フットボールチャンネル

セリエA 4年前

冨安健洋に突きつけられた課題。ボローニャ3連敗、泥沼をかき分けた先に待つものは…

現地24日にセリエA第5節が行われ、ボローニャはラツィオに1-2で敗戦。これでリーグ戦3連敗となった。開幕から全試合に先発フル出場している日本代表DF冨安健洋はどんなパフォーマンスを披露したのだろうか。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

不振のボローニャ、ラツィオに屈し3連敗

冨安健洋
【写真:Getty Images】

 負けが続く時こそが試練である。

【今シーズンの冨安健洋はDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 セリエA第5節が現地24日に行われ、ボローニャはラツィオに1-2で敗れた。

 ボローニャに所属する日本代表DF冨安健洋は開幕から5試合連続で先発フル出場を果たしたが、チームは3連敗。しかもリーグ戦38試合連続失点という不名誉な記録を打ち破ることができず、18位に沈んでいる。

 強力な選手たちを揃えるラツィオ相手に一歩も引かず戦った。試合を通してボールを持って敵陣内に攻め込む時間も長くあり、シュート数ではラツィオの「10本」に対してボローニャは「21本」を記録。枠内シュート数でも上回っていた。

 ただ、後半の頭からやや流れの悪くなった時間帯に耐えきれず。54分、ルイス・アルベルトの単独突破を止められず、ラツィオに先制点を献上してしまった。61分にはリカルド・オルソリーニの強烈なフリーキックがクロスバーを直撃するチャンスもあったが、ボローニャは流れの中からシュートに持ち込めない厳しい展開に。

 そして76分には、それまで1本もシュートを放てていなかったラツィオのエースFWチーロ・インモービレにゴールを奪われて2失点目。ボローニャは後半アディショナルタイムに1点を返すのがやっとで、接戦を落とす結果となった。

 前節は好調のサッスオーロに4失点を喫した。開幕から5節終了時点で10失点は、38試合で65失点した昨季を超えるペースだ。そうなるとどうしてもディフェンス陣の責任が問われてしまう。

 冨安も無関係ではない。センターバックとしては失点や負けが続く状況は決して褒められるものではないだろう。だが、今のようなチームが苦しい時こそ、センターバックとしての存在価値を示すべき時だ。

 今月の日本代表合宿中に、21歳のセンターバックは自らの課題について言及していた。

「特に(ペナルティ)ボックス内での守備というのは、僕個人としても課題に感じています。ミハイロヴィッチ監督からも、かなりボックス内での指示を個人的にかなり受けるので、マークのつき方、腕の使い方だとかはアドバイスとしてもらっていますね」

21歳のCBが直面する課題

 まさに「ボックス内での守備」で成長の余地が見えたのが、ラツィオ戦の2失点目の場面だった。

 相手のクロスに対し、ペナルティエリア内でラツィオのFWヴェダト・ムリキに競り負けてしまった。この時、冨安はムリキのことを腕で抑えてはいたものの、抑え込めずにボールをファーサイドに逸らさせてしまった。

 そして、モハメド・ファレスの折り返しに冨安の反応が遅れ、インモービレのシュートモーションを制限できず。このゴールが試合の勝敗を決定づける1点だった。

 身長194cm体重94kgと自分より大柄なムリキが相手ではあったが、もっと厳しく体をぶつけて競り合っていれば冨安でも渡りあえたのではないか。腕を使うことにはファウルのリスクも伴う。とはいえ、「お互い様」な状況で競り合いの主導権を取るには腕の強さが物を言う。

 ラツィオの1点目の場面でも突破を仕掛けるルイス・アルベルトと最初に対峙したのは冨安だった。距離感がやや遠く、シュートコースを切るのが目的の動きにも見えたが、あっさり振り切られ、ゴールカバーも間に合わず。対峙した時点で背後に味方のカバーもいたため、もっと強気に懐へ飛び込んでもよかったのではないかとも感じた。

 前節サッスオーロ戦では4失点こそ喫したものの、冨安はフィリップ・ジュリチッチの不規則な動きによくついていっていた。下がってボールを受けるタイミングで持ち場を離れて厳しく寄せるシーンも何度もあった。

 すでにセリエAでプレーするDFとしての戦術的なタスクへの理解度は高い。だからこそ、次に身につけるべきは、ゴールを死守するための決断力なのではないだろうか。多少リスクがあるプレーでも実行する決断を瞬時に下せるようになるには、何よりも経験して場数を踏むことだ。

冨安が殻を突き破るためには…

冨安健洋
【写真:Getty Images】

 センターバックとしてミハイロヴィッチ監督の助言に耳を傾け、ベテランのダニーロの姿を見て学びながら、高くて大きな壁となってゴール前に立ちはだかるような激しさや厳しさを身につけてもらいたい。それはボローニャでしか使えない戦術スキルではなく、日本代表でも、ビッグクラブでも、どこに行っても通用する選手としての付加価値になる。

 冨安と同じくセリエAのサンプドリアでプレーしている日本代表DF吉田麻也は、パートナーとして見続けてきた後輩の成長に目を見張り、大きな期待を寄せていた。

「21歳という年齢を考えれば、非常にポテンシャルが高くて、身体的なものにも恵まれていますし、考え方もしっかりしていると思います。仮に僕が監督でも、どの監督でも好んで使うタイプの選手だと思いますし、みんなに期待されていると思いますけど、その期待をいい力に変えられるようにしてもらいたいです。

もちろんこれから次のステップに行くと思いますけど、そこでいかに結果を出せるかじゃないかなと。今の段階で非常に可能性を感じますし、僕から見てもすごくいい選手だと思います。これからだと思うので、他の若い選手も一緒ですけど、(さらなる成長のためには)やるべきことをしっかりやること(が重要)かなと思います」

 ミハイロヴィッチ監督から厚い信頼を受け、連敗していても先発起用のチャンスをもらえている。昨季の右サイドバック以上に自分のプレーが失点や結果に直結するセンターバックというポジションで、21歳にして、こんなにも自分自身が試される経験を積める機会はそうそうない。しかも戦っている場所は世界のトップリーグ、セリエAだ。

 負けが続いている今だからこそ、冨安には自分の課題を向き合い、殻を突き破って、さらに上のレベルへ到達するためのきっかけを掴みとれるか。

 冨安には相手を駆け引きで上回るだけでなく、どんな時でも味方を力強く鼓舞し、ゴール前で泥臭く体を張り、試合が終わったら声が枯れ、腕や足に青あざがいくつもできているようなセンターバックになってもらいたい。

(文:舩木渉)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top