アーセナルに勝利したリバプール
ようやく“負のスパイラル”から抜け出しつつあるのだろうか。現地時間4月3日に行われたプレミアリーグ第30節。リバプールはアーセナルに3-0で快勝した。今回、敵地でアーセナルに勝ったことで、リバプールは公式戦3連勝。加えて3試合連続で無失点である。
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この結果に、ユルゲン・クロップ監督も一定の手応えを得たようだ。試合の後には次のようなコメントを残している。
「最初の5、6、7分間は、100%確かではないが、まったくもってオープンなゲームで、多くのことは起こらなかった。しかしその後、我々は本当にゲームの主導権を握って支配して、アーセナルのメンバーとすべてのカウンターアタックの脅威に対して良いフットボールをプレーしたね」
クロップ監督がこのように振り返ったとおり、7位と9位のチーム同士の対戦らしく序盤こそどっちつかずの試合展開だった。しかし、次第にリバプールが「ゲームの主導権を握って」いく。なぜ「主導権を握って」いくことができたのだろうか。
本職に戻ったファビーニョ
最も大きな要因は、ファビーニョがアンカーのポジションで起用されていることだろう。怪我人続出の今季はCBで起用されることが多かったブラジル代表MFだが、今冬に加入したオザン・カバクがフィットしてきたことで、本職である中盤の底に戻ってきた。
得意とする本来の位置に入ったファビーニョは、特にトップ下のマルティン・ウーデゴールに対して強さを発揮。ノルウェー代表MFを何度も潰して、アーセナルにリズムを作らせなかった。ファビーニョは中盤で持ち前の守備能力を発揮し、ペナルティエリアの手前でもフィルター役としてアーセナルの攻撃を遮断。ブラジル代表MFを中心とするカウンタープレスが機能したことで、リバプールは「ゲームの主導権」を握っていくことができたのである。
ファビーニョが本職のポジションに戻ってきたのは2試合前のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)RBライプツィヒ戦。そこから3連勝が始まっていることを踏まえても、今後もリバプールが「ゲームの主導権を握って」いく上でカギとなるのは、“ファビーニョのアンカー起用”と言えそうだ。
結果を出したジョタ
後半に入ってから、リバプールはさらに「主導権を握って」いった。その要因として考えられるのは、ディオゴ・ジョタのジョーカー起用だろう。
昨年の12月半ば以降、このポルトガル代表FWはおよそ2ヵ月半に渡って負傷離脱していた。しかし、3月4日のチェルシー戦で復帰すると、前節のウルヴス戦で決勝点を決めるなど、徐々に調子を上げてきている。
前半もボールを奪い返すところまでは機能していたが、ボール奪取後のクオリティに難点を抱えていた。ところが、61分にクロップ監督が、左SBのアンドリュー・ロバートソンに代えてジョタを投入すると、状況は一変する。
なお、この交代で、それまでインサイドに入っていたジェイムズ・ミルナーが左SBに入った。チアゴ・アルカンタラがファビーニョとダブルボランチでコンビを組み、ロベルト・フィルミーノがトップ下に入った。そして最前列は右からモハメド・サラー、ジョタ、サディオ・マネという並びになっている。
ポルトガル代表FWは早速結果を出した。入って3分後の64分、トレント・アレクサンダー=アーノルドの右からのクロスをヘディングで合わせて先制。ジョタのアタッカーとしての質そのものが、リバプールが前半に抱えていた難点に対する回答だった。
さらに68分、ファビーニョがダイレクトで蹴ったボールを受けたサラーが2点目を決める。今季ウォルバーハンプトンから加入した新参者は82分にもゴールを決め、チームを3-0の快勝に導いた。
「本当に良い守備」を取り戻したリバプール
このように“アンカーとしてのファビーニョ”が機能し、“ジョーカーとしてのジョタ”が結果を出した。「ゲームの主導権を握って」いったリバプールはアーセナルに大勝したのである。
そしてクロップ監督は「チーム全体が以前とは違うレベルで守備をした。本当に良い守備のパフォーマンスだったし、それは必要なものだった」と振り返る。カバクがフィットし始め、ファビーニョが本職のポジションに戻ったことで、リバプールは、本来の「本当に良い守備」を取り戻してきている。
リバプールはCLでレアル・マドリードとの対戦を控えている。欧州制覇を狙えるチームに対しても「守備」が機能するかどうかは分からない。しかし、歯車が再び嚙み合い始めたのは間違いない。クロップ監督のチームは、ようやく“負のスパイラル”を抜け出しつつあるのかもしれない。
(文:本田千尋)
【了】