ファン・ダイクはどんな選手? リバプールで活きるパス能力。その実力とは?【ファン・ダイクの取扱説明書・前編】

クロップの代名詞だった激烈なプレッシングにも変化が生じ、もはやアイデンティティの主要部分ではなくなっている。より効率的な形で試合のリズムをコントロールしようとしている最新のクロップ戦術を赤裸々にする12/14発売の『組織的カオスフットボール教典』から、フィルジル・ファン・ダイクの取扱説明書を一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:リー・スコット)

2020年12月30日(Wed)10時00分配信

text by リー・スコット photo Getty Images
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ファン・ダイクの足元にボールがあると?

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図40

 対戦する相手チームがどこであっても大半の時間でボールを支配するリバプールのようなチームにとっては、CBの選手がボールを持って落ち着いてプレーできることが非常に重要となる。ファン・ダイクが足元にボールのある状態から見せるプレーの例を図40に示している。

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 最初の状態では相手チームはピッチ上のボールサイドでコンパクトな陣形を敷いているが、ファン・ダイクはすでに反対側サイドのハーフスペースで完全にフリーな状態となっている。

 リバプールはシンプルなパスワークを用いてボールを水平移動させ、ファン・ダイクまで繋ぐ。ファン・ダイクがこの位置でボールを受けると、まず考えるのは相手の守備ブロックに向かって前方へボールを持ち上がることだ。

 もちろん、ボールが水平方向へ繋がれていく中で、相手の守備構造も大部分が横方向へスライドし、ファン・ダイクの前方に開ける縦パスの選択肢を閉ざそうとしてくることは考えなければならない。

 だが、ファン・ダイクはそのスライドが完了するのを待つことはなく、すぐさまボールを前方へ運んでいく。CBが相手のDFラインへ向かっていくこの動きによって、ファン・ダイクを止めるため、2人の相手選手が本来の守備陣を離れて出ていくことを強いられる。

 ボールに対して詰め寄りプレスをかけにいくこの動きは背後にスペースを空けてしまうことになり、左SBのロバートソンや、前線左サイドのマネの動きによってそのスペースを利用することができる。

 このようにスムーズにボールを持ち上がる力がファン・ダイクになく、単純にボールを止めてからパスの選択肢を探そうとするのであれば、相手の選手は守備陣形を維持することが可能であり、リバプールがスペースを利用できる形が生まれることもない。

ファン・ダイクの持つ視野とキック力のすごさとは?

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図41

 ボールを持って前進し、相手守備陣に対応を強いるプレーを難なくこなすことに加えて、ファン・ダイクはピッチ上のあらゆるエリアへボールを送り込むことができる視野の広さとキック力も兼ね備えている。その例を図41において示す。

 リバプールが左SBのロバートソンのところでボールを持っている状況で、相手はコンパクトで効果的な守備ブロックを形成している。相手の陣形は整っており、ボール保持者に対してプレスをかけられる位置に選手たちが配置されている。ロバートソンはファン・ダイクにシンプルなパスを通すことでプレッシャーを逃れ、素早く攻撃の角度を変更する。

 ファン・ダイクがボールを受けた時点で、縦パスの選択肢となる2人の受け手はどちらもポジションがよくない。ボールと近く、相手選手によってカバーされている。だが、ファン・ダイクには、片方の足でボールを受けたあと逆サイドに向けて体を開き、そこから高いダイアゴナルパスを繰り出すことができる力がある。トレント・アレクサンダー=アーノルドがフリーで侵入したタッチライン際のスペースに到達するパスとなる。

 ファン・ダイクという選手がボールを持って何をできるかをもう一度考えてみよう。ボールを散らして攻撃の角度を素早く変更できるだけでなく、ボールを持ったまま縦へ持ち運んで相手DFに対処を強いることもできる。ボールを前進させることができる戦力となるファン・ダイクは、相手チームにとってスペースでボールを持たせていい選手ではない。

(文:リー・スコット)

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『組織的カオスフットボール教典 ユルゲン・クロップが企てる攪乱と破壊』


定価:本体2000円+税

<書籍概要>
英国の著名なアナリストであるリー・スコットがペップ・グアルディオラの戦術を解読した『ポジショナルフットボール教典』に続く第二弾は、ユルゲン・クロップがリバプールに落とし込んだ意図的にカオスを作り上げる『組織的カオスフットボール』が標的である。
現在のリバプールはクロップがイングランドにやって来た当初に導入していた「カオス的」なアプローチとは一線を画す。
今やリバプールがボールを保持している局面で用いる全体構造については「カオス」と表現するよりも、「組織的カオス」と呼ぶほうがおそらく適切だろう。
また、クロップの代名詞だった激烈なプレッシングにも変化が生じ、もはやアイデンティティの主要部分ではなくなっている。
より効率的な形で試合のリズムをコントロールしようとしている最新のクロップ戦術が本書で赤裸々になる。

詳細はこちらから

【了】

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