アーセナル、プラン崩壊の原因は…。早くも今季3敗目、レスターが示した倒し方

現地25日にプレミアリーグ第6節が行われ、アーセナルはレスターに0-1で敗れた。ミケル・アルテタ監督とブレンダン・ロジャース監督が演じた戦術合戦は、思わぬ形で大きく動いた。なぜアーセナルは敗れてしまったのだろうか。(文:舩木渉)

2020年10月26日(Mon)12時38分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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後半開始早々にトラブルが…

ダビド・ルイス
【写真:Getty Images】

 攻守におけるキーマンを失ったことが、全ての始まりだったのだろうか。

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 プレミアリーグ第6節が現地25日に行われ、アーセナルはレスター・シティに0-1で敗れた。早くも今季3敗目である。

 前半は11本ものシュートを放ったのに対し、後半はわずかに1本。このスタッツが、試合の展開をよく物語っている。後半は全くと言っていいほどチーム全体が機能せず、68分にエクトル・ベジェリンが放ったシュートが唯一の決定機だった。

 この日のアーセナルは守備時に5-4-1、攻撃時は4-3-3となる変則システムで戦った。ボールを握っている間はグラニト・ジャカが3バックの左からインサイドハーフの位置にスライドし、時間帯によっては2-3-5にすら見える前がかりな布陣だった。

 前線にハーヴェイ・バーンズを残す5-4-1で普段よりも低く守備ブロックを敷いたレスターは、高い位置からのプレッシャーはかけず、自陣のスペースを消してアーセナルの攻撃を待ち構えていた。

 それに対し、アーセナルはダビド・ルイスやジャカからのサイドチェンジを多用し、ダイナミックにボールを動かすことで攻撃を組み立てようとした。特に右センターバックのダビド・ルイスから左サイドのキーラン・ティアニーへのロングフィードはかなり効果的で、実際にチャンスにつながってもいた。

 しかし、後半開始早々に全ての歯車が狂うアクシデントが起こった。ダビド・ルイスが筋肉系のトラブルでプレー続行不可能となり、49分にシュコドラン・ムスタフィとの交代を強いられたのである。機動力と展開力を兼ね備えたディフェンスリーダーがいなくなり、代わりに入ったのはビルドアップで全く頼りにならない鈍重な控えセンターバック。貴重な“砲台”がなくなってしまった。

あっさり奪われた決勝点

 一方、レスターは60分にエースFWジェイミー・ヴァーディーを投入し、前線にカウンターの起点を配置。75分にはジェンキズ・ウンデルも送り出した。そしてブレンダン・ロジャース監督の采配は見事に的中する。

 80分、中盤でボールを持ったユーリ・ティーレマンスが、アーセナルのディフェンスラインの裏へとロングパスを送る。これを見事な動き出しで呼び込んだジェンキズ・ウンデルが、ジャカの背後をとってペナルティエリア内右でフリーになり、ワンタッチで折り返す。

 最後は反応が遅れたムスタフィをあっさり振り切ってゴール前に侵入していたヴァーディーがダイビングヘッドで合わせ、先制ゴールを奪った。

 残り10分とアディショナルタイムで反撃を試みたアーセナルは空回り感が否めず無得点。流れを変えるタイミングを見逃さず、ロジャース監督率いるレスターが慎重かつ大胆に戦術合戦を制した。

 試合後、アーセナルのミケル・アルテタ監督は「前半はとても良かったと言うのがフェアだろう。我々はプレスをかけ、積極性も見せていた。それは効果的で、相手に何もさせないくらい制限をかけられていたと思う」と語った。

 確かに前半のアーセナルは指揮官の狙い通りに機能していた。唯一誤算だったのは、開始4分にアレクサンドル・ラカゼットがゴールネットを揺らしながら、ジャカがオフサイドポジションにいたとして得点を認められなかったことだ。

 ダニ・セバージョスのコーナーキックから生まれたゴールになるはずだった場面について、アルテタ監督は「どうして認められなかったのかわからない」と判定に疑義を呈している。ただ、この1点が仮に認められていたとしても、アーセナルがレスターに勝てていた保証は一切ない。

「我々は辛抱強く、間違いを犯さないようにする必要があった。だが、彼らはボールにプレッシャーがかかっていない時にスペースを攻撃しようとし、素晴らしいゴールを決めた。我々はプレーの継続性が十分ではなく、ペナルティエリア内までボールを入れる回数が少なかった。試合の中で何が起こったのかを考えると、結果は非常に厳しいものだと考えている」

レスターが示したアーセナルの倒し方

ミケル・アルテタ ブレンダン・ロジャース
【写真:Getty Images】

 後半開始早々にゲームプランの修正を強いられたアーセナルに対し、レスターの狙いは明確で、慎重さが要求される戦術合戦だったのは間違いない。「シャープさが見られなかった」という指揮官の言葉の通り、セバージョスをはじめ一部の選手は精彩を欠いていて、ダビド・ルイスに交代枠を使わなければならなかったのは痛恨だった。

 相手の強みを打ち消し、弱みを利用する戦いで試合を制したレスターのロジャース監督は「アーセナルと戦い、彼らの持っているクオリティを目の当たりにする時、こちらは規律のとれた振る舞いをする必要がある」と語った。

 監督の用意した戦術プランを理解し忠実に動くこと、守備的な戦いで苦しい展開になっても焦らず好機をじっくりと待つこと、少ないチャンスに全精力を注げるよう全員が常に集中力を保ち続けること。ロジャース監督は、一見当たり前のようでも実際には難しいことを確実にチームに植えつけている。

 アーセナルに関しては今季2度目の対戦で、レスターは前回のリーグカップの試合でも5-4-1で守る方法を実践していた。結果的に0-2で敗れたものの、内容面に手応えがあったのだろう。マンチェスター・シティにも5バックを採用して5-2の快勝を収めていて、自信をつかんでいたからこそ同じような戦い方を継続したはずだ。

 まずはしっかりと相手の攻撃を跳ね返し、焦って前に出てくるタイミングや、何かしらの原因によって全体のバランスが崩れる瞬間を待つ。そして、手数をかけないシンプルな反撃で仕留める。シンプルだが、効果的。このやり方を選手たちに受け入れさせ、徹底するロジャース監督のマネジメント手腕も見事と言う他ない。

 逆にアルテタ監督は「継続性のなさ」を嘆いた。珍しく右サイド起用だったピエール=エメリク・オーバメヤンは、プレミアリーグ移籍後初めての5試合連続無得点。セバージョスは試合から消え、ジャカやラカゼットも振るわず。ニコラ・ぺぺやエディー・エンケティアの投入、3バックの固定、前線にFWを多数並べる超攻撃的配置も実らなかった。好調だったダビド・ルイスまで負傷離脱となり、泣きっ面に蜂である。

 ディフェンス陣に離脱者が相次ぎ、前線の得点源にも結果が出ていない。中盤で新加入のトーマス・パーティが好パフォーマンスを披露しているのが数少ないポジティブな要素だ。この苦境をアルテタ監督はどう脱するのか。ヨーロッパリーグと並行しながらの戦いで、指揮官の手腕が問われる。

(文:舩木渉)

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感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
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そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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