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PSG、ネイマール負傷で窮地も…。20歳モイーズ・キーンが躍動、豪快2発でチームを救う【欧州CL】

現地28日にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第2節が行われ、パリ・サンジェルマンはイスタンブール・バシャクシェヒルに2-0で今大会初勝利を収めた。しかし、序盤にエースのネイマールが負傷してチームは窮地に。停滞感が濃く、暗雲立ち込めた状況を打破したのは新加入の若手FWモイーズ・キーンだった。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ネイマールが負傷交代。PSG窮地

ネイマール
【写真:Getty Images】

 パリ・サンジェルマン(PSG)にはそろそろお祓いを勧めたい。またしても負傷者が出てしまった。

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 現地28日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第2節、イスタンブール・バシャクシェヒル戦の前半にネイマールが左内転筋を痛めてプレー続行不可能に。パブロ・サラビアとの交代を強いられた。

 スタメン出場していたネイマールだったが、動きは精彩を欠き、存在感も薄かった。20分も経過していない序盤に一度ピッチを出てメディカルスタッフから治療を受け、左太ももをテープでぐるぐる巻きにして戻ったが、すぐに顔を歪めて交代を要求。PSGは早々に頼れるエースを失ってしまった。

 すでにマルコ・ヴェラッティやレアンドロ・パレデス、フアン・ベルナト、ユリアン・ドラクスラー、マウロ・イカルディといった主力メンバーが故障者リストに入っている。ここにネイマールも名を連ねることになってしまった。

 GKケイラー・ナバスを中心に守備陣が踏ん張り、両チームスコアレスのまま後半へ。正直に言って、見どころの多い試合ではなかった。バシャクシェヒルの攻撃は右サイドのエディン・ビシュチャらアタッカー陣の個人技頼みな傾向が強く、PSGも組織としての打開力に乏しい。

 そんな停滞感を打ち破ったのは、移籍市場閉幕間際に獲得した最後の新戦力、モイーズ・キーンだった。

 エバートンから期限付き移籍で加入した20歳のストライカーは64分、キリアン・エムバペのコーナーキックに頭で合わせて貴重な先制点を奪う。これが自身にとってCLでの初ゴールにもなった。

 そして79分には再びエムバペからのアシストを受け、華麗な反転シュートを突き刺して2点目。もちろんCLでの1試合2得点も初めてのこと。絶対的エースを負傷で欠いたPSGを見事に救った。

控えFWに過ぎないと思われていたが…

モイーズ・キーン
【写真:Getty Images】

 18歳の時にユベントス史上最年少デビューを飾った“元神童”は、昨季エバートンで大不振に見舞われた。イングランドのサッカーに馴染むことができず、低迷するチームの影響も受けてリーグ戦はわずかに2得点。カップ戦を含む公式戦通算でも4得点と完全に期待を裏切る結果に終わっていた。

 そこで今季は心機一転、ドーバー海峡を渡ってフランスに新天地を求めることに。ただ、加入当初は退団したエディンソン・カバーニの代役にはなれず、バイエルン・ミュンヘンへ移籍したエリック・マクシム・シュポ=モティングのようにイカルディやネイマールの控えを務めるFWとしか見られていなかった。

 ところが前線に負傷者が続出し、代表ウィーク明けからリーグ戦で2試合連続で先発出場の機会を与えられた。そして直近のリーグ・アン第8節ディジョン戦で2得点を奪い、4-0の大勝に貢献。

 今回のバシャクシェヒル戦でも2発を叩き込み、公式戦2試合連続で2得点という「結果」を残した。

「僕にとってもチームメイトたちにとっても簡単な試合ではなかった。でも、僕たちはしっかり持ちこたえて、この勝利を得た。2つのゴールにも満足している。僕は疲れ知らずで仕事に取り組み、諦めることはなかった。全力を尽くし続けたよ」

 試合後のモイーズ・キーンはCLでのゴールやチームの勝利に対する喜びを、このように語った。もうすぐ復帰してくるであろうイカルディとの競争にも「いつでも準備はできている」と自信を示している。

 PSGの選手がCL初先発で2得点を挙げたことは、これまで一度もなかったという。トーマス・トゥヘル監督も「彼はフレッシュなエネルギーをもたらしてくれる。今はそれが我々を助けてくれているね。2得点を決めたことも嬉しく思う。少しの運もあったが、それが巡ってきたのも当然のことで、彼は今のまま続けなければならない」とモイーズ・キーンの最近の活躍ぶりに賛辞を送った。

自信取り戻し「これは始まり」

モイーズ・キーン
【写真:Getty Images】

 若きイタリア代表FWは「これは始まりだ」と、息巻いている。昨季はエバートンで1年かけて4得点、今季はすでに同じだけゴールネットを揺らしているのだから明るい未来を思い描くのも無理はない。

 ディジョン戦で2得点を挙げた後のインタビューでは「僕の好きな仕事はゴールを決めることだ。どこでもプレーできる準備もできている。監督が僕を左に置いても、右に置いても、あるいは真ん中だとしても、どこであれチームのために全力を尽くす」と、エゴを排して勝利のために身を粉にする決意を述べた。

 先日、モイーズ・キーンの父親がイタリアの『Calcio In Pillole』というウェブサイトのインタビューに応じて「私が望んでいるのは、彼ができるだけ早くイタリアに戻ってプレーすることだ」と語っていた。

 しかし、父親と縁を切っている選手本人と代理人のミーノ・ライオラは新天地にパリを選んだ。結果的にこの選択は最善だったのではないだろうか。ネイマールやエムバペ、イカルディ、アンヘル・ディ・マリアといったワールドクラスのアタッカーたちと一緒にプレーし、若い頃から注目されて育ってきた彼らの選手や人間としての振る舞いを学ぶこともできる。

 ちなみに父親のジャン・キーン曰く、息子モイーズにとって幼少期のアイドルはナイジェリア代表の爆速FWオバフェミ・マルティンスだったそうだ。「ある日の午後、トリノのフリーマーケットに連れていって『一番好きなチームのユニフォームを選ぶように』と言ったら、他の兄弟たちがユベントスを選ぶ中、モイーズはインテルのマルティンスを選んだ。こだわりがあったようだ」と明かす。

 負傷者が減って順当にいけばリーグ・アン4連覇が現実的な目標になり、かつCLでも決勝トーナメントへ進める可能性の高いPSGでモイーズ・キーンは何を掴み取るだろうか。エバートン移籍前の自信はすでに取り戻し始めている。

 将来的に古巣ユベントス復帰か、インテル行きを目指すのか、はたまたエバートンから違う道を歩むのかはわからない。それでも自分の望む未来を手ににするためには、始まったばかりのパリでの1年をどう過ごし、そこでどんな結果を出すかが非常に重要になる。スタートは上々だ。

(文:舩木渉)

【了】

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