉千真とパトリックというFWの交代選手であることもガンバ大阪の強みを示す一つだ。ガンバ大阪の場合は5枚の交代が許される現在のレギュレーションで試合を始める選手と終える選手という役割がかなり明確にあり、それが相手より効果的であることが多い。

 渡邉千真やパトリックという点を取る選手の活躍が目を引くが、実際に奪ったリードをある程度攻めながら守り切るためのカードも充実している。例えば中盤に22歳の山本悠樹が台頭したことにより、彼が先発した試合は矢島慎也がベンチに回り、逆の場合は山本が控えるという形を取れる。

 またここ最近の結果を支えていた左サイドバックの藤春廣輝が、脳震盪により3試合欠場しているが、福田湧矢が運動量を生かした献身的な守備などで埋めている。本来のディフェンスリーダーである三浦弦太が離脱しているディフェンスラインも最近は4バックを採用している中で、右サイドバックを担うDF高尾瑠の奮闘が目立つ。

 鹿島戦はMOMのGK東口に次ぐパフォーマンスでチームを救い、直近の大分戦も相手のビッグチャンスを体を張った守備で、アウェイでの1-0勝利に大きく貢献した。その大分戦は昌子源も不在だったが、代わりにキム・ヨングォンとセンターバックのコンビを組んだ菅沼駿哉の奮闘も光った。

勝利のスパイラルが強み

 さらに、こうした最中でも主力に定着した山本に加えて、19歳のMF川崎修平やFW塚元大と言った、これまでJ3を戦場とするガンバ大阪U-23でアピールし続けた選手達が徐々に、トップチームで出番を取り始めているのもガンバならではで、終盤戦の選手層はもちろん、来シーズンにも繋がってくるものだ。

 また、この7連勝の期間に限ったことではないが、やはり中盤の要である井手口陽介が、2試合をのぞきフル出場という超人的な稼働力で攻守を支えていることが大きい。DAZNや専門誌のベスト11に選ばれる機会があまり多くないが、“殿堂入り”で選考外になっているのではないかと思えるほど、ハードワークとデュエルの強さ、激しくもファウルが少ない守備、安定したパスワークでガンバ大阪の心臓となっている。

 その一方で本来のエースである宇佐美貴史の起用法、パフォーマンスがなかなか連勝の波にリンクしていないのは気になるが、チームが苦しい時ほど反比例して救世主的な活躍を見せることが多々ある選手なので、対戦相手は引き続き注意が必要だろう。

 10番の倉田秋も攻守両面で勝利を支えており、その中で警告がゼロという落ち着きがチームに安定をもたらしているが、その一方で3得点3アシストという結果に満足しているはずがなく、さらに奮起が期待される。

 これまであげてきたように、一つに絞って7連勝の理由を言及することは難しいが、言い換えるとそうした複合的な要素が絡み合う“勝利のスパイラル”が強みでもある。ただ、それは現時点で決して盤石なものとは言い難い。

 宮本恒靖監督が言及する通り、守備に関してはかなり手応えがありそうだが、攻撃面もベースのタレント力を考えれば、ビルドアップからチャンスメーク、フィニッシュにつながる部分で、もう一つ高いパフォーマンスを出して、内容でも相手を上回るポテンシャルは備えているだけに、現在の結果も手放しで褒めすぎずに見守っていきたい。

(文:河治良幸)

【了】

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