アビスパ福岡はなぜ負けないのか。昇格への航海は順調、J2他クラブの大半に大差をつけているポイントは?【英国人の視点】

昨季は16位と低迷したアビスパ福岡だが、今季は第29節を終えた時点で首位。現在は15試合連続無敗中と、勢いに乗っている。昇格プレーオフがなく、J1への切符が2枚しかない2020シーズン。今までよりも高い集中力と決意が求められる中で、なぜ福岡はここまで勝ち点を積み上げられるのだろうか。(取材・文:ショーン・キャロル)

2020年10月31日(Sat)10時00分配信

text by ショーン・キャロル photo Getty Images
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福岡はあらゆる意味でお手本

アビスパ福岡
【写真:Getty Images】

 2020シーズンの明治安田生命J2リーグのクライマックスは、例年とは全く異なる様相を呈することになる。新型コロナウイルスの影響でプレーオフがカットされた結果として、昇格の椅子は2つしか用意されていない。

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 中立のファンにとっても各クラブにとっても、残念なことではある。ファンにとってはシーズンの最終決戦が生み出す興奮が失われることになるし、上位から大きく引き離されたことで目標がほとんど、というより全く何もなくなってしまうチームの数も例年より増えてしまう。

 順位表を眺めてみれば、少なくとも10チーム程度はすでにその状況に陥っていると考えられる。今後の残り7週間も次々と試合が行われていく中で、彼らがいかにしてモチベーションを維持するのか、あるいは維持すること自体が可能なのかどうかを見届けるのは興味深い。

 一方で2021シーズンのJ1への昇格を争い続けているチームにとっては、集中力と決意がかつてないほどに重要となる。プレーオフ出場枠という保険は失われており、敗者復活のチャンスは残されていない。

 現在ポールポジションに位置しているのは、3位のV・ファーレン長崎に8ポイント差をつけて首位に立っているアビスパ福岡。最近14試合のうち13試合で勝利を収めて15試合連続無敗という驚異的なペースで走り続けてきた。過去に3度も1部昇格を勝ち取っているクラブであることを考えれば意外ではないのかもしれない。2部リーグの荒波をどのように乗り越えていくべきなのか、あらゆる意味で彼らはお手本となっている。

目を見張る新加入選手の奮闘

 昨季はファビオ・ペッキア監督と久藤清一監督のもとで散々なシーズンを過ごし、わずか4ポイント差で降格を免れた福岡は、最初の一歩として長谷部茂利という明確で効果的なスタイルを持つ新監督を迎え入れた。長谷部監督は水戸ホーリーホックを率いた2年間に印象的な手腕を発揮。選手たちの信頼を勝ち得て強固な団結力を生み出し、最終的に総得点数によりわずかに届かなかったとはいえ、昨季は茨城のクラブをプレーオフ出場寸前にまで導いた。

 この49歳の指揮官のゲームに対するアプローチはシンプルなものだ。伝統的な4-4-2の布陣を採用し、各選手に対してはマイボール時も相手ボール時も走り続けるハードワークが求められる。

「攻守両方の切り替えの部分でアグレッシブにプレーするようなチームにしたいと思っている」。水戸を率いて1年目の2018年に、長谷部監督はそう話していた。

「選手たちにはボールをしっかり扱うことに重点を置いてほしいと思っているが、もちろん試合の流れの中では主導権を握ることができない時もある。だからこそ守備もアグレッシブにやることが必要になる。単純に引いてしまってボールの後ろに体を入れ続けるだけではダメ。アグレッシブにプレーするチームが私のスタイルだ」。

 その方向性は水戸を率いた2年間で実証された。福岡は新たなボスをバックアップして今季の成功の基礎を形作るため移籍市場でも動きを見せ、アグレッシブなスタイルを体現できる選手としてエミル・サロモンソンや増山朝陽、フアンマ・デルガドらをチームに加えた。

 長谷部監督はまた、2019年の水戸の成功に欠かせない存在となった前寛之を連れてきてキャプテンに据え、彼は今季のベスト電器スタジアムでも昨年同様に重要な役割を担っていくことになった。

 実際のところ、福岡は前が出場した試合ではまだ一度も敗れていない。今季の戦いの中でチームが唯一不安定になったのは5試合で4敗を喫した夏の時期だったが、新型コロナウイルスの陽性反応が検出された前がプレーできなかった期間と一致しているのは偶然ではない。

 だが、チームの好調な戦いの中で際立ったパフォーマンスを見せてきた選手は前だけではない。

 同じく2020シーズン開始前にクラブに加入した上島拓巳と遠野大弥もピッチの両端で輝きを放っている。それぞれ柏レイソルと川崎フロンターレからレンタルされた両者はそれほど加入を注目されたわけでもなく、福岡でレギュラーを獲得するという予想が有力でもなかったが、2人ともここまで全試合に出場して監督の勤勉なアプローチを体現する存在となっている。上島はリーグ最少失点の守備に貢献。遠野は前線からのプレスで相手DFを自由にさせず、7つのゴールも記録している。

監督から声がかかれば全ての選手が貢献できる

 もちろん、数人の選手たちが最高のプレーを見せるだけではシーズン全体を通して成功を収めるためにはまだ不十分だ。安定した戦いを続けるためには層の厚い充実した戦力が不可欠となる。より過密な日程が再設定され、試合と試合の間に回復の時間がほとんど取れなくなった今年は特にそうだ。

 その点でも、2020年の福岡と長谷部監督は2部リーグの他チームの大半に圧倒的な差をつけている。監督から声がかかれば全ての選手がチームに貢献できる力を持っているような充実したメンバーを揃えていると言えるのは、福岡以外では、本稿執筆時点で彼らに対する最大の挑戦者である徳島ヴォルティスだけかもしれない。

 過密日程の中で、大半のチームは例年以上にメンバーをフル活用することを強いられたが、福岡ほどの安定性を達成しつつそれを実行できたチームはほとんどない。他チームの調子の波がそれぞれ上下する一方で福岡は、8月の低調な時期や7月初旬の連敗を別とすれば、比較的順調な航海を続けてきた。

 今季の試合でピッチに立った29人の選手たちのうち、22人は少なくとも10試合以上に出場している。各ポジションに少なくとも1人はレギュラー選手と遜色なく代役を務めることのできる有力なオプションが準備されている。

 例えば、前と同じく長谷部監督の率いた昨年の水戸でプレーしていた選手だった村上昌謙も、ジョン・アンデル・セランテスの負傷後に問題なくゴールを守って9試合をわずか2失点に抑えている。湯澤聖人や三國ケネディエブス、鈴木惇、2019年に長谷部監督の指導を受けたもう一人の選手である福満隆貴、またモンテディオ山形から最近加入した山岸祐也などの選手たちも、フレッシュな力が必要になる場面では質の高い戦力を提供することができる存在となっている。

 まだ13節分の戦いが残されており、どのチームにとっても最終結果を先読みするには早すぎる。ゴールテープが近づいてくるにつれて、トップに立つ者への重圧もこれまで以上に強まっていくことだろう。

 だが長谷部監督の冷静沈着なアプローチと、能力とバランスを兼ね備えた福岡のメンバーは、ここまで見事に機能してきた。12月を迎える頃にもう一度トップリーグへの復帰を決めるため、非常に良い状況にあるように感じられる。

(取材・文:ショーン・キャロル)

【了】

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