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マンU、スールシャールは実に弱気だった。エメリの打つ手を上回れず、ジェンガの如く崩れた今季の結末【EL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

勢いを殺しにかかったエメリの一手



 ユナイテッドはハリー・マグワイアこそ欠いていたが、現状組めるベストメンバーでビジャレアル戦に臨んだ。立ち上がりからボールを支配し、敵陣でのプレータイムを増やす。相手にはほとんど攻めの時間を与えていなかった。

 しかし、ユナイテッドが楽に試合を進めていたわけではない。4-4-2で守るビジャレアルの守備にかなり手を焼いた。

 ビジャレアルは司令塔ブルーノ・フェルナンデスにマンマークを付けていなかった。しかし、4-4ブロックがコンパクトなため、ポルトガル代表MFは必然的に窮屈なプレーを強いられている。そうなるとユナイテッドはサイド攻撃が中心となるのだが、個で打開できるほどビジャレアル守備陣は緩くなかった。

 良い守備を見せたビジャレアルにワンチャンスを活かされたのは29分。フリーキックからの失点だった。ダニエル・パレホのボールにエースのジェラール・モレノが飛び込む。ビジャレアルからすると、してやったりだった。

 ただ、1点ビハインドのまま迎えた55分、ユナイテッドは少しラッキーな形からエディンソン・カバーニが得点し、同点に追いつく。これで勢いに乗った彼らは、ビジャレアル守備陣を猛烈な勢いで襲い掛かった。

 しかし、ウナイ・エメリ監督の打った手はさすがだった。失点直後、勢いのあるユナイテッドに対し、守備的MFフランシス・コクランを投入して、同選手をサイドに配置したのである。中央の守備が機能していなかったわけではないので、サイドにより厚みを増して相手の勢いを殺そうとしたのだ。

 上記した通り、ユナイテッドの攻めはサイドに偏っていた。真ん中を4-4で締められたB・フェルナンデスも、より楽にボールを受けるため中央を離れてプレーすることが多かった。実際、データサイト『Who Scored』による背番号18のタッチエリアは、中央よりもサイドでのものが多くなっている。エメリ監督の選手交代は、そこを締めるという意味も込められていた。

 エメリ監督は77分、マヌ・トリゲロスを下げ守備力に定評のあるモイ・ゴメスを左サイドに投入。さらに88分には、両サイドバックの交代を行っている。ユナイテッドのサイド攻撃への対策、加えて延長戦も見込んでタッチライン際の選手の運動量を上げるというスペイン人指揮官の考えは、理に適っていた。

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