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ジェラード監督の攻撃戦術とは? 「2人の10番」とも称されるシステムを分析【新世代名将図鑑・ジェラードの章 後編】

text by 結城康平 photo by Getty Images

レンジャーズを今季リーグ戦無敗優勝に導き、名将として名を馳せていくことを期待されるジェラード監督。5月17日発売『フットボール新世代名将図鑑』から、リヴァプールの価値観を知るリーダーオブリーダー「スティーヴン・ジェラード」の章を一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:結城康平)

スタイルはクロップからの影響も感じさせる

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【写真:Getty Images】

 加えて、前線には豪華なメンバーが揃っている。元イングランド代表のジャーメイン・デフォーは持ち味の得点感覚でチームの秘密兵器となっている。絶対的なエースとして君臨するコロンビア代表のアルフレッド・モレロスは気性が荒いことでも知られるが、得点能力は抜群。強豪クラブからも狙われており、前線では囮としても機能する。

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 ケマル・ルーフェも攻撃面で自由なタスクを与えられており、ピッチの様々なエリアに顔を出しながらプレーする。彼を前線に配置するようなパターンもあり、予測不能な攻撃で相手を切り崩していく。

 左サイドからの攻撃では、ボルナ・バリシッチが駆け上がっていく。超攻撃的なプレースタイルで知られるクロアチア代表は、高さとスピードを兼ね備えている。逆サイドからの攻撃時も高い位置でファーサイドに流れてきたボールを待つSBは空中戦も強い。彼は、現代的なSBに求められる「攻撃の起点」と「攻撃の終点」の両方に対応した選手だ。

 彼の推進力を活かすパートナーとして存在感を放つのは、指揮官の古巣から加入したライアン・ケントだ。鋭い仕掛けだけでなく、そのサポート能力の高さが評価されている。左WGに起用されているが、右利きのケントはハーフスペースでSBのスペースを消さずに、ワンツーなどのコンビネーションで仕掛けていく。

 右ハーフスペースからのチャンスメイクだけでなく、献身的に動き回るアタッカーは逆サイドにも顔を出す。右サイドに流れた局面では、SBのサポートを担当。CHを前に走り込ませることを可能にしているのは、献身的な彼のサポートだ。同時にゴールやアシストの能力にも長けた男は、チームでも欠かせない存在だ。

 もう1人の重要なバランサーが、中盤の底でプレーするスティーヴン・デーヴィスだ。サウサンプトンでも圧倒的な戦術眼で活躍したMFは、レンジャーズでも輝きを放っている。チームの心臓となっているMFは、カウンタープレスでのポジショニングと読みのスピードで他を圧倒。ボールを奪われたタイミングで的確にチームを動かし、スペースを埋めていく。

 守備面では高い位置からのプレッシングが特徴となっており、特にケントがSBへのボールを誘い、そこからインサイドへのパスを狙っていく動きが効果的に機能している。中盤のCHは運動量とフィジカルに特徴があり、相手の侵入を防ぐ役割を担っている。相手が前線に枚数を増やす場合には、中盤の選手が守備ラインに加わることで数的優位を保つ。

 CBにはイングランド出身のコナー・ゴールドソンとスウェーデン代表でプレーするフィリップ・ヘランデルのコンビが起用されている。対人能力の強い選手が組んでおり、押し込まれても簡単には崩されない。「2人の10番」と称されることもあるジェラードのシステムは、ハーフスペースを使いながら攻撃を仕掛けていくことを重視している。クラシックなトップ下を1枚置くのではなく、2シャドーが連携しながらSBを押し上げていくスタイルは、ユルゲン・クロップからの影響も感じさせる。

(文:結城康平)

『フットボール新世代名将図鑑』


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