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バルセロナは終わってしまったのか。理想的な前半から悪夢のドロー、なぜ守備は大崩れしたのか?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

ラ・リーガ第36節、レバンテ対バルセロナが現地時間11日に行われ、3-3のドローに終わっている。優勝争いを繰り広げていたバルセロナにとっては致命的な勝ち点1。前半で2点リードを得ながら、なぜドローに持ち込まれたのか。(文:小澤祐作)

理想的だった前半

バルセロナ
【写真:Getty Images】

 バルセロナに大きな問題はなかった。ただそれは90分間ではなく、前半45分間に限った話である。

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 3-5-2でレバンテに挑んだアウェイチームは、立ち上がりからポゼッション率を高めた。4-4-2の3ラインで守る相手に対し、システムの嚙み合わせ的に数的優位を保てる3バックをハイラインにすることで、より敵陣に近い位置でボールを動かすことが可能に。レバンテ守備陣がそこに食いつき、全体のラインが上がった場合は、ジョルディ・アルバとウスマンヌ・デンベレの両ウイングバックなどがランニングし、背後のスペースを狙った。

 その中でとくに目立った動きを見せていたのがフレンキー・デ・ヨングだ。インサイドハーフの一角として先発した同選手は、積極果敢なスプリントでレバンテ守備陣の背後を何度も突いている。立ち上がりには1本のロングフィードを呼び込んでボックス内でキープし、最後はペドリの決定機を生み出した。

 J・アルバやデ・ヨングがランニングを繰り返し深さを作る中、エースのリオネル・メッシはほとんど動かなかった。ただそれはサボっていたというわけではない。味方が深さをもたらすことで相手の最終ラインと中盤にギャップができやすくなるので、背番号10はそのエリアの攻略を図っていたのだ。

 26分、バルセロナはメッシの芸術的なゴールで先制するが、この場面で効果的な動きを見せたのがデ・ヨングだった。J・アルバからのクロスが上がる際、背番号21はボックス内中央へスプリント。DFを引き付けると、それにより空いたスペースにスッとメッシが侵入。最後はフリーでシュートを打つことができた。デ・ヨング、メッシからしても狙い通りの一撃だったと言えるだろう。

 良い形でリードを得たバルセロナは、その8分後にカウンターから追加点を奪っている。右WBデンベレが爆発的なスピードを活かしサイドを破り、最後はペドリが仕留めた。まさに、フランス人FWのWB起用が当たった瞬間だった。

 相手の4-4-2ブロックをうまく破壊し、前半で2点を奪ったバルセロナ。守備陣は大崩れする気配がなく、レバンテにはシュート3本、枠内シュートは1本しか許さなかった。ほぼ文句なしの内容だったと言っていいはずだ。

S・ロベルトの3バック起用は…

 しかし、最終的な結果は3-3。つまりバルセロナは、後半の45分間だけで3失点を喫したのである。一体何が起こってしまったのか。

 前半の途中で、3バックの一角を担ったロナルド・アラウホが足を痛めるシーンがあった。その影響で、後半頭よりセルジ・ロベルトが投入されたのだが、ロナルド・クーマン監督はフォーメーションを4-3-3にせず、引き続き3-5-2を採用。S・ロベルトをそのまま3バックの一角で起用したのである。

 もちろんS・ロベルトはセンターバック起用に慣れていない。しかも一列前にいるのは、守備強度が決して高いとは言えないデンベレだ。前半は対人戦に強く機動力もあるアラウホがいたことで大きな心配はなかったが、一方のS・ロベルトは明らかにプレーしづらそうで、右サイドの守備が曖昧となってしまった。

 バルセロナは57分に最初の失点を喫している。左サイドからクロスを上げられると、ボックス内でS・ロベルトが身長183cmのゴンサロ・メレーロに競り負けてヘディングシュートを許してしまった。

 その直後、バルセロナは右サイドを崩されピンチを招いている。外から中へとパスを出され、サイドに抜け出す選手をデンベレが追えなかったことで再び外に展開される。そこへS・ロベルトがカバーに入るも、今度は中央の選手が空く。最後は案の定そこを使われ、フィニッシュに持ち込まれている。

 上記した通り、S・ロベルト投入後のバルセロナは最終ライン、とくに右サイドがまったく安定しなかった。WBのデンベレが頑張るのか、S・ロベルトが中央から離れカバーに入るのか。ここがハッキリしなかったのは致命的だった。途中には、インサイドハーフのペドリがサイドのカバーに回るシーンがあったなど、とても的確な采配とは言い難かった。

終盤にも外れた采配

 バルセロナは60分、メッシが自陣深くにおいて痛恨のミスを犯し同点弾を献上。しかし、その4分後にデンベレが豪快な一撃を沈め勝ち越しに成功している。

 1点リードを保ちたかったのだろう、クーマン監督は74分にペドリを下げオスカル・ミンゲサを投入。S・ロベルトをインサイドハーフに移したが、なぜ最初からミンゲサを最終ラインで起用しなかったのか、疑問を抱く選手采配だ。

 そして80分が過ぎ、クーマン監督はアントワーヌ・グリーズマンとデンベレを下げてマルティン・ブライスワイトとセルジーニョ・デストを投入。しかしその直後、デストのいる右サイドを崩されてセルヒオ・レオンに痛恨の3点目を奪われてしまった。残り時間で反撃するにも、グリーズマンとデンベレを下げたことで、攻撃力は落ちている。結果的には、という形になってしまうが、クーマン監督の采配はことごとく外れてしまったのだ。

 2点リードを得ながら一つの選手交代を機に歯車が狂い続け、最終的に勝ち点1を得るに留まる。レバンテの粘り強さももちろん賞賛するべきだが、バルセロナの試合運びはあまりにも下手くそだったと言わざるを得ない。選手はもちろんだが、やはり指揮官クーマンによる責任は重いだろう。

 アトレティコ・マドリードが次節のレアル・ソシエダ戦で勝利すると、バルセロナとの勝ち点差は「4」に広がる。残り2試合でこの差は大きい。また、3位レアル・マドリードに勝ち点差を広げられてしまう可能性も十分に高い。バルセロナの今季はもう、終わってしまったのかもしれない。

(文:小澤祐作)

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参照元:DAZN

【了】

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