ジダン・レアルは死なず。限界ギリギリで燃やす“最後の炎”、たとえ今季のリーガを制覇しても…【分析コラム】

2021年05月10日(Mon)12時29分配信

シリーズ:分析コラム
text by 本田千尋 photo Getty Images
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ラ・リーガ第35節、レアル・マドリード対セビージャが現地時間9日に行われ、2-2の引き分けに終わった。リーグ戦最終盤に迎えた大一番で、レアルはセビージャに苦戦。それでも、レアルは終了間際に追いついて勝ち点1を手にした。数々の栄光を勝ち取ってきたジネディーヌ・ジダン監督のレアルは、残された力を振り絞って戦っている。(文:本田千尋)

手負いのレアルが迎えた大一番

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【写真:Getty Images】

 ジダン・レアルは死なず――。

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 現地時間5月9日に行われたリーガ・エスパニョーラ第35節。今季も残すところ4試合。ジネディーヌ・ジダン監督が「4つのファイナル」と位置付けた初戦を、レアル・マドリードはホームでセビージャと戦った。前日に消化された首位アトレティコ・マドリードと3位バルセロナの試合がドローに終わったため、2位のレアルにとってこのセビージャ戦は、結果次第でアトレティコと勝ち点で並び、首位に躍り出るチャンスである。

 ジダン監督は4バックを採用。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝ではチェルシー相手に3バックで挑み、手痛い敗北を喫していた。それもあってか、今回のセビージャ戦では使い慣れた[4-3-3]の布陣を選択している。

 もっとも、セルヒオ・ラモス、ラファエル・ヴァラン、ダニエル・カルバハル、フェルランド・メンディらを負傷で欠いており、守備陣の状況は盤石とは言い難い。DFラインは右からアルバロ・オドリオソラ、エデル・ミリトン、ナチョ、マルセロ。中盤の3枚は、お馴染みのカゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロース。左ウイングがヴィニシウス・ジュニオール、トップがカリム・ベンゼマ、そして右ウイングは、中盤センターが本職のフェデリコ・バルベルデである。

 レアルの出足は鈍かった。4日前のCL敗退による精神面と体力面のダメージからか、自陣に引かざるを得ず、セビージャにボールを保持される展開。レアルの選手たちはマイボール時のアクションにどこか迷いがあり、ボールを奪っても繋ぐことができない。

ジダン監督の限界なのだろうか…

 そんな中、12分にベンゼマが先制ゴールを決める。しかし、いいところがない中で灯ったかに見えた希望の光は、VARで取り消されてしまう。アシストのクロスを上げたオドリオソラが、オフサイドの判定。すると22分、カゼミーロがファウルで与えたFKのチャンスから、最後はフェルナンド・レゲスに決められて失点。レアルにとって、流れは明らかに悪かった。

 ここが、ジダン監督の限界なのだろうか。CLで用いた3バックはチェルシーの選手たちに叩きのめされ、CL3連覇時の主力を軸とする馴染みの[4-3-3]も、セビージャ相手に停滞。右ウイングのバルベルデが内側にポジションを取り、オドリオソラが上がっていくパターンも、次第にセビージャの左ウイング、ルーカス・オカンポスが下がって対応されるようになり、いよいよ手詰まりになってしまう。カゼミーロ、クロース、モドリッチの3枚は往年のダイナミズムを生み出せず、35分のショートカウンターのチャンスも精度を欠くレアル…。

かつての栄光とサイクルの終焉

 かつてクロースは、ジダン監督を「とてつもないオーラがある」と評している。トーマス・トゥヘルのような細かい戦術的約束事で選手たちを縛らず、「とてつもないオーラ」を発揮しながら、チームをオーガナイズしてきたと言えるだろう。戦術はシンプルなものであるがゆえに、選手個々の力を最大限に引き出してきた。

 しかし、2018年にリバプールを破ってCL3連覇を成し遂げて以来、チームの新陳代謝が進んできたとは言い難い。依然として、中盤の顔はカゼミーロ、クロース、モドリッチである。いかにクオリティの高い選手たちとは言え、力を引き出され尽くした後で、さらに力を引き出すのは難しいのではないか。

 もちろん限界が近いというのは、レアルでのサイクルの終わりが近いという意味であって、ジダン監督の指揮官としてのキャリアの終わりが近いということではない。どんなチーム、どんな長期政権であっても、監督が代わるタイミングは必ず訪れるものである。

 そして、“その時”がやってきたとしても、ジダン監督がレアルを率いて残した栄光のタイトルの数々は決して否定されるものではない。遠い未来にフットボールというスポーツが消滅するまで、燦然と輝き続けるものだ。

“最後の炎”を燃やしたレアル

 後半に入ると、相変わらずオドリオソラはオカンポスにマークされ、引いたセビージャを相手に、ミドルを打つしかないレアルの選手たち。66分には、ベンゼマ、カゼミーロ、クロースのコンビネーションから、交代で入ったばかりのマルコ・アセンシオが1点を返したが、78分、“歴戦の男”イヴァン・ラキティッチにPKを決められ、勝ち越しを許す。

 ジダン・レアル、万事休す――。そう思われた後半のアディショナルタイム、94分。クロースが、まるでロシアワールドカップのスウェーデン戦のFKを彷彿とさせる、起死回生のミドルを決める。シュートはエデン・アザールの踵に当たってコースが変わって入ったため、公式記録はアザールの得点となったが、実質的にはクロースのゴールだろう。

 ドイツ代表MFの渾身の一撃で命拾いしたレアルは、このセビージャ戦を2-2で終え、リーガの順位は首位のアトレティコと勝ち点差2の2位。残り3試合で優勝に望みを繋いだ。

 しかし、アセンシオのゴールに至ったコンビネーションも、クロースの同点弾も、やはりCL3連覇の財産に頼っている印象は否めない。言い換えれば、ジダンの「とてつもないオーラ」に圧倒されたクロースたちが最後の炎を燃やすことで、リーガの優勝争いに食らい付いているのではないか。

 このセビージャ戦で、ジダン・レアルは死ななかった。だが、限界は近いのかもしれない。たとえ、今季のリーガを制覇することができたとしても。

(文:本田千尋)

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【了】

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